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作為可能性と作為容易性の関係は!?

大塚裕史の刑法通信

刑法コラム第72回

作為可能性と作為容易性の関係は!?

刑法総論

2023.06.12

不作為犯の実行行為は作為義務違反行為である。作為義務違反の前提要件として「作為可能性」がある。作為が可能でなければ作為義務違反は認定できない。ところが、受験生の答案をみると、作為可能性を「作為可能性・容易性」と表現するものが少なくない。「作為可能性・容易性」という表現が何を意味するのかは必ずしも明らかではないが、おそらく、「作為が可能かつ容易」であることを要求する趣旨であろうと推測される。ところで、作為可能性と作為容易性の双方を要求するということは、作為義務違反の前提としては「作為容易性」を要件とすることにほかならない。なぜなら、作為が容易であるということは作為が可能であることが大前提であり、作為が可能であっても容易であるとは限らない以上、双方を要件とすることは作為容易性を要件としているのと変わらないからである。しかし、作為義務違反の前提要件はあくまでも「作為可能性」である。法は不可能を強いるものではないから、作為が可能でなければ作為義務に違反したという評価をすることができないからである。作為容易性は、作為可能性を判断する際の重要な考慮要素に過ぎない。作為が容易でない場合はそもそも作為可能性が否定されるのである。「作為可能性・容易性」は、要件と考慮要素を合体させた曖昧な表現である。要件と考慮要素は区別しなければならない。

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