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旅券を不正に取得しても詐欺にはならないのは!?

大塚裕史の刑法通信

刑法コラム第53回

旅券を不正に取得しても詐欺にはならないのは!?

刑法各論

2023.1.9

旅券(パスポート)の交付を申請する者が、都道府県の申請窓口で虚偽の内容の申請をし、申請通り内容虚偽の旅券を交付させた場合、(旅券法違反の罪は別として)刑法典上は「公務員に対し虚偽の申立てをして、…旅券に不実の記載をさせた」として旅券不実記載罪(157条2項)が成立することに異論はない。問題は公務員を騙して旅券を交付させたので詐欺罪(246条1項)も成立するかである。このような事例を出題すると、「旅券不実記載罪が成立する以上詐欺罪は成立しない」という答案にしばしばお目にかかる。しかし、社会法益に対する罪である旅券不実記載罪が成立するから個人法益に対する罪である詐欺罪は成立しないというのは理論的におかしな説明である。詐欺罪が成立しないのは、詐欺罪の成立要件を充たさないからであると説明すべきである。まず、旅券は、国外に渡航する者に国籍その他身分に関する事項を証明する文書であるから、証明の利益という財産的価値があるので「財物」に当たる。しかし、旅券は財産的給付を与える文書ではないから、交付者側に財産的損害が発生することはない。したがって、虚偽の内容の申請をしてもそれが財産的損害に関わる事項ではないので、交付の判断の基礎となる「重要な事項」を偽ったことにはならない。欺罔行為が認められない以上、詐欺罪は成立しないのである。

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