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基本原理から考えるとは!?−未遂犯の処罰根拠を例に−

大塚裕史の刑法通信

刑法コラム第31回

基本原理から考えるとは!?−未遂犯の処罰根拠を例に−

総論

2022.07.18

論点を本質的に理解するためには刑法の基本原理から考える必要がある。刑法の目的は「法益保護」と「人権保障」にある。刑法は、法益を保護することにその目的があるが、それだけではなく、刑法に触れる行為をしない限り処罰されることがないことを示すことにより国民の行動の自由を保障するという意義もある。
それでは、「未遂犯の処罰根拠は法益侵害の具体的危険性にある」ことを刑法の目的論から考えてみよう。まず、刑法の法益保護目的を達成するためには、法益侵害を惹起させた行為を処罰するだけでは不十分で、「法益侵害の危険性」が認められる行為を広く処罰する必要がある。しかし、危険性という概念は幅が広く曖昧であるから、危険性があるというだけで処罰の対象とすることになれば、国民の行動は委縮せざるを得なくなる。そこで、人権保障の観点からは、法益侵害の危険性が「具体化」しない限り処罰の対象から除外すべきである。こうして、未遂犯は、法益侵害の具体的危険性が認められる限度で処罰の対象となる。
未遂犯の処罰根拠が法益侵害の具体的危険性にあるという点は受験生なら誰でも知っているが、なぜそのような結論になるのか説明できる受験生は少ない。日頃から刑法の基本原理に遡って考察する習慣を身につけてもらいたい。

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