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大塚裕史の刑法通信

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刑法コラム第95回

論点飛びつき症候群!?

刑法各論

2023.12.11

答案の中心は論点をどう考えたかを示す点にあるが、論点にいきなり飛びつくと刑法の基本を理解していないと判定されることがある。例えば、「本問では正当防衛の成否が問題となる」と書き始めると、構成要件該当性を認定しないでいきなり違法性阻却事由を検討したことになり、犯罪論の構造を無視した論述になってしまう。このレベルのミスはさほど多くはない。しかし、「因果関係の錯誤」という論点になると多くの受験生が故意を阻却するかの問題に飛びつく。しかし、阻却の対象となる故意が(行為時に)存在しなければならないことに気づいてそこから論ずる受験性は少ない。これは故意論と錯誤論のそれぞれの役割が十分には理解できていないことに起因する。「共同正犯関係の解消」という論点にいきなり飛びつく答案も少なくない。しかし、共同正犯関係の「解消」という以上、離脱行為がなければ結果について共同正犯が成立する関係が成立していることをまず説明しなければならない。少なくとも、共謀が成立していなければ解消を論ずる意味はない。共同正犯者の一人が実行行為に出てしまっている段階では、その実行行為が共謀の射程の範囲内でなければならない。論点にいきなり飛びつく答案は、論点の正確な理解ができていないことに起因する。論点の表面的な理解ではなく、正確で深い理解を日頃から心がける必要がある。

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