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大塚裕史の刑法通信

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刑法コラム第124回

共同正犯における正当防衛の成否!?

刑法総論

2024.08.02

共同正犯において正当防衛の成否をどのように判断すべきであろうか。共同正犯者一人に正当防衛が成立すれば残り全員にも正当防衛が成立するのか、それとも一人に正当防衛が成立しても他の者には影響しないのか。この点、狭義の共犯(教唆犯、幇助犯)の場合は、違法は連帯するので、正犯者に正当防衛が成立すれば共犯者にも正当防衛が成立し、正犯者に正当防衛が成立しないのであれば共犯者にも正当防衛は成立しない。共犯の違法性が正犯の違法性に従属するのは、正犯者は結果に対して第一次的責任を負い、共犯者は第二次的な責任を負うに過ぎないからである。これに対し、共同正犯は正犯であり、共同正犯者は皆対等に結果に対して第一次的な責任を負う者であるから、共同正犯者相互の間には他者に従属する関係はない。したがって、共同正犯の場合、正当防衛の成否は共同正犯者一人ひとり別々に検討しなければならない。もっとも、共同正犯は一部行為の全部責任の法理により「他人がやったことも自分がやったこと」になる。そこで、正当防衛の成立要件のうち「やむを得ずにした行為」といえるかどうかは、他の共同正犯者の防衛行為も自己の防衛行為と評価されるので、全員が同一の評価になるが、それは違法の連帯とは無関係である点に注意しなければならない。

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