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(構成要件的)故意と(責任)故意の関係!?

大塚裕史の刑法通信

刑法コラム第76回

(構成要件的)故意と(責任)故意の関係!?

刑法総論

2023.07.10

故意とは犯罪事実の認識及び認容をいう。それでは、認識・認容の対象である「犯罪事実」とは何か。犯罪は「違法」な行為であるから、犯罪事実とは違法性を基礎づける事実をいう。違法性を基礎づける事実としては構成要件に該当する事実がある。構成要件に該当すれば違法性が推定されるのである。構成要件該当事実以外に違法性を基礎づける事実としては違法性阻却事由が存在しないという事実がある。例えば、正当防衛が成立すれば違法性が阻却されるのであるから、正当防衛が成立しないという事実が違法性を基礎づける。このように、犯罪事実には、「構成要件該当事実」と(構成要件該当事実以外の)違法性を基礎づける事実、すなわち、「違法性阻却事由が存在しないという事実」がある。したがって、犯罪事実の認識・認容には、「構成要件該当事実の認識・認容」と、「違法性阻却事由が存在しないという事実の認識・認容」がある。前者は構成要件該当性の場所で検討するので(構成要件的)故意、後者は有責性の場所で検討するので(責任)故意と呼ぶ。そこで、(構成要件的)故意と(責任)故意の2種類の故意があると誤解している受験生も少なくない。しかし、故意は1つしか存在しない。(構成要件的)故意も(責任)故意も「故意」を構成する部分にすぎないのである。(構成要件的)、(責任)と括弧書きにしているのは、故意はあくまでも1つであることを示すためである。

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