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司法書士試験の難易度

司法書士試験

更新日:2024年11月8日
作成者:根本 正次 LEC専任司法書士講師

この記事では、司法書士試験はどのくらいの難易度・合格率なのか、を具体的にデータを見ながら解説していきます。
合格までに必要とされる勉強時間や司法書士試験の制度についても解説していきます。

目次
司法書士試験の難易度
司法書士試験の合格率
司法書士試験の学習時間
司法書士試験制度
司法書士試験に合格するためには?
司法書士試験への学習スタンス

合格率で比較!国家資格難易度ランキング

司法書士試験の対策をする前に、事前に試験内容や合格基準を把握しておきましょう。

資格名 合格率
司法試験 30%前後
宅建士 15〜18%
行政書士 10%前後
土地家屋調査士 8〜10%
社労士 6〜7%
司法書士 4%前後

まず、法律系資格の最高峰と呼ばれる司法試験の合格率30%前後程度と意外と高いことに驚かれるかもしれません。
ただ司法試験は、受験できる人が限られています。具体的には、受験資格として法科大学院卒業又は合格率が約4%の司法試験予備試験という難関試験を合格した者に限られているのです。そのため、受験資格がない試験と合格率で比較するのは、意味がないので、今回は除外します。
他の資格試験を見ると、行政書士試験は例年10%前後の合格率、宅建士試験は例年15〜18%の合格率、土地家屋調査士試験は例年8〜10%、社労士試験は例年6〜7%となっています。
そして、司法書士試験の合格率は4%前後です。
こうして他の国家試験合格率で比較すると司法書士の合格率はとても低く、難関国家資格ということが分かります。

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合格率4%のカラクリ
〜司法書士試験、本当の合格率は?〜

司法書士試験は国家試験の中でも難しい試験の一つと言うことは間違いありませんが、果たして本当に司法書士試験は100人中4人しか合格できないような試験でしょうか?
ここからは司法書士試験の本当の合格率についてデータを見ながら解説していきます。

受験者数で見る司法書士試験の合格率

こちらは令和6年度司法書士試験の最終結果を表にまとめたものです。

出願者数 16,837人
受験者数 13,960人
合格者人数 737人
合格率 5.28% ※1
合格者平均年齢 41.50歳
最低年齢 20歳 1名
最高年齢 73歳 1名
  • ※1:合格者数を受験者数で除した場合の割合です。
  • ※法務省「令和6年度司法書士試験の最終結果について(資料)」より

※参考:令和6年度司法書士試験の最終結果について|法務省(PDF)

令和6年度司法書士試験は、出願者数16,837人中、合格者数737人、合格率5.28%という結果となりました。
ここで注目していただきたいのが、出願者数約17,000人に対して、受験者数は約14,000人です。約3,000人もの方が出願をしたにも関わらず、受験していないのです。
司法書士試験には受験資格がなく、誰でも受験できるため、受験生の中には記念受験で出願しただけの方や、勉強不足で出願したけど、受験しなかった方が多数いるのです。
つまり、合格できる準備ができていない人が多く出願しているのです。これは、模擬試験の受験生数からも見て取れます。
司法書士試験の合格を目指している方、合格に近づいている受験生は、必ず予備校の公開模試を受験します。模試を受験すれば自分が合格できるレベルかどうか実力を測れますし、本試験の予想問題になるという面もあるからです。
では、どのくらい公開模試を受験しているかというと大体4,000〜5,000人程度です。
実際に願書を出願する人は多くても、受験準備ができていない人が非常に多いのが分かります。
その4,000〜5,000人の中から、600〜700人前後合格しているということは、実質15パーセントくらいが司法書士試験の合格率ではないかと考えています。

約4割が3回以内で合格!

約4割が3回以内で合格!

※「2024年口述模擬試験アンケート」より
※小数点第2位以下四捨五入。有効回答数:130名

この図は、合格した方に「あなたは、何回の受験で合格しましたか」をリサーチしたものになっています。
これを見ると、合格した方の約4割の方が、受験回数3回以内と回答しています。
もし、14,000人の受験生が皆さん学習できている状態で、受験しているのであれば、この図はもっと歪な形になってもおかしくありません。
約4割が3回で終わっているということですから、試験準備ができている人は固定化していて、その固定人数のなかで順番に受かっていると思われます。合格率4%というのは、受験を考える要素としては無視しましょう

合格者の多くは、30代から40代

  • 合格者の多くは、30代から40代
  • 平均年齢は41.50歳とありますが、最低年齢20歳から最高年齢73歳まで、上から下まで男女関係なく合格者がいらっしゃいます。

