更新日:2022年2月16日
- 目次
- 公務員の論文試験とはどんなもの?
- なぜ試験科目に論文があるのか?
- 公務員試験小論文の書き方でまず抑えるべき構成の作り方5ステップ
- ステップ1
- ステップ2
- ステップ3
- ステップ4
- ステップ5
- 公務員試験論文の対策法5選
- 対策1
- 対策2
- 対策3
- 対策4
- 公務員試験の論文でよく出るテーマはこれ!
- 社会問題に関するテーマ
- 環境問題や災害対策に関するテーマ
- 地域に関するテーマ
- 論文試験で不合格になりやすいケース
- ケース1
- ケース2
- ケース3
- ケース4
- ケース5
- 公務員試験論文を上手く書けるようになるには?
- 上手い論文を読みこむ
- 時事問題を把握するための情報収集を怠らない
- 情報の整理方法
- 公務員試験の勉強をするならLEC東京リーガルマインド
- まとめ
公務員の論文試験とはどんなもの?
公務員試験ではマークシート方式の択一試験のほか、いわゆる教養論文とよばれる試験が課せられることがあります。教養論文は、与えられる課題によって、「今まで最も困難だったこと」「信頼される職員となるために必要なこと」といった自分自身の経験や今後の働き方に対する考えなどを書く作文と、行政が解決しなければならない少子化対策、高齢者支援、環境問題といった行政課題が出題される論文の2種類があります。60分から90分で800字から1000字程度を書かせる試験が多いです。
自治体の中には、作文や論作文を重視しているところも多く、択一の点数を論文によって挽回することも可能で、特に特別区(23区)では、択一試験で8割程度とっていても、論文が書けていないと不合格となっている例もあります。
なぜ試験科目に論文があるのか?
自治体の募集要項では、教養論文はどのような試験として公表されているのでしょうか。わかりやすい例を挙げてみます。
川崎市:一般的な行政課題や時事問題などの課題を与え,問題意識,論理性,表現力などを評価
千葉県:課題についての判断力,専門的知識,文章による表現力,文章構成力その他の能力についての筆記試験
上記の例からわかることは、まず、何について書くことが求められているのか、ということを理解する力、そして、公務員として解決すべき行政課題についての基礎知識、そしてそれをどのように解決したらよいのかという問題意識や、それを論理的に構成し、わかりやすく説明する力が求められているのです。これらの力は“ズバリ”公務員として働いていくのに必要な知識であるといえます。
公務員試験小論文の書き方でまず抑えるべき構成の作り方5ステップ
では公務員試験の論文の書き方を学んでいきましょう。まずは、公務員試験の論文には、基本的な型があることを理解しましょう。通常は、現状の分析→課題の抽出→解決のための大きな方向性を示す→課題解決のために必要な対策→まとめ という流れになります。白書や自治体の総合計画なども大枠はこの枠組みをとっていることが多いです。
ステップ1
①現状の分析
課題として挙げられている行政課題について、現状を説明しましょう。例えば少子化対策の場合、ここには少子化の現状だけでなく、なぜ少子化が進んでいるのか、そうした背景などを多面的に説明してください。また、住みよいまち、安心してくらせる社会、など、しっかりと冒頭で定義をしないと、何について論じるのかが不明瞭になる場合もありますから、そうした場合には、まず冒頭に定義をしましょう。
自治体を志望している場合、国全体の現状を述べるだけでなく、志望自治体の状況もしっかりと説明してください。
その際に大切なことは、客観的な根拠のある記述をすることです。主観的な意見ではなく、行政がどのようにこの現状を把握しているのか、ということを理解して、同じ立場、同じ文章で説明しましょう。
ステップ2
②課題の抽出
次に、現状や背景を分析して、例えば少子化を解決していくために、どんなことが課題であるのかを説明しましょう。課題の抽出というと、わかりにくいですが、例えば少子化であれば、どのような問題があるから子どもを産みたくても産めないのか、どのようなことが負担となっているのかということを考えて提起します。
課題の抽出という概念が難しい場合には、対策を先に考えてみましょう。こんなことをやったらいいのでは、ということを先に考えてみた上で、それはそもそもどういった現状を解決しようとしているのか、を考えてみるのです。そうすると課題と対策のつながりが明確になります。
ステップ3
③解決のための方向性を示す
