企業経営理論の意義
総合商社、総合電機メーカー、大手百貨店、大手ゼネコン。総合の看板を背負った企業にとって、今ほど厳しい時代はありません。これらの企業では、市場環境の変化に対して、生き残りをかけたリストラクチャリングを迫られているからです。
そこでは、「今までの戦略や方針を捨て、企業にとっての本業を見定め、会社のサイズや組織を見直すことで、従業員の再配置を行う」といった血のにじむような努力が行われています。経営者のリーダーシップのもと、ヒト・モノ・カネの経営資源の選択と集中が実行されているのです。
企業経営理論とは、こういった企業の将来を方向付けるための枠組み(フレームワーク)であり、企業経営を舵取りするための必須ツールなのです。
2. 企業経営理論で学ぶこと
1、経営戦略論
自社を取り巻く環境(外部環境:政治、経済、規制、市場等・・・)と経営資源(内部環境:ヒト、モノ、テクノロジー、カネ等の内部資源)を考慮(SWOT分析)し、長期的かつ一貫性を持って策定された目標(ビジョン、ミッション、ゴール)を経営戦略といいます。
ここでは、(1)製品と市場のパターンに着目したアンゾフの成長戦略、(2)多様な製品を抱える(多角化)企業の資源配分のための枠組み(フレームワーク)であるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)、(3)市場における自社の地位や競合関係(マーケット リーダー、チャレンジャー、フォロアー、ニッチャー)に着目したポーターの競争戦略、(4)自社の持つ得意分野やノウハウといった競争力の源泉(内部資源の強み)に着目したコアコンピタンス、(5)多角化やM&A(エム・アンド・エー:企業買収)のメリット(シナジー)・デメリット(カニバリズム)等を中心に戦略論のフレームワークを学びます。
また、経営戦略と自社内の他の戦略との関係(上位概念、下位概念、戦術)や戦略の種類(事業戦略、機能戦略)等についても学びます。
2、組織論
経営戦略で定めた目標(ゴール)に対し、経営資源であるヒト(人材)を束ね(組織形態、組織デザイン、集権化、分権化)、従業員の能力を100%発揮できるようにするのが組織(人事)戦略です。
ここでは、上司の在るべき姿(リーダーシップ論)、人材の配置・管理(人的資源管理)、従業員のやる気(処遇と評価のリンク、モチベーション管理、目標管理)、能力開発・教育訓練等を中心に学びます。また、労働基本法などの労働関連法規もここで学びます。
組織論では、沈滞した組織の活性化(組織開発、組織文化)をテーマに扱うことから、助言理論とも関連しています。
3、マーケティング論
経営戦略で定めた目標(ゴール)に対し、消費者の欲求(ニーズ)をキャッチ(市場調査)し、商品(製品)を売るための仕掛けを企画・実行する(マーケティング・ミックス)のが、マーケティング戦略です。
ここでは、マーケティング戦略の目標を達成するため、プロダクト(製品)、プライス(価格)、プロモーション(販売促進)、プレイス(場所、物流)の4Pの操作方法を中心に学びます。また、競争の厳しい今日において、市場ニーズを踏まえた(マーケットイン)商品(製品)開発や、成熟した市場におけるブランドの役割、流通構造・歴史(流通系列下、小売パワーの台頭、製販同盟、卸の中抜き)等についても学びます。
3. 1次試験の出題例
- 令和6年度 第7問
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M.ポーターの「業界の構造分析(5フォース分析)」における代替品に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア ある業界に代替品が存在することは、その業界の潜在的な収益性に正の影響を及ぼす。
- イ 代替品となるものが少ないほど、代替品の脅威は大きくなる。
- ウ 代替品のコストパフォーマンス比の向上が急速であるほど、その代替品の脅威は大きい。
- エ 代替品を提供する業界の利益率が高いほど、代替品の脅威は小さい。
- オ 何を代替品と見なすかは客観的に識別しやすいものである。
企業経営理論 令和6年度 第7問の解答: ウ