※法務省「令和6年度司法書士試験の最終結果について(資料)」より
※年齢は法務省発表「生年別合格数」より令和6年11月5日現在の推定年齢から算出(最低・最高年齢は法務省発表より)。
※参考:令和6年度司法書士試験の最終結果について|法務省(PDF)

こちらは、「どのくらいの年代の人が合格しているか」を示している図になっています。
難関試験なので、「頭の回転がいい、若い人ばかりが受かっているのでは?」と思うところですが、実際には異なります。20代の合格者は2割にも満たないのです。
そして、30〜40代が1番大きいボリュームゾーンになっています(60パーセントを超えています)。また、50代以上は約25パーセントもいます。
ここから、一旦、社会人経験をしてから司法書士試験の勉強を始める人が多いことがわかります。
(また、試験勉強の内容自体も、ある程度の社会経験があったほうが学習内容が頭に入りやすい部分が多々あります)

他学部でもハンデなし!!多彩な出身学部!

他学部でもハンデなし!!多彩な出身学部!

※「2024年口述模擬試験アンケート」より
※「法学部」には法科大学院出身者も含みます。
※「その他」には大学未進学者・出身学部不明者を含みます。
※小数点第2位以下四捨五入。有効回答数:139名

こちらは、「司法書士試験は、どういった学歴の人が受験しているのか」を示している図です。
司法書士試験は、年齢や性別、学歴に関係なく誰でも受験できます。
そして、実際の受験生の約半分以上が法学部出身ではありません(私も法学部出身ではありません)。
これは、今まで法律に縁のない方でも合格できる試験であることを意味しています。

合格者の男女比

合格者の男女比

司法書士試験は男性ばかり合格している?、と誤解されている人が多いのですが、合格者の約3割は女性が占めています
司法書士は、性別に関係なく、高い専門性があれば活躍することができます。そのため、女性の司法書士の先生は多くいらしゃいます。(また、講義をしていてクラスの半分以上が女性だったということも珍しくありません。)

※法務省「令和6年度司法書士試験の最終結果について(資料)」より
※参考:令和6年度司法書士試験の最終結果について|法務省(PDF)

司法書士試験の学習時間

次に、合格までに必要とされている勉強時間を比較しました。下記は、合格までに要するとされている勉強時間を少ない順に並べています。司法書士試験は、ネットなどで情報を調べると大体3,000時間と出てきます。
これは1日当たり9時間勉強することになりますが、これは本当なのでしょうか?

資格 合格率
宅建士 300〜400時間
行政書士 500〜600時間
社労士 800〜1,000時間
土地家屋調査士 800〜1,200時間
司法書士 3,000時間
司法試験 6,000時間

司法書士試験の勉強は3,000時間と言われていますが、本当なのでしょうか?

A:実際の受験生からのデータによると、早い人ではおおよそ1,500時間で合格しています。

1月 128時間
平日 2時間〜3時間
土日 6時間
1週 10時間(平日)+22時間(土日)
1年 1,536時間

3,000時間を1年で学習する場合、1日9時間の学習が必要です。この試験の受験生の多くの方は、働きながら学習しています。この1日9時間をを現実にこなしている人は皆無でしょう。
一方、働きながら一発で合格している人も多くいます。実際の合格者の方に聞いてみたところ上記のような時間の分量が、一発合格の平均でした。
ここから、一発で合格するには、3,000時間も学習時間は必要ではないということが分かります。

司法書士試験制度

司法書士試験の特徴

①問題の傾向

国家試験の問題は、2つに大別できます。①覚えれば解ける問題(社会や歴史の試験をイメージしてください)、②当日考えて導いて答えを出す問題(算数や数学をイメージしてください)。
司法書士試験の問題のタイプは①になります。覚えなければいけませんが、覚えれば問題が解ける試験です
1個1個覚えていけば、確実に点が上昇していき、合格に近づいていくのです。

②問題のレベル(難易度)

司法書士試験は、7月に筆記試験、10月に口述試験の2つの形式で実施されます。
ただ、口述試験は欠席しない限りまず不合格にはならないので、試験対策としては筆記試験だけで考えましょう。

この筆記試験は、3つのパートに分かれています。

  • ①午前の部・多肢択一式マークシート(5択) 35問 105点満点(3点配点)
  • ②午後の部・多肢択一式マークシート(5択) 35問 105点満点(3点配点)
  • ③午後の部・記述式試験

上記のBの記述式試験というのは、何かの論文を書かせる試験ではありません
司法書士になったら作ることになる「申請書」を作成できるかどうかを問う試験です。試験に合格すれば、研修などをしないでも登録できる、合格すれば即仕事ができるため、試験では仕事ができる人かどうかの審査がされるのです。

データから見る合格のための学習法

①メリハリをもって勉強する!