①、②を踏まえて、後半は解決策を示していくわけですが、まずは大きな方向性や、与えられているテーマを行政として解決する意義や目的などをつなぎの一文として入れてみましょう。「すべての保護者が安心して子育てができる環境を整備し、地域で子供を育むといった機運を醸成していくことは行政の重要な役割だ」など。
ステップ4
④課題解決のために必要な対策
②で示した課題を解決するために、行政が具体的に何をしていくのかを説明しましょう。行政が何をすべきなのかを具体的に記述することが必要ですが、具体的、ということと、細部に入り込んでしまうこととは違います。250字程度を1段落として、1段落に1つ、保護者がいつでも相談できる場を拡充する、などといったテーマを決め、「子供を遊ばせるついでに気軽に相談できる」「SNSで匿名での相談も可能にする」など複数の具体的な方策を挙げ、なぜそれが課題の解決につながるのか、という理由や、それらを行政が実施することの効果などを書きましょう。基本は2段落2テーマを挙げられるとよいですね。ただ、筆力のある人は1つのテーマを丁寧に説明しても合格答案になります。
ここで大事なことは、課題と対策が合致していること、行政が何をすべきか、という視点を失っていないことです。
ステップ5
⑤まとめ
最後に与えられたテーマに対する最終的なまとめをしましょう。国家一般職や都道府県で課せられる論文では、行政として〇〇を推進することで、少子化対策に歯止めをかけることが求められる、などと終わりにしてもよいですが、基礎自治体の場合には、自分自身が職員として、与えられた課題の解決に尽力し、地域に貢献していきたい、などの抱負をしっかりと示しましょう。
公務員試験論文の対策法5選
それでは実際に公務員試験論文の対策として、どのようなことをしていたらよいでしょうか。一朝一夕には文章はうまくなりませんし、行政課題を理解するのにも時間がかかります。しかし、行政課題とその対策を理解することは、面接時に問われる「公務員として何がしたいのか」という質問の答えにつながりますから、後回しにせずに、コツコツと進めることが大切です。
対策1
①行政課題を勉強しましょう
論文で出題されるテーマについて、何を書くのかはほぼ決まっています。したがって、白書や自治体の総合計画などを参照して、国や志望自治体がどのような施策を実施しているのかを学びましょう。施策の背景や目的を理解することも必要ですが、現行の白書などでは既知の事実としてこれらが書かれていない場合もあります。そうした場合には、WEBで検索をしてみるとよいです。昔の白書や親切な自治体の説明などがみつかりますから、論文の構成を意識して、学びを進めてください。
対策2
②効果を考える
行政が何をすべきか、という問いに対して、みなさん自身の画期的なオリジナルな施策を提案することは求められていません。現状、行政がやっていることの中から、みなさん自身が一番やったらいい、一番効果があると考えるものを、わかりやすく説明することで合格答案が完成します。ただし、数ある施策の中から、これがいい!とピックアップして論じるわけですから、なぜそれが必要なのか、実施することでどのような効果が見込めるのか、を考えて、盛り込んでください。それが論じるということです。
対策3
③良い文章をインプットする
白書や総合計画などで用いられている表現を、自分のものとしていきましょう。地方自治体の総合計画なども、白書の文言が引用されています。みなさんも、論文の中に白書や総合計画で用いられている表現などを活用してください。白書などの文章は余分なものを除き、必要な要素だけを簡潔にわかりやすく説明しているお見本です。ただし、自分がよくわかっていないことを、あちらこちらから引っ張ってきた文章を切り張りするのは、不合格答案の典型例となります。
また、日本語の文章という観点からは、良い文章を書くという行為は、良い文章のインプットなしにはありえません。教養試験でよく出題される評論文*などを読むことは、現代文対策にもなりますから、一石二鳥です。時間がない!という場合には、行政課題について書かれた見本答案例などを、参照して、論文の構成や内容などのイメージを膨らませられるとよいでしょう。
対策4
④添削を受ける
自分自身が書いたものが自分の意図通りに読んでもらえるのか、言いたいことが伝わるのか、課題に対する理解はあっているのか、など、自分だけではわからないことも多いですよね?予備校などを活用して、添削をしてもらう方法もありますが、友人に読んでもらうのも一つの手です。友人が行政課題に対する知識がなくても、ご自身が書いたもので、何が問題で何をするべきなのかがわかれば合格答案でしょう。求められているのは「誰が読んでもわかりやすく説明できている」ことですから、文章のおかしいところなどはどんどん指摘してもらって改善していきましょう。
公務員試験の論文でよく出るテーマはこれ!
