途中参加の短距離走型弁理士試験
鷲見 浩樹さん
年齢 | 30歳 |
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受験回数 | 1回 |
職業 | 特許技術者 |
出身校 | 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 |
受講講座 | 1年合格ベーシックコース インプット+アウトプット一括 その他学習経験者向け講座 |
弁理士を目指した理由・きっかけ
きっかけは特許事務所への就職が決まったことでした。当初は、特許事務所で働くのであれば弁理士の資格は必要だろう、新しい仕事をスムーズに進められるように就職までに勉強しておこうといった程度の軽い考えでした。
LECを選んだ理由
最初は通学か通信かで悩みましたが、自身の勉強環境から整えるために、通学を選択しました。地方では通学で講義を提供している予備校はほとんどなく、LECがその中でも立地としても実績としても優れていたため、LECを選択しました。
主に受講したコースや講座の名称と受講した感想
1年合格ベーシックコースと高橋先生の論文フォーマットゼミを受講しました。ベーシックコースでは、2019年の秋から途中参加したため、既に上四法の入門講座は終わっていました。これまで法律の勉強経験がなく、とても苦しいスタートでした。
高橋先生の講義は、条文一つ一つの意味や条文同士の繋がりなどの「条文の理解」にとても重きを置いており、体系的な法律理解と法的思考を学ぶことができました。高橋先生は、講義中に質問を投げかけ、受講生が質問に対し発言し、受講生が正しい解答に至るように導くというように、受講生との双方向のやりとりを意識して講義されていました。受講生自らの考えを自然に促す講義スタイルはとても新鮮で、単なる試験勉強を超える学びとなりました。
論文フォーマットゼミでは、単なる問題の解説に留まらず、その問題の背景や条文との繋がり、更には文章の書き方までイチから叩き込んでもらえました。「どういう項目を」「どういう順番で」「どういうキーワードを使って書くか」という思想に基づいて作り上げられた答案をトレースしつつ、文章の考え方というものを改めて身につけることができました。
利用して良かったLECのテキスト・過去問集等の名称と具体的な感想
体系別短答過去問は、類問を何度も解いて身につけるという観点でとても重宝しました。机に向かう時間のほとんどは、体型別短答過去問での勉強に費やしました。この問題集は短答アドヴァンステキストを使用したカリキュラムの通りに並んでいるので、ベーシックコースの予習・復習に使うことで相乗効果を発揮します。初学者は問題を解いたことのない人がほとんどなので、問題を解くことを前提とした講師の解説の「意図」を読み取ることが難しく、その解説の貴重さに気づかないのです。だからこそ、いち早く過去問を回し、講師の意図を読み取り、情報を吸収することが貴重となります。そのような観点からも、早くこの問題集に触れることは重要だと思います。
受講した答練や模試の名称と受講した感想
答練は、ベーシックコースに付属するものに加えて、学習経験者向けの論文実戦答練、短答合格後の論文直前答練、論文公開模試を受講していました。
論文実戦答練は、上述した論文フォーマットゼミで習得した型を論文実戦答練で試すという形で利用していました。型を知っていても自分のものとしてスムーズにアウトプットできなければ全く通用しないことと、これから本番で相手にするレベルを実感することで、日々の勉強のモチベーションになりました。
論文フォーマットゼミでも対策していない新規な問題への対応力を鍛えるために、論文直前答練と論文公開模試を受講しました。短答合格を前提として、短答受験前に両講座に申し込みました。直前期は特に本番形式で問題を解く環境は重要で、本番で起こりうるトラブルを事前に経験しておくことで、本番に落ち着いて挑むことができました。
短答式試験対策で気をつけたこと
最優先事項は、体型別短答過去問を一日でも早く一周回すことです。新年を迎える頃には、私は下三法を含めて一周していました。このとき、やったことのない内容は、ひとまず解説を一瞥する程度で早く回します。進めるうちに、同じ問題が何度も出題されていることに気がつくはずです。そのような頻出問題や論点があることを知った上で講義に臨めば、講義の吸収率が段違いで高まります。条文集や短答アドヴァンステキストを参照しつつ解くのは2周目以降でした。
その上で、講義音声を何度も何度も聞き直しました。講義の中の雑談すら再現できるレベルまで聞き込みました。最初は1.5倍速で講義音声を再生し、慣れてきたら2倍速で再生しました。点数が取りにくく暗記事項の多い条約は、特に重点的に聞き直しました。
直前期は、短答実戦答練などの本番形式の新規問題を何よりも重要視していました。本来3時間半の試験時間を2時間半に絞って問題を解き、自分のミスしやすいところを洗い出した上でそれぞれのミス対策をしていました。