午前択一・午後択一・記述式の配点

これは、午前択一・午後択一・記述式の配点をまとめた図になっています。
択一だけで11科目あるのですが、問題数が同じでないことに気づいたでしょうか。明らかに問題数に開きがあります。
司法書士試験では、仕事で使うことが多い法令の問数が多く(たとえば、民法・不動産登記法)、仕事で使う機会が少ない法令は出題数が少ない傾向があります。
そのため、民法(20問出題)と憲法(3問出題)を、同じ時間をかけて勉強するのは得策ではありません。
ここから、司法書士試験の勉強では、メリハリをかけた学習スタンスが必要になることが分かります。

②効率よくさばく!

  • 午前択一
    ランク 令和6年
    AAランク(80%以上) 16
    Aランク(60%以上) 15
    Bランク(40%以上) 3
    Cランク(30%以上) 1
    Dランク(29%以下) 0
  • 午後択一
    ランク 令和6年
    AAランク(80%以上) 3
    Aランク(60%以上) 20
    Bランク(40%以上) 11
    Cランク(30%以上) 0
    Dランク(29%以下) 1
  • AAランク:受験生はまず落とさない
  • Aランク:合格者は数問しか落とさない
  • Bランク:2択になってしまう問題
  • Cランク:捨て問題
  • Dランク:難解すぎる

上記の図は、午前択一35問、午後択一35問の正答率をまとめたものになっています。
司法書士試験では、「難しい問題がどのくらい出題されるのか」を見てみましょう。
午前択一問題で見てみると、「受験生はまず落とさない」AAランクの問題は16問、「合格者は数問しか落とさない」Aランクは15問もあり、これだけで35問中31問あります。
この試験は難関試験ですが、問題の1つ1つは難しくありません。ただ、その粒が多すぎて消化不良を起こしてしまうのです。
このことから、司法書士試験の学習で必要とされるのは、深い理解ではなく、それなりの理解でいいので、効率よくさばくことであることが分かります。

③弱点を作らない!+得意を作る!

年度 上段:出願者数
下段:受験者数
基準点 合格点 合格点
−基準点
択一午前の部
上段:点数
中段:人数
下段:偏差値
択一午後の部
上段:点数
中段:人数
下段:偏差値
記述式
上段:点数
中段:人数
下段:偏差値
合計
令和6年 16,837人
13,960人
78(26問) 72(24問) 83.0 233.0 267.0 34.0
4,445人 2,789人 1,292人/2,445人
57.27 60.95 50.58

これは令和6年度の基準点・合格点を示した図になっています。
基準点とは、俗にいう足きり点と考えればいいでしょう。
たとえば、午前択一は78点(26問)となっているのは、午前で26問正解しなければ、午後の部の択一や記述式がどんなに良くても落としますよということを意味しています。先ほどメリハリを持つことが必要と説明しましたが、メリハリをかけすぎて 「捨て分野を作る」のは許されません 。3つの分野どこかで足切り点に引っかかってしまうと、その時点で不合格となるからです。
では、基準点をすべてクリアーすれば合格できるのかというとそうではありません。
基準点の合計は233.0点ですが、合格点と一致していないことに気づいたでしょうか。基準点+34.0点という「上乗せ点」が必要になるのです。
弱点を作らない、得意分野を作って上乗せ点を獲得することが重要です。

基準点は突破しやすく、上乗せ点が増加している傾向

年度 午前択一基準点
偏差値
午後択一基準点
偏差値
令和6年 57.27 60.95
令和5年 57.37 60.50
令和4年 58.33 60.25
令和3年 57.94 60.29
令和2年 57.23 60.89
平成31年 59.95 60.05
平成30年 60.54 59.58
平成29年 60.20 61.05
平成28年 60.56 59.55
平成27年 61.08 61.52

近年の「基準点の偏差値」「合格点までの上乗せ点」をまとめた図になっています。
基準点の偏差値を年度別に追いかけると、明らかに偏差値が下がっています。つまり、基準点までのハードルを下げて、総合点勝負の傾向が強くなっているのです。
昔の司法書士試験は基準点が高すぎて、短期合格を目指す人には大きな壁になっていましたが、現在は、基準点が低く設定されることから、その懸念が少なく、総合点評価を受けやすくなっているのです。

司法書士試験への学習スタンス

予備校を利用する(+どこまで利用する)?利用しない?

