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大塚裕史の刑法通信

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刑法コラム第81回

予見可能性の考え方!?

刑法総論

2023.08.28

過失犯の成否において最も重要な要件は予見可能性である。したがって、過失犯の事例問題では予見可能性の認定が採点のポイントとなる。予見可能性については具体的予見可能性説が判例・通説の立場である。裁判例上、危惧感説が採用された事件として森永ドライミルク事件があったが、これが最初で最後であり、それ以降今日に至るまで危惧感説は判例実務において排斥されている。具体的予見可能性説の特徴は、予見の対象として、結果および結果に至る因果関係の基本的な部分が予見可能であることを要求する点にある。結果は必ず一定の因果経過をたどって発生するものであるから、因果関係の基本的な部分の予見可能性を問題にすることで予見可能性は具体的なものとなるのである。結果および結果に至る因果関係の基本的部分をどの程度具体的に予見できなければならないかについては争いがあるが、判例実務では結果回避義務を動機づけることが可能な程度に予見可能でなければならないとされている。なぜなら、予見可能性は、結果回避措置を法的な義務にまで高めるための前提要件であるからである。答案では、以上のような予見可能性の「対象」と「程度」について規範定立した上で、具体的事案に即したできる限り丁寧な当てはめを示すことが求められていることに留意する必要がある。

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