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大塚裕史の刑法通信

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刑法コラム第114回

参考人が虚偽の供述をしただけの場合は!?

刑法各論

2024.05.17

参考人の虚偽供述の問題は、国家的法益の分野では現在最もホットな論点である。このうち、今回は、参考人が捜査機関に対して虚偽の供述をしたがその供述が特に文書化されなかった場合をとりあげる。参考人が虚偽の供述をする行為は一見すると証拠偽造罪に該当するようにみえるが、判例・通説は証拠偽造罪は成立しないとしている。その理由をしっかりと理解しておくことが重要である。受験生の答案には「104条の証拠は証拠方法に限られ証拠資料は含まれないから」という定型文がしばしば登場するが、その内容を理解しているか怪しい答案も少なくない。104条は「偽造し」と「使用し」を区別しており、前者は存在しなかった証拠を物理的に作り上げるという意味であり、後者は偽造された証拠を真正なものとして提出することを意味する。したがって、証拠偽造罪における「偽造」とは、存在しない証拠を物理的に作り上げることをいい、物理的に作り上げられたものであることから、証拠資料(事実認定の根拠となる資料)を法廷に持ち込む「媒体」(これを証拠方法という)に限られることになる。そこで、虚偽の供述をしただけでは証拠を偽造したことにはならない。刑法は、偽証罪(169条)において、宣誓した証人が虚偽の供述をした場合だけを処罰の対象としているが、これは宣誓していない参考人が虚偽の供述をしても処罰されないという趣旨であると理解される。

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