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危険の現実化説における条件関係の意義!?

大塚裕史の刑法通信

刑法コラム第79回

危険の現実化説における条件関係の意義!?

刑法総論

2023.08.07

危険の現実化説をとると条件関係を論ずる必要はないと誤解している受験生が少なくない。しかし、偶然的結果を排除し適正な帰責範囲を画定するためには、事実的因果関係を前提に法的因果関係を問うという二段階審査が必要であり、危険の現実化の判断も、条件関係の存在を前提にした判断である。また、実行行為が「不作為」の場合は、実行行為と結果との条件関係の有無が「論点」になることに注意する必要がある。すなわち、不作為の実行行為において、「あれなければこれなし」の条件関係の公式を適用するに当たっては、行為をゼロにするだけではなく、不作為の代わりに法が期待する作為に置き換え、そのような作為を行えば結果が回避できたか否かを判断しなければならないところ、その結果回避可能性の「程度」をどのように考えるかが論点とされる。この点、判例は、作為義務を尽くせば結果を回避できた可能性があるという程度では不十分であり、ほぼ確実に結果を回避できたことが必要であると解している。そのため、問題文に「結果が回避できた可能性はあったが確実とまではいえなかった」という一文があったときは、自信をもって条件関係を否定しなければならない。なお、「不作為の因果関係」という論点は条件関係の判断をめぐる問題であるが、不作為犯においても、条件関係を肯定した後に危険の現実化の判断を行わなければならないのは、作為犯の場合と同様である。

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