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故意の認定の仕方!?

大塚裕史の刑法通信

刑法コラム第78回

故意の認定の仕方!?

刑法総論

2023.07.24

行為者が犯罪事実を認識したといえるかをどのように判断したらよいのであろうか。この点、まず、行為者が「認識している事実」を画定する。次に、行為者が認識している事実が、仮に「客観的に実現されていると仮定した」場合、「犯罪が成立する」のであれば、その犯罪事実を認識していたと評価され故意が認められる。
例えば、「Xが夜道を歩いていたところ、Aが道を尋ねるためにXを追いかけてきたが、Xは暴漢が襲ってきたと誤信し振り向きざまに持っていた傘でAを突いたのでAが負傷した」という事例を検討してみよう。まず、構成要件該当性レベルでXが認識した事実は傘でAを突くことであり、それが客観的に実現された場合は暴行罪が成立するので暴行の(構成要件的)故意が認められる。そして、Xの暴行から傷害結果が発生しており、傷害罪の場合、暴行の故意があればよいので、傷害罪の構成要件に該当する。次に、急迫不正の侵害がないので正当防衛は成立せず違法性は阻却されない。最後に、有責性の段階で、行為者の認識した事実は暴漢が襲ってきたので傘で反撃したという事実であり、この事実が客観的に実現されたと仮定した場合、正当防衛が成立することになり傷害罪は成立しないので、Xには(責任)故意は認められない。
したがって、傷害罪は成立せず、XがAを暴漢と誤信したことに過失があれば過失傷害罪、過失がなければ不可罰ということになる。

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