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大塚裕史の刑法通信

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刑法コラム第123回

共同正犯における客観的帰責と主観的帰責!?

刑法総論

2024.07.26

客観的帰責とは結果が行為の仕業であるという評価(違法性)であり、主観的帰責とは結果を発生させたことにつき非難可能性があるという評価(責任)である。単独正犯の場合、因果関係の有無が客観的帰責の判断、故意責任の有無が主観的帰責の判断である。共同正犯の場合、「共謀の成否」と「共謀の射程」(共謀に基づく実行といえるか)が客観的帰責の問題である。つまり、共謀の時点で関与者の故意の内容が異なる場合に共謀が成立するか否か、共謀の内容と異なる実行行為が行われた場合その行為を共謀に基づく行為と評価できるかが客観的帰責の問題となる。いずれも、共同正犯の(客観的)成立要件を充足するかという問題である。これに対して、結果を共同して惹起したといえても、その結果について故意が認められなければ、故意責任を認めることは責任主義に反する。そこで、認識と現実に齟齬があったことを理由に共同正犯の成立範囲を故意が認められる限度に縮小するのが主観的帰責の問題である。したがって、共謀の射程は客観的帰責の問題であり、共同正犯の錯誤は主観的帰責の問題である。このことを理解できていない受験生は意外と多い。結果を共同して惹起したといえるかという問題と、共同して惹起した結果についてどの範囲で刑事責任を負うかは次元の異なる問題として区別しなければならない。

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