司法書士の業務は、以前は登記業務や裁判所・法務局への提出書類作成業務が中心でした。2003年4月より、簡易裁判所の訴訟代理権が与えられ、司法書士も簡易裁判所において、弁護士同様に裁判業務ができるようになりました。また、高齢化の進展に伴い「成年後見制度」が導入され、高齢者の財産保護の分野でも司法書士が積極的に活躍しております。司法書士は、市民に最も身近な法律家として、業務範囲は進化・拡大し、その重要性は増すばかりです。
1.LECの講師が語ります
司法書士の業務について秋元優里講師がご紹介します。
「司法書士実務の世界」[11分29秒] 秋元優里 LEC専任講師
2.登記業務
土地のあるところ、企業のあるところに必ず司法書士の需要あり。
司法書士にとって、もっともウェイトの高い業務は、不動産登記と商業登記などの「登記」申請業務です。
不動産登記とは、不動産の所在や大きさなどのほか、誰が所有者かといった権利関係を登記記録という公簿に記録するものです。他方、商業登記は、会社の事業内容や資本金の額、役員など、その会社の重要な事項を登記記録に記録するものです。一定の登記事項は必ず登記しなければならないと法律で義務付けられているのですが、登記手続は複雑なうえ、もし手続を間違ってしまうと財産を失うおそれもあります。そこで、依頼者の権利が守られるよう登記手続のプロとして、司法書士が登記手続を行うのです。
3.供託業務
市民の紛争解決に役立つ
供託とは、供託所といわれる公の機関に金銭を預ける制度のことです。供託する理由は様々ですが、例えば、これまで家賃が5万円だったものが、家主(賃貸人)が急に家賃を10万円に値上げしたとします。
おかしいからといって、家賃を支払わないと債務を履行しないということで契約を解除されますし、利息もついてきます。そこで賃借人は、供託所に値上がり前の家賃を預けることによって、家賃の未納という事態を回避することができます。本人でも書類を書くことはできますが、手続きが複雑なため、多くの場合司法書士に依頼します。
4.裁判業務
需要急増!簡易裁判所での弁護活動。いまや、弁護士に迫る勢い。
2003年4月より、司法書士に簡裁裁判所の訴訟代理権が与えられ、司法書士も簡易裁判所では、弁護士同様に法廷に立ち、弁護活動をすることができるようになりました。図1を見ると、司法書士に簡裁代理権が認められた平成15年に簡裁の新受件数が大きく増加し、その後も増え続けていることが分かり ます。そして、図2のように、司法書士が原告側代理人となった事件は今では弁護士のそれに迫る勢いとなっています。経済的弱者への権利擁護など、市民の権利保護に司法書士が果たすべき役割は大きく、簡裁代理権を得てさらに活躍が期待されています。
※簡裁訴訟代理業務を行うには、司法書士合格後、特別研修を受け、法務大臣の認定を受ける必要があります。
※図1
※図2
5.成年後見業務
進む高齢化社会において、あたらな分野で活躍する司法書士が増加中!
成年後見制度とは20歳以上の成年者で判断能力が「不十分な」方の意思を補完するための後見制度です。
認知症、知的障害、精神障害などの理由で、不動産や預貯金などの財産管理などを行うのが難しい方、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまう方など、判断能力の不十分な方を保護し支援する制度で、2000年4月1日からスタートしました。
この制度を担うため、日本司法書士会連合会の指導の下、社団法人成年後見リーガル・サポートが設立され、現在約17,000人の司法書士のうち約3,200人が会員として参加しており、司法書士が成年後見人等として選任される割合も年々増加しています。
進む高齢化社会において、この制度は需要が高く、下図のように、成年後見関係事件の申立件数は増加し続けています。
司法書士は、判断能力が不十分な方に対し、その財産を守ることをはじめとした様々業務を行っています。
6.遺言・相続業務
高齢化社会の進展に伴い、遺言・相続に関する業務が増加しています。
遺言書がなく相続が開始されると、被相続人の財産は法律で定められた配分(法定相続分) で相続人に承継されることとなりますが、条文では割合が定められているだけで相続財産の最終的な帰属先が明確になっているわけではありません。そのため相続人同士での話し合い(遺産分割協議) により解決を図りますが、場合によっては相続人間で相続分などについて利害が対立し、争いが生じる可能性もあります。
遺言書作成に関するアドバイス、相続争いを未然に防止するための法的なアドバイス、紛争になってしまった場合の相談業務、相続登記業務など、相続全般に渡る業務を行います。この分野では、税理士など他の士業との関連も密接であり、他の士業と連携してワンストップで対応する事務所も増加しています。
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7.企業法務
会社は登記をすることにより成立し、また登記した内容に変更が生じた場合は遅滞なく申請することが必要です。
会社は、その企業活動において様々な法律上の問題に直面します。経済状況の変化、企業の不祥事などに対応するため、法改正が行なわれるなど、コンプライアンス(法令遵守)の重要性が高くなっています。
このような状況において、法務部などの部署をもたない中小企業にとって、これまで商業登記を通じて企業にたずさわってきた司法書士は、登記手続きだけでなく、会社運営全般に関する、身近な法務アドバイザーとなっています。司法書士は、企業法務の分野においても経営者の方々のサポートをしています。
8.渉外業務
国際化社会への対応
外国人が不動産を購入したときや、外国法人が支店を日本に設置するときなど、外国人や外国法人に関する業務のことを渉外業務といいます。昨今、日本は急速な国際化が進んでおります。こうした波は、司法書士にも渉外実務の増加という点で大きな影響を与えています。在日外国人が増加することで、外国人や外国法人に関する登記業務、それにかかわる相談業務が増え、司法書士の業務の幅が拡大してきています。また、外資系企業の増加により、外国法にかかわる業務の依頼が、会社・法人から寄せられることも多くなってきています。