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大塚裕史の刑法通信

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刑法コラム第103回

違法減少説と責任減少説の対立の意味は!?

刑法総論

2024.02.23

過剰防衛は、正当防衛が成立せず犯罪が成立した後の「科刑」(任意的減免)の問題にすぎない(36条2項)。それでは、任意的減免の根拠は違法性の減少にあるのか責任の減少にあるのか。違法減少説は、急迫不正の侵害に対して被侵害者側の正当な利益を守ろうとした点で過剰防衛は正当防衛と共通であり、違法性が減少するので刑の任意的減免が認められると説明する。他方、責任減少説は、相手方から攻撃を受けたという緊急状況における心理的動揺(恐怖、驚愕、興奮、狼狽)のために過剰な防衛行為を行ったので、非難可能性が減少し刑の任意的減免が認められると説明する。両説は、量的過剰防衛を肯定するか否かで対立する。この点を理解していない受験生は意外と多い。量的過剰防衛というのは、当初はやむを得ずにした行為の範囲内の反撃であったが、急迫不正の侵害が終了したにもかかわらず反撃行為を続けた場合をいう。違法減少説によれば、途中からとはいえ急迫不正の侵害が終了した以上、正当防衛状況が存在しないため違法性の減少は認められず、過剰防衛は成立しないことになる。これに対し、責任減少説によれば、途中から急迫不正の侵害が終了したとしても、防衛の意思に基づく反撃である限り、相手方から攻撃を受けたという緊急状況における心理的動揺が続いているので責任減少が認められ、過剰防衛が成立することになる。判例は後者の立場をとっている。

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