公務員試験では、行政課題とご自身に関する作文課題が出題されます。行政課題とは、みなさんが直接的、間接的に公務員となって解決すべき問題です。例えば少子化対策、高齢者支援、災害対策、持続可能な自治体となるために必要なこと、などが切り口を変えて問われています。DXや環境問題、地域コミュニティの活性化なども出題されます。
社会問題に関するテーマ
少子高齢化の進展とその結果としての人口減少は、国家的な課題であり、かつ、それぞれの自治体においても最優先で取り組むべきものとなっています。出題例はたいへん多いですが、下記のようなテーマが典型的なものとなります。
〇人口減少の影響と取り組むべき施策について(R2石川県)
〇子供を安心して育てる環境を充実するために県はどのような取り組みを行うべきか、あなたの考えを述べなさい。(R2和歌山県)
〇人生100年時代に向けて県はどのような施策に取り組めばよいか、あなたの考えを述べなさい。(群馬県例題)
環境問題や災害対策に関するテーマ
日本のみならず世界的に地球環境問題に対応することが必須の時代となっており、循環型社会の形成に向けて、国はもちろん、各自治体でその取り組みを公表していますが、公務員試験の論文課題としてはそれほど多くはありません。具体的には下記の例があります。
〇カーボンニュートラルに関する取組が我が国にとって必要な理由を簡潔に述べなさい。カーボンニュートラルを達成するために我が国が行うべき取組について、その課題を踏まえつつ、あなたの考えを述べなさい。(国家一般職R4年の出題であるが、参照する資料は省略している)
なお、このSDGsに関する取り組みについては、基礎自治体では食品ロスやゴミ削減の問題として取り組んでいることから、特別区ではR3年にごみの縮減と資源リサイクルの推進が出題された。
一方、災害対策も国全体で喫緊の課題であることから、出題が多い。
〇災害に強い安全・安心なまちづくりを進めていくために行政に求められている役割について考察した上で、広島市としてどのようなことに取り組んでいくべきか、あなたの考えを述べなさい。(R2広島市)
〇避難所運営に関する課題を挙げた上で、適切な運営のための具体策についてあなたの考えを述べなさい。(R3八戸市)
地域に関するテーマ
少子化対策や高齢者支援、防災対策と国家的な課題に対応するには地域の方々との協働が不可欠になります。地域で子育てを支える、地域で高齢者を支える、地域で助け合って避難するなど、これからは地域の力が必要不可欠です。一方で自治会や町会の加入率が低下するなど、地域コミュニティの希薄化が言われるようになって久しいですね。そこで行政が地域のつながりをいかに再生するか、という課題も出題されています。
〇…行政には、年齢や国籍を問わず、多様な人々が地域コミュニティの活動に参加できる仕組みづくりや、既存の活動をさらに推進するための取組が求められています。このような状況を踏まえ、地域コミュニティの活性化について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを述べなさい。(R4特別区 問題文の一部を食略している)
論文試験で不合格になりやすいケース
小論文が重視されているなかで、どのような答案が不合格になってしまうのでしょうか?自分ではそこそこ書けていると思っていても、合格点に届いていないケースは以外とあります。公務員の論文試験で求められていることをしっかりと理解することが大切です。
ケース1
日本語として文章がおかしい場合です。主語と述語が一致していない、などはもちろんですが、日本語として不自然なものも減点の対象となります。ちょっとくらいおかしくてもニュアンスで伝わるだろう、はNGです。
ケース2
論旨が通っていない論文も評価が厳しいものとなるでしょう。たとえば、都市型災害の問題点として地域コミュニティが衰退することで共助の機能が働かない、と前半で述べているのに、後半で建物の耐震を進める、といった対策を論じるのでは、整合性がとれません。
ケース3
事実を羅列しているだけの論文も不合格になりやすいです。行政として何をすべきか、あなたの考えを述べなさい、という課題が一般的ですが、ただ〇〇県ではこんなことを、〇〇市ではこんなことをやっていると並べても論文としての形になっていません。
ケース4
行政が何をすることが必要なのか、具体的な記述がない論文は、自分では書けたと思っても落ちてしまっている人の要因かもしれません。たとえば、子育て支援として男性の育児休業の取得率を上げる、と書いても、実際にそれに向けて行政が具体的に何をするのかが書けていないと行政として何をすべきか、という課題に答えていません。
ケース5
論文を書く際の立ち位置も大切です。採用試験の際に課せられる論文ですから学者目線、マスコミ目線(すなわち外からの目線)ではなく、職員として志望先をよくしたいという当事者意識をもって記述することが求められます。
公務員試験論文を上手く書けるようになるには?
