合格への近道は揺るがぬ決意とたゆまぬ努力!
辻 雄介さん
年齢 | 29歳 |
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受験回数 | 1回 |
職業 | 会社員 |
出身校 | 岐阜大学大学院 工学研究科 生命工学専攻 |
受講講座 | 1年合格ベーシックコース+アウトプット完成コース |
弁理士を目指した理由・きっかけ
大学院修了後医薬品メーカーの研究職に就きましたが、30歳を目前にし、今後のキャリア設計を考えた時に新たな分野にチャレンジしたいという気持ちが強くなりました。
数ある資格・仕事をリサーチするなかで、弁理士は法律に関する難関資格でありながら理系の方が多く合格されていることを知り、また、最先端の技術に携わることのできる仕事内容は大変魅力的であるのと同時に、自身の研究職としての開発経験や専門知識を活かすことができるのではないかと考え目指すことに決めました。
LECを選んだ理由
知財未経験であったため、独学で勉強していくのは厳しいと考え、インターネットで受験機関を検索しました。そのなかで、合格実績で他の受験機関を圧倒しており、かつ名古屋でも初学者用の通学講座が開講されているLECを選びました。
また、資格の予備校に通うのは初めてで少し不安もありましたが、名古屋駅前本校で開催された短期合格者座談会に参加して、先生やスタッフの方、合格者の方々のエピソードを聞くなかで、校舎内の雰囲気が良く、自身にとって良い環境で勉強できそうだと感じることができたことも決め手の一つとなりました。
主に受講したコースや講座の名称と受講した感想
「1年合格ベーシックコース」では高橋寛明先生に大変お世話になりました。先生の講義は、単純な丸暗記に走るのではなく、その条文・制度が存在する根幹・趣旨の部分から丁寧に解説してくださり、理解がしやすかったです。また、例年受験生の多くが苦手としている規定や本番の試験で狙われやすい部分については、とことん時間をかけて、かつ戦略的な解説をしてくださり、苦手な法域・制度はほとんどないと断言できるようになったことは、弁理士試験、特に短答試験を突破する上では強力な武器となりました。
高橋先生は、講義中に過去の短期合格者の方の具体的な勉強方法や勉強に取り組む姿勢をよく話してくださいましたが、実際に結果を出されている方々の勉強スタイルを真似することは、合格への最短ルートにつながると思い、可能な限り自身の勉強にも取り入れるようにしていました。せっかく得たノウハウですので、自分のものにしない手はないと思います。
高橋先生の講座のなかで最も有益であったのは、論文式試験対策として受講した論文フォーマットゼミです。この講座がなければ論文式試験に合格できなかったと言っても過言ではありません。本講座の受講により、試験突破に必要な論述パターンを習得することができ、いかなる問題でも一定のパターンで論述することで、安定した記述量を生み出し、項目落ちも極力減らすことができました。本講座の最大の特徴として、講座内で行われる答練では、参加者全員の得点が公開されるという点が挙げられます。さらに成績上位者5名の答案は優秀答案に選ばれます。しかも、この答練では講義内で扱った問題と全く同じ問題しか出題されないため、仮に講義で受け取った先生の模範解答を全文再現できれば、その答練では満点をとれるような仕組みになっています。過去の論文式試験を突破されてきた方々は、その年のフォーマットゼミで上位の成績をとり、優秀答案に選ばれてきているという事実があったため、私も上位の成績をとり優秀答案に選ばれ続ければ、その年の論文式試験を本当に突破できるかもしれないと思い、優秀答案に選ばれること、そしてできるだけ上位の成績をとることを自然と目標とするようになりました。
模範解答を全文再現というと難易度が高いようにも思えますが、模範解答の内容を分析すると、その解答の大部分は条文の文言に事例を当てはめることで対応でき、実際に暗記しなければならない部分は意外と少なかったりもします。そのため、全文再現に対する要領を得て、それを淡々とこなせるようになれば、安定して優秀答案に選ばれることは決して難しいことではありません。
私も初期の答練では、全文をやみくもに丸暗記をしていたこともありましたし、また、せっかく覚えてもその内容を制限時間内に全て書ききることができなかったり、根拠条文を1つだけ間違えて満点を逃したりして悔しい思いもしました。しかし、その都度軌道修正をし、全文再現を淡々とこなせるようになってからは、それ以降の答練では毎回1位をとることができるようになりました。具体的な学習方法としては、自分で全文書きを読み上げて収録し、その音声データを通勤時間や自宅で聞く方法が一番効果的でした。
利用して良かったLECのテキスト・過去問集等の名称と具体的な感想
