更新日:2022年3月7日
公務員試験は国家公務員でも地方公務員でも、多くの場合一次の筆記試験と二次以降の人物試験つまり面接試験が実施されます。
かつての公務員試験では筆記試験が重視され、面接試験のウェイトはそれほど大きなものではありませんでしたが、世の中の状況が大きく変化し、公務員にも臨機応変な対応が求められるようになった今日、徐々に面接試験のウェイトが大きくなりつつあります。
面接試験で受験生に対してされる質問内容は、採用後に取り組みたい仕事、学生時代あるいは前職、現職で力を入れた取組み、そうした経験を通じての自己PRなどですが、中でも受験生が最も準備に苦労しているのが志望動機です。
公務員の志望動機の重要性
志望動機以外の質問事項は他でも使い回しが利きますが、志望動機はそうはいきません。国家と地方では志望動機は異なるはずですし、国家でも総合職と一般職、専門職で違ってきます。地方公務員でも都道府県といった広域自治体なのか市区町村といった基礎自治体なのかによって違うはずですし、さらに同じ市役所同士でもある市役所とその直ぐ隣の市役所では異なるはずです。受験先に合った内容の志望動機を準備する必要があります。
しかも、国家公務員ならば、「その仕事をやりたいから」というように「やりたい仕事イコール志望動機」と考えることもできますが、様々な仕事を経験する地方公務員では、「こういう仕事をやりたい」といってもその仕事ができないこともあるわけですから、「どんな仕事を与えられてもこの職場であれば貢献できる」という自分にとってのその職場の魅力をアピールできなければなりません。
伝えるべき内容
民間企業との違い
民間企業と公務員の仕事の違いが単に「民間は金儲けだから」とか「会社の利益だけだから」では解っていることになりません。民間には民間で魅力的な点はあります。たとえば、民間企業の社員として商品開発をし、効果的な広告をして、売上をあげ会社に貢献すれば会社内でのステータスもアップしますし、賃金など待遇もよくなります。このように「目で見て、手で触れる」価値を創造できるのが民間企業の魅力です。こうした魅力は公務員にはありません。しかし、民間企業のサービスは所詮自社商品を購入してくれた顧客だけへのサービスとなります。
これに対して、公務員は自分の支援を必要としてくれる国民、住民すべてに貢献できるという「規模の大きさ」が第一の特徴です。また、民間企業の場合、あるサービスに費用対効果が見出せなければ撤退せざるをえません。しかし、健康、教育、福祉、観光、環境どんなサービスも実は途中で止めてしまってよいサービスはひとつもなく、こうしたサービスを継続していけるという点が公務員の仕事のもうひとつの魅力といえるでしょう。
職種ごとの違い
国家公務員では多かれ少なかれ仕事が限定されますから、志望動機は①その仕事を知ったきっかけ、②自分の仕事にしようと思った理由、③併願先との関係で第一志望とした理由などが志望動機となります。
ただし、一般職が、与えられた職務に自分の強みでどう貢献できるかをいえれば良いのに対して、総合職は、一般職職員や地方公務員、さらには民間のアクターが活躍できる環境をつくる仕事なので、志望動機にもそうした視点を入れる必要があります。さらに、同じ総合職でも、環境に携わる官庁でも経済産業省、国土交通省、農林水産省は開発優先なのに対して、環境庁は保護優先と、基本的な軸が異なります。
地方公務員も、住民相手の市区町村という基礎自治体と、国や他県、企業等団体相手の都道府県という広域自治体では志望動機は違ってきます。その中間に政令都市といった特殊な自治体もあり志望動機は違ってきます。基礎自治体なら住民に近いところで住民に寄り添った支援をしたいという志望動機になり、広域自治体なら、国と基礎自治体の橋渡し役、調整役として、こんな働きをしたいという志望動機になります。政令都市は基礎自治体でありながら行政区を抱えて、区長となるのは市の職員ですから、こうした多用なステージから効果的な貢献ができるという特徴があります。
また、同じ外国文化を特徴とする観光都市でも、横浜市ならば、赤レンガ倉庫や元町中華街を見ても分るように単に異国文化を取り入れるのではなくそれを融合して新たな文化を創出するという魅力を指摘することが必要です。広域自治体のあり方にもそれぞれ特徴があり、東京都が巨大な財政下で東京都特別区を擁して基礎自治体に対しても強力なリーダーシップをとっているのに対し、複数の政令都市を抱える神奈川県は、政令都市とそれ以外の地域の格差を是正しつつ、観光資源を活用して県全体の活性化を図っていく、その中間として、埼玉県は県内の基礎自治体との継続的対話により県の活性化を図るというように、特徴を踏まえた志望動機形成が必要となってきます。
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避けるべき内容
待遇がいい
憲法第15第2項に規定されているように「すべて公務員は、全体の奉仕者」ですから、国家公務員でも地方公務員でも、職員は自己の利益のために仕事をするのではなく、国民や住民に貢献する仕事なのです。したがって、志望動機で賃金など「待遇が良い」などということは絶対に書くべきでないし言うべきでもありません。説明会で、残業代の有無や福利厚生などについて質問するのみNGです。
安定している
様々なことが激動している今日公務員の仕事も組織の改変などがあったり、地方公務員の場合は、人口減少などにより消滅の危険性があったりと、公務員といえども必ずしも「安定している」とはいえない時代になってきました。そうした、時代の動きに対する認識が欠如しているというマイナス評価を下されるおそれもあります。志望動機として「公務員は安定しているから」などと言うべきではありません。
公務員の志望動機を考える前に
以上のように、公務員の志望動機は民間とも全く異なりますし、公務員内部でも、官公庁ごとに志望動機は大きく異なります。したがって、公務員の志望動機を考える前に、まず、自分が社会人となったとき、社会に対してどのような貢献がしたいのか、どのような貢献ならできるのかをしっかりと考えるべきでしょう。今まで自分が受けてきた恩恵をどんな形で社会に還元するかを真剣に考えるわけです。そして、それに合った仕事が世の中のどこにあるのかを探すのです。仮にそれが民間であるならば民間企業に就職すべきですし、国家であるならば国家公務員、地方であるならば地方公務員を志望すべきです。
まとめ
志望動機は、複数の公務員試験を受験する場合、それぞれの受験先ごとに個別に考えなければならない、受験生にとっては一番準備が大変な質問項目です。しかし、単に受験戦略ということを超えて、自分が一生の仕事としてその官公庁を選ぶ理由を考えるわけですから、悔いのない選択をするためにも、十分に時間をかけ、調査に調査を重ねて、慎重に考えるべき事柄です。本当にこの官公庁で良いのか。その官公庁が主催する説明会などに足を運んでじっくり考えてください。
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