「一発合格」という目標
田中 研二さん
年齢 | 25歳 |
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受験回数 | 1回 |
職業 | 特許事務所勤務 |
出身校 | 東京大学大学院 理学系研究科 化学専攻 |
受講講座 | 1年合格ベーシックコース+アウトプット完成コース、中上級者向け講座 |
- ※掲載年齢について…掲載している合格者の方々の年齢は、2015年度弁理士試験の最終合格発表日(2015/11/12)時点のものです。
弁理士を目指した理由
私は大学院を修了後、新卒で特許事務所に就職しました。弁理士を目指した理由は、これから知財の世界で働くにあたり、仕事の幅を広げるには弁理士の資格が必須と考えたことと、産業財産権法の基礎知識を一通り習得するには、資格試験を受けるのが手っ取り早いと考えたためです。
LECを選んだ理由
それまで理系一辺倒であった私にとって、法律の勉強は完全に未知の世界でした。そのため、予備校の入門コースを受講して、法律を一から系統的に学ぼうと決めていました。予備校の中でLECを選んだのは、事務所の弁理士の先輩方がほぼLEC出身であったことと、「一般初回受験合格者5人に4人がLEC出身」という強烈な謳い文句が理由です。
入門講座のカリキュラム・テキスト・講師について
私は、納冨先生に教わって本当に良かったと思っています。納冨先生は、勉強のスケジュール表や後述する「Nプロジェクトシート」を配布し、最速で合格を勝ち取るための最短ルートに受講生を導いてくださいました。メリハリの付いた無駄のない講義と、試験傾向の精密な分析に裏付けられた合理的な指導の下、勉強の計画立てなどに時間を費やすことなく、安心して目の前の勉強に集中することができました。また、なんといっても納冨先生は論文に強く、論文試験の下地となる「論文の作法」や「点数の取り方」を、入門講座から秋が終わる頃までに無理なく着実に習得できました。
短答試験対策で気をつけたこと
私の短答試験の勉強法は、納冨先生から配布された「Nプロジェクトシート」を使って、四法の各条文の要件や効果をひたすら口に出して説明することでした。
「Nプロジェクトシート」とは、四法の全条文それぞれについて、主体・客体・時期・手続の各要件と効果を覚える必要があるか否かをまとめた表です。例えば、特許法29条の2であれば、手続要件以外の主・客・時・効に○が付いています。
私は、これを見ながら「主体要件は、出願人が、先願と後願で、後願の出願時に同一でないことと、発明者が同一でないこと。客体要件は……」という具合に、あたかも他人に説明するかのように毎日喋っていました。この方法の利点は、自分の不理解が見えてくるという点です。「時」なのか「日」なのか、要件の判断時はいつなのか、先願が分割出願だったらどうか……条文を読むだけではスルーしがちなことが、不思議なことに、口で説明することで疑問として浮かんできます。そして、自分で「あれ?ここってどうだ?」と思い確認したことは意外と忘れないもので、しかもこのような見落としがちな点こそが短答で問われたりします。
1月頃から始めたこの勉強法は、驚くほど私に合っていたようで、3月半ばには模試でも45〜50点は取れるようになりました。4月下旬頃からは、納冨先生のアドバイスに従って、四法対照の精読を繰り返しました。
このため、四法の過去問はLECの過去問集の半分程度しか解いていません。それでも本試験では無事50点超えを果たすことができました。また、口で説明することで深まった理解は、論文や口述においても強みになりました。
なお、下三法は逆に過去問主体の勉強でした。
論文試験対策で気をつけたこと
一発合格のための関門は、やはり論文試験でした。
短答後の40日だけでは絶対に間に合わないので、9〜12月は論文に力を入れるべきだと思います。年明け以降は徐々に短答のウェイトを増していきます。
私は、年内にできる限り多くの問題を解こうと考え、9月頃から納冨先生の論文問題集(「補助問題集」)を進めていました。頻出テーマ(補正や分割、優先権など)は、模範答案を書き写したり、パソコンで自分なりの「答案テンプレート」を作ったりしていました。また、11月からは小池先生の「論文レベルアップゼミ」もスタートし、論文の頻出テーマについて一通り練習することができました。このように、補助問題集や小池ゼミで経験を積んでいなければ、一発合格はまず不可能だったと思います。
その一方で、論文試験は相対評価ですので、皆が書けないことを書けなくても、皆が書くことをちゃんと書けば合格できます。答練を受けて感じたのは、項目を落とさなければ、当てはめをしながら条文を書き写していくだけで高得点が取れる、ということでした。そうすると後は、試験時間内に終わるように少しずつ記載を簡潔にして、試験時間と記載量とのバランスを取れば、理想的な合格答案になるはずです。私の場合はこんな具合に、あまり難しく考えず、条文集片手に数をこなしていったことが功を奏したのかもしれません。
通学講座のメリット・デメリット
通学のメリットは、さぼらないためのペースメーカーになることと、先生に直接質問できることです。
前者は自分でさぼらず勉強できるなら不要ですが、個人的には二つ目のメリットが大きいと思います。先生も答えがわからないような質問(そういう質問は意外とたくさんあります)だと、納冨先生の場合、その場で規定趣旨や他の規定との関係性などを考えて答えてくださいました。このときの先生の思考プロセスを見ることができたことは、試験勉強に有用であったばかりではなく、弁理士として生きていく上でのかけがえのない財産になりました。
仕事と勉強の両立のコツ・時間活用術など
ご家庭のある方や激務の方に比べると、私は就職直後で仕事がそれほど忙しくなく、勉強に使える時間が多かったのですが、限られた時間を活用するには、やはり予備校の自習室など勉強せざるを得ない環境に身を置き、メリハリを付けて勉強することが一番だと思います。
今、合格して思うこと
私が勉強開始時に決めた目標は、生意気にも「当然のような顔で一発合格すること」であり、そのために「周りの受験生の方々よりも一歩先を行くこと」でした。わからないことはわからないままにせず、毎回講義後は質問に並び、論文の補助問題集も自宅でガンガン進めました。
これは、初めの目標が高ければ高いほど、多少モチベーションが落ちてもそれなりの高さに維持できるだろう、と思ったためです。また、周りの人よりも進んでいる自覚があれば、自信と余裕が生まれ、試験勉強のモチベーションが維持できるとも考えました。逆に、平均的な受験生が解ける問題を一通り解けるようになれば合格は近い、とも考えていました。
現にこの目標は功を奏したと思っています。もちろん、常に本心から「当然一発合格するでしょ」と思っていたわけではありません。しかし、自分なりに大真面目に決めた目標があったからこそ、多少成績が落ちても、落ち込むより先に悔しがり、納冨先生や小池先生の熱心なご指導の下で一層勉強に励むことができたのだと思います。
これから弁理士を目指す方へのメッセージ
弁理士試験は時間が掛かります。きっと他の様々なものを犠牲にすることになるでしょう。そうした犠牲を最小限にするためにも、弁理士を目指す理由を明確にして、自分自身の意志で受験を決断し、そしてぜひ、一発合格を目標にすることをお勧めします。
結局のところ弁理士試験は、個人差はありますが一定量の勉強を完了すれば合格する試験だと思います。逆に言うと、必要な勉強量を達成するまで勉強を継続すること、そこまでモチベーションを維持することが問題なので、最初に1年半試験勉強に没頭する覚悟を決めたら、後は自分に厳しくひた走ることだと思います。最後が精神論になってしまい申し訳ないですが、頑張ってください!