①予備校を利用する、利用しない(独学)
昔と違って、今は多くの市販の書籍がでています。そういった市販の本だけで合格している方も一定数いらっしゃいます。こういった市販の書籍を使った学習を俗に独学といいます。
予備校を使うことと比較すると、費用を大幅に押さえられるメリットがあります。
一方、司法書士試験の指導をしている予備校を使って学習する方法もあります。予備校を使う場合には、次の②も検討する必要があります。
②予備校にどこまで依存するか?
予備校で「学習の超基本となるところ」を重点的に教えてもらい、あとは自力で合格レベルに持っていくというスタンスから、「学習の超基本となるところ」「オーソドックスな論点」「今年狙われる論点」まで予備校に教えてもらい、また、「いつどの時点でどの科目を学習するか」「いつ前の科目を復習するか」「どの時点で記述学習を始めるか」などのすべてを予備校に任せて、自分は勉強に専念するというスタンスもあります。(LECでは両方の講座を用意しています)

働きながら学習する?学習に専念する?

①働きながら学習をする(兼業受験生)
仕事と学習を両立させることが必要になるため、学習の効率化が特に必要になります。初めから難しいことを手を出さず、段階的に学習内容を深めていくことを意識すべきです。
また、学習スケジュール管理が重要になってきます。どの時点で、どういった学習をするのか、月単位、週単位で計画を決めるべきでしょう。このあたりは、受講する予備校に委ねるのが一番効率的です。兼業受験生の多くのデータを持っている予備校が効果的なプランを提示してくれるでしょう。
一方、独学で学習する場合には、このあたりのことを自分1人で判断することになります。お仕事をしながら、学習計画を立て、学習するという3つのことを行うのはかなりの負担です。
兼業でかつ独学を選ぶという場合は、1〜2年の短期の合格というよりは、3年以上の長いスパンで学習を考えるのが現実的でしょう。
②学習に専念する(専業受験生)
仕事をいったんやめてしまって学習をする、又は、ほぼ学習に専念できる環境の方の学習スタンスになります。
1日の大半を学習に費やせるため(大体9時間程度)、知識の習得、定着がしやすいというメリットがあります。
ただ、いつでも学習できるというのが、学習効率を落とすことにもなりかねないため、しっかりとした学習計画を立て、自分に縛りをかけながら学習することが必要となります。

学習スタンスを決める要因は?

今まで説明した学習スタンスを決める要因は何でしょうか。

①経済的事情
予備校を利用することができるか、独学で市販の書籍で勝負するかは経済的事情にもよるでしょう。
②学習時間
たとえば、1日の学習時間が1時間も取れないという状況であれば、予備校を利用して短期の合格を目指すというよりは、独学で自分のペースで学習するのがいいでしょう。
③今までの学習経験
ここまで法律系の学習をしていて合格実績があるのであれば、おおよその学習のイメージが湧くと思います。その自分のイメージに沿ったスタンスを選びましょう。

ただ、上記より重視してほしいのは、「いつまでに合格したいか」です。
来年、何が何でも一発で合格したいのであれば、その可能性を最も高めるものを選ぶべきでしょう(予備校を利用する・予備校にほとんど学習計画を任せる) 一方、そこまで直近の合格を目指さないのであれば、上記の①〜③を重視した学習スタンスがいいでしょう。

経済的事情だけで独学にすることを決めるのは、もったいないところです。
合格年度が1年変われば、生涯年収も大変変わってきます。
いつまでに合格するために、どういうスタンスを選ぶか決めることが重要だと自分は考えます

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この記事の監修者

根本 正次 LEC専任講師
根本 正次 LEC専任講師
2001年司法書士試験合格。2002年から講師として教壇に立ち、専業受験生を対象とした「新全日制本科講座」(14年間担当)、学習経験者を対象とする講座等、初学者から上級者まで幅広く受験生を対象とした講義を企画・担当している。
講義方針は、「細かい知識よりもイメージ・考え方」を重視すること。熱血的な講義の随所に小噺・寸劇を交えた受講生を楽しませる「楽しい講義」をする講師でもある。
過去問の分析・出題予想に長けており、本試験直前期には「出題予想講座」を企画・実施し、数多くの合格者から絶賛されている。
著書に「根本正次のリアル実況中継司法書士合格ゾーンテキストシリーズ(東京リーガルマインド)。
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