公務員になるためには様々な方法があります。一般的には国家公務員になるためには国家公務員採用試験を、地方公務員になるためには地方公務員採用試験を受験することになります。国家公務員と地方公務員、そしてそれぞれの公務員試験のレベルごとに実際に行う業務が異なってきます。
心理職・福祉職の公務員として活躍するためには、これらのビジョンをつくり、そのビジョンにあった採用試験を受験することがポイントになります。
まず最初にするべきことは心理・福祉系公務員の仕事を知ることです。
国家公務員の仕事〜国家公務員といっても多種多様
国家公務員総合職
国家公務員総合職試験で心理・福祉職を目指す場合、人間科学区分で受験することになります。
人間科学A※の採用予定部局として例年採用をしているのは、厚生労働省、法務省、警察庁になります。
人間科学B※は、教育や社会に関する区分であるため、出題範囲は広くなりますが、採用先も広く、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省が主たる採用先ですが、農林水産省なども採用を予定することがあります。
※人間科学A・Bは旧来の人間科学Ⅰ・Ⅱおよび、専門科目での選択に対応した 便宜的な呼称となります。
警察庁科学警察研究所
警察の捜査は、刑事だけではなく鑑識活動、科学捜査も必要であり、そのための国の機関として科学警察研究所があります。
ここではいくつかの研究室において心理系の研究が行われています。
法科学第四部情報科学第一研究室においてはポリグラフ検査、目撃者証言など犯罪捜査に関する心理学的研究及び実験、犯罪行動科学部の各研究室では誘拐事件や人質立てこもり事件などの特殊な犯罪について心理学的および、精神医学的見地からの研究や、いわゆるプロファイリングの研究を行っています。
法務省専門職員 〜矯正心理専門職
法務省矯正局は矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)の保安警備、作業、教育、衛生など被収容者に対する処遇が適切に行われるように指導、監督するとともに、新しい処遇方法について調査研究を行っています。
採用1年目は、少年鑑別所、少年院に配置されることが多いようです。
資質鑑別や心理査定、矯正教育など、その専門知識を活かし業務の経験を積んでいくことになります。
法務省専門職員〜保護観察官
法務省保護局は各地方更生保護委員会および保護観察所で、罪を犯してしまった人たちの立ち直りを援助しています。
保護観察所で保護観察官となった場合、保護観察処分となった少年の指導だけでなく、少年院仮退院後の少年の指導や、刑務所を仮釈放した成人の指導、執行猶予者の指導なども行います。
民間の篤志家である保護司と連携をとりながら社会内での更正を助ける仕事です。
法務省専門職員〜法務教官
法務教官は原則として少年鑑別所または少年院に勤務します。
法務教官は深い人間愛と専門知識に基づき、非行を犯した少年を正しい方向に導き、心身ともに健全な少年として社会に復帰させることが使命です。いわば、施設における少年の親となって全ての面で面倒を見る仕事といえます。
少年鑑別所の場合、少年鑑別所に送致された少年の身柄を保護し、スムーズに審判が受けれるように心情の安定を図るとともに、少年の問題性、改善の可能性を探り、その資質の鑑別に役立てるために、面接、相談助言、その他の業務に従事します。
少年院に勤務の場合、少年院に収容された少年の円滑な社会復帰を図るため、個々の少年の特性や問題性に着目し、集団活動、面接、相談助言、などを通して健全なものの見方、考え方および行動の仕方を指導する生活指導や、余暇を健全・有効に活用する習慣を体得させるレクリエーションの指導その他の矯正教育などに従事します。
厚生労働省職業安定局
厚生労働省職業安定局では、雇用の創出・安定を図り、雇用不安を払拭するための雇用政策の推進を行っています。
雇用の安定、若年層の就職対策、離職者の再就職の促進、労働力需給のミスマッチによる失業の解消、セーフティネットの整備などを目指しています。
裁判所専門職員(人間科学)〜家庭裁判所調査官
家庭裁判所は家庭内の紛争(家事事件)や未成年の非行問題(少年事件)を専門的に扱う裁判所です。
家庭裁判所調査官は、家事事件の当事者や非行問題を起こした少年やその保護者への面接を中心に事実関係を多角的に調査し、その結果を審議に必要な資料として裁判官に報告することが基本的な仕事となります。
家庭裁判所調査官が作成した調査報告書は審判、調停において重要性を有し、調査官自身も審判、調停の際に出席し意見を述べることができます。
家庭裁判所調査官は、審判、調停の当事者の人生に大きな影響を与える職業です。専門知識以外にも思いやりや粘り強さ、人間らしい優しさが必要とされるでしょう。
地方公務員の仕事〜地元民に密着した多種多様な仕事
地方自治体における社会福祉の専門機関で心理職、福祉職として働くには、地方公務員採用試験を受験して合格し、採用されるのが一般的です。採用区分は自治体によって異なり、一般の行政職としてのみ採用を行う自治体と心理職、福祉職の試験区分を有する自治体があります。
主な業務内容としては、心理職は病院や児童相談所などで心理判定を行うこと、福祉職は福祉事務所や児童相談所などでケースワーカーとして働くことがあげられます。
いずれにしても個人の生活に深く関わる仕事であり、相談者の将来に影響をあたえる仕事です。
責任も大きいですがやりがいのある仕事といえるでしょう。
福祉事務所
住民の生活を支える地方自治体の仕事のうち、社会福祉に関することを専門に行う第一線の機関が福祉事務所です。
社会福祉全般に関する様々な問題に関して住民から相談を受け、面接や家庭問題などを通じて援護や保護、施設入所などの措置を行います。
主な仕事として、
- (1)生活保護業務を担当して生活保護の新規申請受付や毎月の保護決定、生活保護受給者を定期的に訪問して相談、助言、指導などを行います。
- (2)身体障害者の相談、援助を担当して身体障害者手帳の交付や関連制度の紹介、在宅生活の支援や施設利用の相談などを行います。
児童相談所
18歳未満の児童を対象に、発達、性格、行動、非行や児童虐待などさまざまな問題に対する相談に応じ、個々の児童や家庭にとって最も効果的と思われる援助を行う児童福祉行政の中心的機関です。必要に応じて関連機関と連携を取りつつ、心理診断やカウンセリングなどを行います。
主な仕事として、
- (1)判定班において、相談のために来所した子ども や保護者と面接をし、知能検査や心理検査を実施 して心理判定を行います。
- (2)相談援助担当として、問題を抱えた児童やその家族に対してプレイセラピーや箱庭療法など心理的なケアを行います。
精神保健福祉センター
精神疾患や障害を持つ方、薬物・アルコール 依存症者などの心の悩みを抱える人々やその家 族の相談や面接、心理検査を行います。
知的障害者施設
障害を抱えた児童に対して関連機関とプロジェクトチームを組み、個別支援プログラムを作成、実行して事態の改善を図ります。
児童自立支援施設
劣悪な家庭状況などの理由により保護されている児童の自立、生活支援を行います。
以上は、地方における、心理・福祉系公務員の仕事の一例です。ご自身が受験を希望する自治体の仕事を調べてみましょう。