気合で乗り切った一年半
安田 裕貴さん
年齢 | 25歳 |
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受験回数 | 1回 |
職業 | 特許事務所勤務 |
出身校 | 立命館大学大学院 理工学研究科 機械システム専攻 |
受講講座 | 1年合格ベーシックコース+アウトプット完成コース |
弁理士を目指した理由・きっかけ
私が弁理士を目指すこととなった理由は、大きく3点あります。
まず、第1に祖父及び父が弁理士であり、弁理士という職業が身近であったたこと。第2に弁理士という職業は、学生時代に学んだ機械、電気、情報等の多分野に亘る知識を活用できる職業であると思ったこと。第3に難度の高い資格等を取得して価値ある人間になりたいと思っていたためです。
他にも様々な出来事が複雑に絡んだ結果、企業の内定を辞退して事務所に就職し、弁理士を目指すこととなりました。
LECを選んだ理由
私の父や、弊所の弁理士の先生で短期合格された方が、江口講師の講座をお勧めしてくださったことがきっかけでした。父は、「(江口講師は)やる気を出させてくれる面白い先生やで」などと言っていましたが、当初はあまり信用していませんでした。しかし、実際に、江口講師の無料講座に参加したところ、「この先生についていけば、短期合格できる」と確信しました。
主に受講したコースや講座の名称と受講した感想
1年合格ベーシックコースは、知財関係の知識が全くない人であっても、少しずつ勉強に取り組むことができる構成になっていたと思います。四法の全体構造から、各法域の基礎、そして短答試験に必要となる知識について段階的に落とし込んでいくため、無理なく必要な知識を身に付けることができました。
加えて、江口講師のオリジナルテキストは、内容がまとまっているだけでなく、知識のアウトプットがしやすい構成となっていました。
Lゼミは、学習経験者向けの講座であり、弁理士資格試験勉強1年目の私にとっては、ハードルが高い講座でした。しかし、ゼミ生の上位グループに必死に食らいついていこうと意識し、努力することで、何とかついていくことができるようになったと思います。
また、江口講師のLゼミでは、毎回の演習結果の順位が発表されるため、勉強のモチベーション向上にも繋がりました。Lゼミに参加しなければ、私の1年合格は実現しなかったと思います。
Lゼミは、短期合格を目指される方には是非お勧めしたい講座だと思います。とはいえ、初学者向け講座と、Lゼミとの両立は相当厳しかったです。
利用して良かったLECのテキスト・過去問集等の名称と具体的な感想
私は、江口講師の「コアレジュメ」、「パーツブック」が本当に素晴らしかったと思います。これらのレジュメは、知識のアウトプットがしやすい構成であり、移動中などの隙間時間にも活用しました。 コアレジュメは、基礎的な内容であり、Lゼミでパーツブックが配布されるまでの間に、知識の心棒づくりのために利用しました。
パーツブックは、論文に必要となる発展的な内容で、コアレジュメ等で身に付けた心棒の肉付けに利用しました。このパーツブックは、規定趣旨から主要判例まで論文に不可欠な情報が詰まっていて、私の受験生活にはなくてはならない存在でした。
短答式試験対策で気をつけたこと
私は、短答試験対策で大きく2つのことに気を付けました。
まず、1つ目が「条文を直に読むこと」です。私も多くの方々と同様、条文の直読みには四法対照を用いました。なお、「条文を直に読む」は、当然条約も含みます。実際、今年度の短答試験では重箱の隅をつつくような問題が出題されたため、条約を直読みしたことが短答試験合格に繋がったと思います。「みんなが解けるところを勉強する」という定石には反することになりますが、合格可能性を上げるという意味では、読み込んでおいて損はないと思います。
2つ目には、「試験に集中すること」です。試験に集中するのは当然のことですが、案外と集中することは難しいものです。短答試験は、3時間半にも及ぶ長時間の試験です。さらには、試験会場では「ため息をつく」、「貧乏ゆすりをする」等色々な方がいらっしゃいますので、思うように集中できないものです。単に私が神経質なだけかもしれませんが、できるだけ集中できないイレギュラーな環境に慣れる必要がありました。このため、私は、様々な方々がいらっしゃるLECの自習室で短答試験の模試を解いていました。
論文式試験対策で気をつけたこと
論文試験対策でも、大きく2つのことに気を付けました。
第1に、私は、「いつも同じ内容を書く」ことに重点を置いていました。つまり、同様の質問がされた場合には、いつも同じパターン(ブロック)で記載するよう心がけていました。毎回自分で新たな文章を考える必要がなくなり、必然的に解答速度が向上するほか、項目落ちを防ぐことが可能です。私の場合は、例えば、演習の答案返却後には、江口講師が作成された模範解答からブロックを抽出し、ノートに別途まとめ、何度も繰り返しアウトプットを行っていました。模範解答については、答案返却後、次のゼミまでに少なくとも2回は全文書きをしていました。
第2に、答案構成に重点を置いていました。答案構成は、論文試験において答案の方向性を決める重要な要素です。題意把握を誤れば、合格はほとんど不可能だからです。加えて、私は受験勉強期間も浅く、当初は、そもそもどういった形で答案構成を書けばよいのかさえ分かっていませんでした。そこで、弊所の弁理士の先生に答案構成のサンプルを作って頂き、当該サンプルから自分に合った形に派生させていました。春頃には自分のスタイルが固まっていたと思います。
口述試験対策で気をつけたこと
