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大塚裕史の刑法通信

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刑法コラム第100回

密接性と危険性の判断の仕方は!?

刑法総論

2024.02.02

構成要件該当行為を開始すれば実行の着手が認められるのは当然であるから、実行の着手の有無が論点となるのは、構成要件該当行為よりも前の段階の行為の開始時点においてである。判例によれば、実行の着手の有無は、構成要件該当行為に密接な行為を開始し(密接性基準)、かつ、既遂に至る客観的危険性が認められるか(危険性基準)で判断される。その際、行為者の主観、すなわち犯行計画を考慮してよいというのが判例の特徴である。なぜなら、ある行為の危険性・密接性は、次に何をしようと考えているかを考慮しなければ的確に評価できないからである。例えば、XがA宅に侵入しタンスの引き出しを開け金品を物色していたところ家人に発見されて逃走したという事案において、Xの物色行為に窃盗の具体的危険性があるとされるのは、物色行為の結果、金品を発見したらそれを窃取するという行為が予定されていることを考慮するからである。行為者の犯行計画を考慮要素とする意味はここにある。客観的事情のみならず犯行計画をも考慮しつつ、物色行為が窃取行為と密接不可分の関係にあるか否かを検討し、それが肯定されれば、物色行為は構成要件該当行為に密接な行為といえることになる(密接性基準)。また、物色行為から財物の占有を直接的に移転させることはできないが、窃取行為に至る客観的可能性が認められれば、既遂に至る客観的危険性も認められ、実行の着手が肯定されるのである。

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