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弁理士試験の難易度

弁理士試験の難易度

更新日:2023年12月1日

作成者:芦田 圭司 LEC専任弁理士講師

この記事では、弁理士試験はどのくらいの難易度・合格率なのか、を具体的にデータを見ながら解説していきます。合格までに必要とされる勉強時間や弁理士試験の制度についても解説していきます。

目次
弁理士試験の合格率
弁理士試験制度
弁理士試験の受験者層
弁理士試験の学習時間
弁理士試験に合格するためには
弁理士試験への学習スタンス

弁理士試験の合格率

令和5年度弁理士試験の志願者数は3,417人に対し、合格者数は188人であり、最終合格率は6.1%でした。
以下は、合格率について他の国家試験との対比です。

資格名 合格率
司法試験 30〜40%
税理士 約20%
宅建士 15〜17%
行政書士 10%前後
土地家屋調査士 8~10%
社労士 6〜7%
司法試験予備試験 約4%
司法書士 3〜4%
弁理士 約6〜9%

合格率6.1%というのは、司法試験予備試験や、司法書士試験についで低い数字です。他の国家試験と比較しても、弁理士試験が難易度の高い試験に分類されるのは間違いありません。
ただ、合格率40%前後の司法試験や、合格率20%の税理士試験の合格率をみて、これらの試験が他の試験より容易であると判断することはできないはずです。
試験の難易度は、単純に合格率のみで判断することはできず、その試験制度を併せて考えなければなりません。

弁理士試験制度

難易度の観点から、弁理士試験の特徴を見ると、以下の点に注目する必要があります。

  • 3段階の試験制度
  • 試験科目
  • 論文試験の存在
  • 免除制度
(1) 3段階の試験制度
弁理士試験は5月にマークシートの短答試験、7月に論文試験、10月に面接型の口述試験があります。

令和5年度の試験では、短答式試験の合格率は12%、論文式試験の合格率は28%、口述の合格率は94%でした。
弁理士試験は、弁理士試験は「短答」「論文」「口述」の3段階に分かれておりすべてを合格することが必要かつ、試験期間がおよそ6か月と長期に亘り試験に取り組む意志が要求され、記念受験のような受験者は少数です。

試験概要 合格率

(2) 試験科目
弁理士試験の試験科目は、工業所有権法を中心とした特別法からなり、一般に触れる機会の少ない法律です。
行政書士試験や司法書士試験などでは、憲法・民法・商法等が出題され、受験前から学習内容の概要を把握している受験生も少なくありませんが、弁理士試験は、受験勉強で始めて工業所有権法に触れるという受験生がほとんどです。

【試験科目】

短答式試験 特許法・実用新案法、意匠法、商標法、条約、著作権法、不正競争防止法
論文式試験 必須科目 特許法・実用新案法、意匠法、商標法
選択式 機械・応用力学(理工T)、数学・物理(理工U)、民法(法律)等6科目から一つを選択
口述試験 特許法・実用新案法、意匠法、商標法
(3) 論文式試験の存在

論文式試験の存在

弁理士試験の2次試験は論文式試験です。およそ2,000文字の論文を一日かけて4本作成します。
我が国の教育制度において、論文を書く機会が非常に少ないためか、「試験論文がどういうものか全く想像できない」と言われる方が少なくありません。論文試験の存在が、心理的に弁理士試験のハードルを上げているのは間違いないと思います。
ただ、論文試験に対する不安は、学習を開始し「論文とはどのようなものなのか」という点が明らかになれば自ずと解消します。
論文試験は、工業所有権法という明確なルールと、試験問題で示された条件のなかでのみ解答すれば良いので、論文の書き方を学び、工業所有権の知識を固めていけば、作られる論文は概ね同じような構成にまとまっていきます。
2次試験は決して簡単な試験ではありませんが、勉強に取り掛かる前の時点で、試験論文について明確なイメージが持てないことに不安を感じる必要は全くありません。