論文式試験対策で気をつけたこと
高橋先生の論文フォーマットゼミの音声を回しつつ、配布されている全文書きを何度も何度も音読しました。勉強を始めて1ヶ月で学習経験者向けの論文講座が始まったので、最初は全文書きを見たまま、一日3周音読することをしていました。その過程で、条文の言葉に自分の体が慣れてきて、どのような思考の流れで全文書きが作られているか、より大きなブロックで捉えられるようになってきます。最終的には問題文を見た瞬間に答案をその場で暗唱できるところまで持っていきました。直前期では、題意把握の練習に努めました。全文書きの項目が、問題文中のどの問題から記載を求められていることが分かるか、を高橋先生に質問しつつ徹底的に研究しました。
口述試験対策で気をつけたこと
口述対策は通学講座で作った受験仲間と一緒に練習することでした。一人ではできないため、これまでにどれだけ信頼できる仲間を作っておくかが重要になります。論文試験が終了して1ヶ月後に、同じくベーシックコースの仲間とテレビ電話で互いに問題を出し合っていました。問題集は、口述アドヴァンステキストやレジュメなどを使っていました。論文試験の合格発表前から対策をしていたため、余裕をもって本番に挑むことができました。
ここまで来ると情報戦になってくるので、これまでに作ってきた受験仲間と情報交換し、合格したばかりの先輩弁理士からは、本番の雰囲気や試験の進め方など、色々な情報を得ていました。
通学、または通信での受講のメリットとデメリット
通学の最大のメリットは、他者と関わりながら勉強できることです。講師に直接質問することもできますし、受験仲間と協力して勉強法を研究することもできます。特に短期合格を本気で目指す人は、講義への取り組み方一つとってもまるで違います。私は同じゼミの仲間の取り組み方に圧倒され、絶対負けるものかと自分を奮い立たせてきました。それがなければ、私が今ここでこの体験記を書くことは許されていなかったでしょう。
特に論文試験は相対評価です。ならば、合格するにふさわしい人の答案と自分との比較が、自らの合格への可能性を図るために必要です。自らの合格可能性がどの程度かを知れば、自らがやるべきことが自ずと見えてきます。自分を客観視するためにも、通学、特に自分よりレベルの高い人のいる講座に身を置くことをおすすめします。
受講したゼミや道場、単発講座の名称と受講した感想
私は上記メインコース以外では答練や模試しか受講しませんでした。理由としては、メインコースの情報量を吸収するので手一杯だったこともありますが、メインコースを完璧にマスターすれば、あとは過去問から出てくる疑問点を自力で消化すれば十分合格できると考えたからです。
ただ、もし受講するとすれば、馬場先生の通学ゼミは受けてみたかったです。受講生同士の繋がりがとても強く、協力して弁理士試験に挑むところが、私にとって理想的な勉強スタイルでした。
仕事や学業、家庭と勉強の両立のコツ・時間活用術など
耳が空いている時間のほぼ全てを講義音声を聞くことに使っていました。また、机に向かっていられる時間のほぼ全ては過去問集やテキストの改造に使っていました。デスクの上に朝起きて復習する問題を開いておくことで、やる気に関係なく机に向かえば勉強できるようにしました。他にも、青本や審査基準などのPDFをクラウドを介してスマホで確認できるようにしたり、ワイヤレスイヤホンを使って気楽に講義音声を再生できるようにするなど、勉強への障壁を小さくする工夫を重ねてきました。
今、合格して思うこと
知財に関わる者として、私はようやくスタートラインに立てました。今は実務修習や職場での手続きなどに追われていますが、遠い先に目線を上げることができました。そして、仕事をしつつ全ての隙間時間を勉強に投じていたため、空いた時間で何をしようかを考えています。とても贅沢な時間の使い方ですね。とりあえず、支えてくれた家族に感謝を伝える日々が続いています。
これから弁理士を目指す方へのメッセージ
私は法律知識のない理系畑の人間です。2019年9月から弁理士試験の勉強を開始し、2020年9月に短答試験を受け、そこから一気に合格しました。誰よりも短期間で、誰よりも努力をしました。最終的に合格できたのは運が良かったと思いますが、ただ暗記したことを吐き出すだけの試験であれば、私はこの短期間では合格できませんでした。
弁理士試験は、暗記力を試す試験ではありません。法律の理解と法的思考力を試す試験です。解答に至る道筋を、条文に基づいて説明することが求められる試験です。これは、原理原則に基づいて考える理系の研究思考と非常に相性がいいです。初めはかなり強い負荷となるため、投げ出したくなると思います。しかし、そこを抜けると、法律という軸から世界が見えてきます。世界が全く違うものに見えてきます。しかもそれはまだスタートラインです。わくわくして来ませんか?この感動を分かち合える人が、一人でも増えることを祈っております。