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具体的危険説と危険の現実化説は両立するか!?

大塚裕史の刑法通信

刑法コラム第17回

2項強盗における処分行為の要否は「論点」か!?

各論

2022.04.04

市販の論証本によれば2項強盗における処分行為の要否が「論点」であるとされ、受験生は2項強盗の問題が出たら処分行為の要否を論じなければならないと思っている。しかし、論点というのはある問題について見解が対立している場面をいう。ところが、現在、2項強盗罪において処分行為は不要であるという点で争いはない。たしかに、かつて、大審院は2項強盗罪が成立するためには債権者に債務免除の処分行為をさせることが必要であるとしたことがある(大判明43・6・17)。しかし、その後、大審院は被害者が処分行為をしていないにもかかわらず2項強盗罪の成立を認めている(大判昭6・5・8)。そして、最高裁は、明治43年判例を明示的に変更し、処分行為不要説を採用した(最判昭32・9・13)。なぜなら、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を加えておきながら被害者の自由意思に基づく処分行為を要求すること自体が矛盾だからである。学説も、処分行為不要説に異を唱えるものはなく、この問題はもはや論点ではなくなったのである。ただし、処分行為は不要であるとしても、2項強盗罪の処罰範囲が不当に拡大するのを防止するための何らかの限定は必要であり、答案では処分行為の要否の代わりにその点を明確に示さなければならない。

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