(4) 免除制度

弁理士試験には、多様な免除制度が設けられています。一次から三次までの各試験は、1年で全て合格しなければならない訳ではなく、一度合格すれば、その年を含め3回免除されます(口述試験は2回)。
実際に、各試験を一気合格する方は多くなく、大抵は、短答に合格し、その翌年に論文と口述に合格する、といった、2年越しのルートをとります。
2023年の統計でみれば、弁理士試験の合格率は6.1%ですが、この統計は単純に志願者数からみたその年の合格者の割合です。一次試験の免除を受け、その翌年に、二次試験から試験を受験する方は、一次試験の負担がありません。一年間の学習リソースを論文試験に集中できた受験生が、二次試験を突破する割合は、二次試験の数値上の合格率28.0%より確実に高くなるはずです。
弁理士試験の一次試験は、司法試験の予備試験のような位置づけと考えても良いかもしれません。
二次試験の選択科目についても、所定の資格等により免除されます(選択免除)。
最終合格者における選択免除者の割合は、全体の7割弱にもなっており、統計上、選択免除を受けることで合格率について大きく高まることが明らかになっています。

弁理士試験の受験者層

令和5年度最終合格者 年齢別

令和5年度最終合格者において、20代が31.4%、30代が47.3%、40代が13.3%、合格者の平均年齢は34.3歳です。
司法試験28歳や公認会計士試験25歳と比較すると高めですが、不動産鑑定士試験は約38歳、司法書士試験は41歳ですので、目立って高いというものではありません。

令和5年度最終合格者職業別内訳

弁理士試験の受験者層は、会社員が49%と一番多く占めています。次に特許事務所勤務者で34%。受験時には特許や知財の専門家ではない知的財産に携わる機会がある方(あった方)が働きながら受験をし、合格されていることが分かります。

令和5年度合格者 出身系統別内訳

出身系統は理工系が約8割、法文系が約2割です。
これは、知的財産に携わり弁理士試験を検討する環境にある方に技術職が多いということで、弁理士試験において理工系が有利ということを示すものではありません。

弁理士試験の学習時間

学習時間について正確な統計はありませんが、試験予備校等の受験業界においては、合格まで「3,000時間」が目安といわれます。
ただ、仕事をされながら1年で合格するケースがある一方で、10年かけて合格されるようなケースもあるので、「どれだけ」ではなく、「どのように」時間を掛けたか、という点が重要になります。

資格 合格率
宅建士 300〜400時間
行政書士 500〜600時間
社労士 800〜1,000時間
土地家屋調査士 800〜1,200時間
司法書士 3,000時間
司法試験 6,000時間
弁理士 3,000時間

弁理士試験に合格するためには

客観的に弁理士試験の難易度が高いのは間違いありませんが、試験制度の複雑さや試験内容の特殊性が、受験の心理的ハードルを上げており、その点を含めて弁理士試験の難しさがあります。
合格率について、統計上受験生の上位6%に入る必要がありますが、一回の受験で上位6%に入ることが求められるわけではなく、選択式試験の免除や一次免除を確保することで合格率の底上げを図ることができます。
一回の試験で全てが決まる司法書士試験等の国家試験に比べると、対策が立てられるという点について、受験がしやすい側面があります。
受験生間において、学習開始時における学力差が少ないので、学習の効率化がそのまま短期合格に繋がります。

弁理士試験への学習スタンス

弁理士試験の場合、ほとんど市販で受験対策の書籍が発刊されていないため、独学での学習は難しいと考えます。
論文添削のサービスが受けられないため、自分の書いた答案が合格に達する答案かどうか判断をすることができません。

受験予備校を利用した場合、膨大な出題範囲から受験のプロである講師が得点に直結するように試験傾向にあわせて講義をします。
効率よく学習を進められるよう合格までの学習スケジューリングまでを行います。
また、答練・模試などの演習講座では実戦力を身に付け、さらには受験生の中での自分の立ち位置を把握することで試験までの万全な対策を行うことが可能です。

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