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「分かること」と「出来ること」は違う!?

大塚裕史の刑法通信

刑法コラム第54回

「分かること」と「出来ること」は違う!?

学習法

2023.1.16

論点を理解することと、それに基づいて問題を解決できることは異なる。間接正犯、実行の着手、因果関係、故意という基本的論点を一通り学習したのであれば、次の問題を考えてみて欲しい。「甲が病気療養中のVを首つり自殺を装って殺害しようと思い、事情を知らない乙に治療薬と偽って睡眠薬を渡しVに服用させ、熟睡状態を利用して甲自身がVを殺害するという計画を立てて実行に移したところ、睡眠薬であること見破った乙が日頃から抱いていたVに対する恨みを晴らすために睡眠薬を増量して投与したところVが死亡した」という事例における甲の罪責である。本問は、LECの「基本刑法実践演習講座」の冒頭で取り上げた問題である。甲の罪責について、もし、「乙が途中で気づいたから間接正犯は成立せず、間接正犯の故意で教唆犯を実現したので殺人罪の教唆犯が成立する」と考えたのであれば、基本的知識はあるがそれを十分に使いこなせていないことになる。間接正犯の実行の着手に関する判例の立場を前提としても、乙が気づいたのは間接正犯の実行の着手後であるということを理論的に説明できるかがポイントとなる。まだ自分の実力が不十分であると感じた場合は、基本的知識を使いこなせる実践力を早急に養成すべきである。教材としては旧司法試験の過去問が質の点でも量の点でも最適であろう。

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