短答アドヴァンステキストは各条文の詳細な解説が記載されており、さらに対応する青本・審査基準の記載や関連する判例等が網羅されているため、短答試験のみならず論文式・口述試験対策でも重宝しました。短答試験直前は、短答アドヴァンステキストを何回も見返し、定着しづらい箇所は重点的に確認しました。論文式・口述試験対策では主に趣旨の整理のために活用していました。
短答式試験対策で気をつけたこと
短答基礎力完成講座では、使用をする短答アドヴァンステキストにマーカーを引きながら講義が進められます。高橋先生流のマーカー法は終始一貫しており、その都度スタイルが変わることもありません。したがって、その方法を一度習得さえしてしまえば、あとは自分一人でもテキストにマーカーを引いて学習を進めることができます。私は、貴重な各回の講義時間を単に先生の指示に従いマーカーを塗るだけの時間で終わらせたくなかったため、次回の講義で扱う範囲はあらかじめテキストにマーカーを引いておくことで予習をし、実際の講義では、高橋先生の重要な解説を聞き逃さないこと及びテキストには記載されていないプラスαの情報をテキストにメモすることに重点を置くようにしていました。講義後はできるだけ早い段階でテキストを見返し、さらに収録した音声データは通勤時間や自宅で聞いて復習をしていました。このように予習時+講義+復習時と最低3回はテキストの同範囲を繰り返すことで、講義の段階である程度の知識は身につけることができたと思います。
条文集は四法対照条文集を使用していました。四法対照条文集は各法域の対応する規定が縦に並んでいるため、同じ規定であっても各法域独自の条文は一目で判別でき、類似する制度の相違点が問われる短答試験において、必然的に狙われやすいところをおさえることができました。 下三法については、昨年度の短答試験から科目別合格基準も導入されており、軽視することはできませんが、特に条約や著作権法については範囲が膨大であり、全範囲を完璧に定着させることは難しいと思いましたので、過去の本試験で問われたことのある内容等の優先度の高い範囲から取り組み始めました。
過去問については、先生のアドバイスもあり、入門講座開講後の比較的早い段階から取り組み始め、上四法については年内に3回繰り返しました。過去問集についても高橋先生独自のマーカー法があり、これにより単に○×を判断するのではなく、なぜ○なのか×なのかを判断せざるを得ない状況を作り出すことができ、質の高い過去問対策が可能となりました。
論文式試験対策で気をつけたこと
論文式試験対策として、論文実戦答練を受講しました。論文実戦答練では、結果自体は散々なものでしたが、本試レベルの問題に初めて触れることができ、目指すレベルが明確となり、良い刺激になりました。
私は、論文フォーマットゼミのおかげで、多くの問題数に触れ、様々なジャンルの事例問題については比較的十分な対策をすることができていたと思います。しかし、趣旨や判例の勉強には多くの時間を割くことはできませんでした。
趣旨対策としては、少なくとも口述アドヴァンステキストに載っている内容や答練や模試で実際に出題されたものについては完璧に覚えることを意識しました。また、分からない趣旨が出題される場合でも、「従来の法制度+その問題点・課題+規定の内容」を考え、その場で趣旨をつくり出すことを教わり、その訓練に努めました。
判例対策は、時間的な問題もあり、判例用の講座・テキスト等を改めて勉強をすることはしませんでした。論文式試験用の講座や答練・模試で出題されたものをしっかりと復習しておけば、本試験では十分に対応できると思うので、今となってはその選択で良かったと思っています。
過去問については結局ほとんど手が付けられず、直近数年分の問題を軽く目を通した程度で本番を迎えることになりました。時間的に余裕があれば、過去問対策も充分取り組められれば良かったとは思いますが、論文フォーマットゼミで培った論述パターンと全文を最後まで書ききる力があれば、本試験でどのような問題が出題されても十分戦うことができると思います。
口述試験対策で気をつけたこと
論文式試験に合格している確証はありませんでしたが、かといって合格発表まで何も勉強しないのはまずいと思い、論文式試験後しばしの休息の後、8月頃から、徐々に口述試験の勉強を開始しました。この時期は、主に口述アドヴァンステキストを用いてインプット中心の勉強をしました。論文式試験合格発表後は、会派の練習会や受験機関の口述模試等、参加できるものにはできるだけ参加し、アウトプット中心に対策を行いました。練習会に参加することで、頭では理解していたつもりでも実際に口に出してみるとうまく説明できない経験や回答が分からず沈黙してしまう経験をすることができ、本番直前まで危機感を持って勉強をすることができました。そのため、口述試験対策としてはできるだけアウトプットの場数を踏むことが重要であると思います。