ここまで読んでいただいてありがとうございます。こんなにいろいろなことを勉強したり、考えたりしなくてはいけないのか、とちょっと憂鬱になっていませんか?でも、最初はうまく書けないのは当たり前ですから心配はいりません。しかし、論文の準備は面接対策にもつながることですから避けては通れません。利用できるものは利用して、効率的に準備をしましょう。
上手い論文を読みこむ
行政課題や施策を勉強したり、良い文章をたくさん読むことは、論文対策としては王道ですが、なかなかたいへんなことですね。では、今までの合格者の方々はどのような準備をしてきたのでしょうか。
効率よく準備を進めるには、典型的な課題について、何をどう書くのか、ということは、お見本答案や解答例などを参照するのが早いでしょう。
市販の公務員の論文試験対策の書籍であったり、予備校のテキストなどで勉強すると効率的ですね。お見本答案や解答例などを読み込むことによって、公務員試験の論文の型や、何をどのように書いていくのか、ということが自ずと身に付きます。合わせて典型課題の準備もできるのですから効率よく準備することができますね。
時事問題を把握するための情報収集を怠らない
行政課題の論文を書くために、白書や自治体の総合計画などを参照しましょう、とお話してきましたが、実際に白書や総合計画は膨大で、どこをどのように参照したらいいかわからないという方も多いと思います。行政の基本的な仕事は、国民・住民が安心して暮らせる社会の実現ですから、どのような困りごとがあるのか、それに対してどのような取り組みをしているのか、にアンテナを張っていきましょう。実はいろいろ報道されています。ただし、行政の立場として記述することが求められているので、ニュースソースは公のもの、または公に近いものにしましょう。
情報の整理方法
論文を書くためにいろいろな情報を調べるところからスタートしますが、調べても何をどのように書いたらよいかよくわからない、いつも論旨が通っていないと評価される、という人は、まずは、白書等に記載されている順番に沿って情報を並べてみましょう。箇条書きでよいです。
その上で自分がどのような対策が必要であると理解したことを並べてみます。そのうえで、なぜその対策が必要なのか、何を改善しようとしているのか、を考えて、対策とつなげます。そうすると、課題=対策がつながり、論文の論旨が通るでしょう。
公務員試験の勉強をするならLEC東京リーガルマインド
LECの講座では、公務員試験の論文の書き方について、注意しなければならにことや、どのように構成するのか、など、書き方の基本から学ぶことができます。さらに、近年の動向を踏まえて、よく出題される典型的な課題について、何を書くべきなのか、どのように書くべきなのか、知識を効率よく習得できる論点や解答例などを準備しています。こうした講座の特徴は、長年、公務員試験対策に従事してくるなかで、こんな答案が受かる、落ちる、という蓄積があるからできることです。
まとめ
最近の公務員試験では、択一試験などではそれほど受験生の間で差がつかないこともあって、論文の出来不出来が直接、合否につながるケースが多いです(もちろん論文が課せられている試験ということですが)。公務員試験を受けようと考えているみなさんが、まずは択一試験を突破しなければ、と考えるのは当然ですが、論文対策をおろそかにしては合格はありません。みなさんもしっかり準備して、本番に臨んでくださいね。
- 監修者:LEC実力派の講師陣
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