私は、口述試験対策においては、特に「会話のキャッチボールをする」ことに気を付けました。口述試験は、10分間に全ての設問を答えきることができれば、基本的に合格とされています。そのためには、試験官が求める回答のみを答え、各設問を短時間で乗り切る必要があります。例えば、間接侵害が考えられる問題が出題され、「〜侵害となりますか?」と質問されたとします。この場合には、「原則侵害しません。」と答え、「例外は?」と聞かれてから「間接侵害で侵害となる場合があります。」というように答えます。
通学、または通信での受講のメリットとデメリット
通学受講のメリットは、モチベーションを維持できる点にあります。例えば、初学者向け講座であれば、「1年合格するには上位○人にならないといけない」など常に自分を奮い立たせることができます。さらには休憩時間に携帯を触る人等を見て、「自分は休憩時間内も勉強しているのだから、彼らに負けるはずがない」と自分に言い聞かせていました。
なお、私は通学受講にデメリットを感じませんでした。通学受講のデメリットとして、通学時間がかかる点を挙げる方がいらっしゃると思いますが、私の場合は、移動中も勉強していたため、特にデメリットを感じませんでした。むしろ、必然的に勉強環境を変えることができ、気分転換になったとも思います。
通信での受講のメリットは、何度も同じ講座を繰り返し受講できる点だと思います。講座を受けても長期間経てば、どうしても知識が抜けていくため、私は初学者向け講座を通信受講で複数回視聴しました。
これに対して、通信での受講のデメリットは、あまりモチベーションが上がらないところだと思います。口述対策の講座は、関西では9月まで通信講座しかありませんでした。私は論文試験後にやや燃え尽きていたことも相まって、ただ講座を眺めてマーカーを引くという論文試験前には考えられないような状態になっていました。
仕事や学業、家庭と勉強の両立のコツ・時間活用術など
私は、特許事務所に就職後、すぐに勉強を始め、加えて妻も子もいないため、ご家庭がある方と違い資格試験勉強に集中することができました。さらには、事務所の皆さんのご協力もあり、ほとんど毎日、定時に帰宅させて貰っており(残業は指で数える程だったと思います)、十分に勉強時間を確保できました。それでも、確実に短期合格するために勉強時間の確保には様々な工夫を行いました。
まず、第1に通勤時間を極力減らすために、事務所とドアtoドアが5分ほどの場所に引越ししました。もちろん、通勤電車内で勉強はできますが、可能な限り勉強に集中したいと考えており、さらには仕事と勉強以外に余計な体力を浪費したくなかったためです。
また、第2に早朝から出勤し、事務所で勉強していました。朝5時半に起床し、6時くらいから勉強を開始していました。勤務時間開始のギリギリまで勉強させて貰っていたので、平日でも午前中に2時間半程勉強していました。
第3に食事に時間をかけないようにしました。私は一人暮らしだったため、食事を準備する必要がありました。外食という手もありましたが、毎日外食するほど生活に余裕はなかったため、季節問わず鍋を食べていました。おそらく生活に必要であろう栄養は摂取でき、またカット野菜や肉を適当に入れれば、あとは放っておいて勉強していてもいいからです。
他にも、「風呂で知識のアウトプットをする」や「短い通勤時間内でも知識のアウトプットをする」など、ここには書ききれないほどの工夫を行いました。思い返せば、就寝、食事や家事以外の時間は勉強していたように思います(当然息抜きをすることもありました)。
なお、食事中に勉強するのは行儀が悪いということと、間違いなく勉強に集中できないことから絶対に食事中の勉強はしませんでした。
今、合格して思うこと
心からほっとしています。1年半、様々なことに対して禁欲し、資格試験勉強のみに集中した甲斐があったと思います。この1年半、私を支えてくださった家族、事務所の所員の方々、応援して下さった皆様には本当に感謝しております。特に、初学者向け講座からLゼミまでお世話になりました江口講師、資格試験勉強の水先案内人となってくださった弁理士の先生方、そして、口述試験対策を含む様々な面でサポートしてくれた父に感謝しております。
一つ心残りがあるとすれば、論文試験終了後、且つ論文試験合格発表前に、弁理士だった祖父が亡くなり、最終合格を伝えることができなかったことです。
皆様ご存じのように、弁理士資格試験に最終合格したことはゴールではありません。知財関係の知識のみならず、英会話能力など身に付けるべき事柄は山のようにあります。弁理士資格試験最終合格は、1つのステップに過ぎないと認識し、次のステップを目指して日々精進します。
これから弁理士を目指す方へのメッセージ
弁理士資格試験勉強は、「下りのエスカレーターを駆け上がるようなもの」だとよく言われます。立ち止まれば、これまでの学習が無駄になるだけでなくモチベーションを維持することができません。少なくとも、中途半端な気持ちでは挑まない方がよいと思います。私は、もともと根気が無い性格でした。このため、受験期間が長引けば中途で心が折れてしまうおそれがあり、何が何でも短期合格したいという思いで受験勉強に取り組みました。 私が1年半の受験生活で得た弁理士資格試験勉強に対する心得は、以下のようになります。
- 「1.講師の指示通りに勉強を進めること」
- 「2.時間確保に全力を注ぐこと」
- 「3.合格のベクトルを今年度に向けること」
- 「4.合格するイメージすること」
- 「5.自分で限界を決めないこと」
- 「6.常に負荷をかけ続けること」
- 「7.(アウトプットを)繰り返すこと」
- 「8.(論文答案を)実際に書くこと」
私の合格体験記が、これから弁理士資格試験に挑む方々に少しでも役に立てば幸いです。皆様の弁理士資格試験最終合格をお祈りしております。