口述試験用の講座としては、口述乱取り講座が役に立ちました。その名の通り、口頭試問の乱取りを行うことができるだけではなく、講座が実際の口述試験会場で行われるため、試験部屋の下見ができ、本番当日をイメージすることができて良かったです。
通学、または通信での受講のメリットとデメリット
メリットとしては、毎週講義があるため、必然的にまとまって勉強する時間が確保でき、勉強スケジュールが立てやすい点、また、勉強仲間や先生と毎週顔を合わせることができる点が挙げられます。勉強仲間は弁理士試験合格を目標とする同士であるため、互いに問題を出し合ったり、受験勉強についての相談をしたりと受験生活において大切な存在となりました。 私の場合は、校舎から比較的近い場所に住んでいたため交通費や通学時間もあまり気にならず、デメリットはほとんど感じられませんでした。
仕事や学業、家庭と勉強の両立のコツ・時間活用術など
仕事をしながらの受験勉強となったため、勉強時間の確保と具体的な勉強内容には注意しました。現在の職場は、まれに休日出勤や出張が入ることもありましたが、普段はあまり残業もなく、毎日定時近くに退社できていたため、勉強時間の確保という観点から言えば比較的恵まれている環境でした。とはいえ1年で最終合格することを考えると、できるだけ多くの勉強時間を捻出することは必要不可欠であると感じました。具体的には、通勤時間、就寝前等のスキマ時間を勉強にあて、主に音声データを聞いたり、テキストをざっと見返したり、短答試験の問題を数枝解いたりしていました。スキマ時間で行えることは限られていますが、スキマ時間の積み重ねが大きな勉強時間をつくり出し、ひいては知識の向上につながると思います。いずれにせよ受験期間中は、生活の主軸を受験勉強に置くことを常に意識していたような気がします。
また、具体的な勉強内容についてですが、知識の拡大のためにあれやこれやと講座や参考書に手を出し、その結果全てが消化不良になるのは本末転倒なので、勉強する対象は必要最低限とし、その対象にできるだけ何回も触れるようにしました。私が主に使用した勉強ツールは、体系別短答過去問、短答アドヴァンステキスト、論文フォーマットゼミの問題、口述アドヴァンステキスト、各種答練の問題のみです。これらを理解するまで徹底的に何回も繰り返すことで知識の定着を図りました。
さらに、弁理士試験の勉強は長期にわたるため、勉強に対するモチベーションの維持も重要です。モチベーションを維持するための一つの手段として、自身の頑張りを視覚化することが大切であると思います。私の場合は、講義等で使用したマーカーでインクの切れたものを入門講座の開講日から全て保管し、勉強に行き詰った時は、これまでに自分がどれほどのマーカーを消費してきたのかを確認していました。(結果、最終合格に至るまでに186本のマーカーを消費しました。)これにより、自身の勉強量が使用済みマーカーの蓄積となって一目で確認できるため、「自分はこれだけ勉強してきたのだ」とモチベーションの維持につながったと感じています。
今、合格して思うこと
今回最終合格に至ることができたのは、私一人だけの力によるものではありません。家族、勉強仲間、先生、スタッフの方々等たくさん方の支えによるものであると感じています。今では、感謝してもし尽くせないほど感謝しています。
また、弁理士試験合格というくくりのなかでも特に一発合格にチャレンジできるのは、当然ですが最初の1年目だけです。私はこの1年、最終合格を夢見て努力をしてきました。今は、目標としていた一発合格を本当に達成することができ、充実感と嬉しさでいっぱいです。
音楽家ベートーヴェンの名言で「努力した者が成功するとは限らない。しかし成功する者は皆努力している。」というものがあります。この言葉は弁理士試験にも通じるものがあると思います。100人いたら90人以上が不合格となるこの弁理士試験では、まわりと同じことをしていても合格できません。私の受験生活を振り返ってみると、人様に胸を張って自慢できるほど努力をしてきたと言えるわけではありませんが、最終合格を勝ち取った方は、例外なく強い意志と覚悟を持って、相当の努力をされているのだと思います。
これから弁理士を目指す方へのメッセージ
長い受験生活のなかで、不安になること・辛いこと・後悔することがあるかもしれません。そんな時は一度立ち止まって、そもそも自分はなぜ今受験勉強をしているのか?なぜ弁理士になろうとしているのか?を思い返してみてください。合格したいという気持ちを自分のなかで整理することができれば、あとは覚悟を持って淡々と日常の勉強をこなすだけだと思います。弁理士試験は確かに難関試験ではありますが、合格する意志と覚悟さえあれば必ず合格できる試験です。受験生皆様の合格をお祈りしています。頑張ってください。