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大塚裕史の刑法通信

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刑法コラム第99回

結合犯説に対する大いなる誤解!?

刑法各論

2024.01.26

事後強盗罪の法的性格につき、身分犯説と結合犯説の対立がある。最高裁判例は存在しないが、通説は結合犯説を支持している。これに対し、多くの受験生は身分犯説をとる。その最大の理由は、事後強盗罪の実行の着手は暴行・脅迫の時点に求められるところ、結合犯説によれば実行の着手は窃盗行為時にならざるを得なくなり妥当ではないという点に求められる。しかし、これは結合犯説に対する誤解である。結合犯説は、事後強盗罪を窃盗罪と暴行・脅迫罪の結合犯と解し、その実行行為を窃盗行為と暴行・脅迫行為の双方に求める。たしかに、実行行為の開始時点が実行の着手時点である場合が多い。しかし、実行の着手は、結果発生の具体的危険性、すなわち、既遂に至る客観的危険性が認められる時点に認められる。そして、窃盗行為の時点では事後強盗罪が既遂に至る客観的危険性は認められない。なぜなら、窃盗行為を開始した時点では、誰かに見つかるかどうかは分からず、暴行・脅迫行為に出るか否かも偶然に左右されるものであり、その時点で事後強盗罪が既遂に達する可能性が高いとはいえないからである。事後強盗罪が既遂に達する危険性が具体化するのは、暴行・脅迫時であるから、実行の着手時期は、結合犯説をとっても暴行・脅迫時ということになる。そうだとすると、事後強盗罪の実行の着手を暴行・脅迫時に求める点は、身分犯説の積極的な論拠にはなりえないことに注意する必要がある。

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