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相互利用・補充関係か!?因果性か!?

大塚裕史の刑法通信

刑法コラム第10回

相互利用・補充関係か!?因果性か!?

総論

2022.02.14

共同正犯の一部行為の全部責任の法理の根拠を相互利用・補充関係に求める答案が少なくない。一部行為の全部責任の法理とは、共同正犯の場合、他人がやったことも自分がやったことになるという法理である。その理由を各人がお互いに他者の行為を利用し補充し合うことによって一体となって犯罪を実現した点に求めるのがこの見解である。しかし、この説明は、みんなで一緒にやったから各人が全部について責任を負うという考え方で、団体責任を彷彿させ個人責任の原則の観点から問題がある。そこで、最高裁は、承継的共同正犯に関する平成24年11月6日決定において、このような考え方を全面的に否定し、共同正犯の処罰根拠は結果に対する因果性にあることを明言した。各人が結果に対して因果性を与えたから結果について帰責されるという説明は個人責任の原則にマッチする。このような判例が存在する以上、答案レベルでも、共同正犯の処罰根拠は結果に対する因果性に求めるのが適切である。受験生の答案の中には、「共同正犯の処罰根拠は相互利用・補充関係すなわち因果性にある」とするものもあるが、相互利用・補充関係と因果性は相対立する概念であり、両立しないのでこのような答案は不適切である。

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