2020年1月18日(土)実施
「行政書士summit 2020 国・地方自治体・企業コンサルタントとしての行政書士」
先日行われました「行政書士summit 2020 国・地方自治体・企業コンサルタントとしての行政書士」について、大学院の法学研究科で行政手続のデジタル化について研究を行い、また株式会社ジーテックでインターンシップをしている飯田森(イイダシン)さんに実施レポートを執筆していただきました。
今回のセミナーでは、国・地方自治体・各企業へ有識者として、コンサルタントとして活躍をする伊藤浩先生、徳永浩先生、黒沢怜央先生という3人の行政書士の先生の講演を聞くことができました。
行政書士の今までの単純な申請業務を行うというイメージが覆され、「政策法務」としての将来の行政書士像や「戦略的行政法務」とは何かを感じることができた講演でした。その内容について、1人ずつの講演内容と3人のパネルディスカッションの内容をまとめたいと思います。
伊藤浩先生
伊藤先生は総務省 行政不服審査会委員や国土交通省 賃貸借トラブル相談対応研究会委員などを務めており、国(行政)に対して行政書士としての知見を活かし活躍されています。
伊藤先生はまず行政書士について、そのネーミング自体が時代にそぐわないとおっしゃっていました。それが意味することは、行政書士の「行政」について、実際の仕事は「行政」に関することだけではなく、また「行政」という言葉に縛られて視野が狭くなってはいけない。「書士」について、書類作成だけが仕事であった従来とは時代が変わってきており、行政書士として必要とされる仕事が他にも多く存在する、ということでした。その行政や書類作成という従来から存在する業務ではない行政書士としての知識や経験が生かせる業務が国・地方自治体・企業コンサルタントであり、その内容こそが政策法務なのだと感じました。
そして、伊藤先生は国・地方自治体・企業コンサルタントを務めるためには圧倒的な知識が必要になるとおっしゃっており、実際に伊藤先生は自分が顧問や役員を務める分野について書籍を用いてかなりの時間勉強しているそうです。確かに、伊藤先生の講演の中でまず圧倒されたことが、レジュメの量や内容、そしてそれを作成するために用いた文献や資料の量でした。行政書士として単純な申請業務を行うだけという場合には関係法令や役所の手引きガイドラインなどを読み込めば良いと考えていましたが、やはり国・地方自治体・企業コンサルタントとして仕事をするためには圧倒的な知識量が必要になるのだなと感じました。
他の士業にも共通することですが、行政書士は開業後もかなりの勉強が必要だということは認識していました。しかし、伊藤先生の講演を聞いて新たな時代の行政書士として、政策法務の専門家として活躍するためには、想像をはるかに超える勉強が必要なのだと感じました。
徳永浩先生
徳永先生は、佐賀県行政書士会副会長を務めているとともに、最高裁判所任命民事調停員や佐賀県、佐賀市において多くの委員を歴任しており、また、大学や多くの企業の顧問を務められています。
徳永先生はこのように多くの委員や顧問を務めており、そのコツのようなものとして身の回りの困っている人に対して「手伝いましょうか」と声かけをすること、そしてそこで受任した業務において成果を出し、継続的な業務を頼まれるような接し方をすること、とおっしゃっていました。
また、徳永先生は教育分野やスポーツ分野などの顧問を務めていることもあり、多くの書籍を読むことで圧倒的な知識力を身につけ、顧問先との些細な会話の中でも新たな知識を提供することができるように心がけているそうです。「稼げる行政書士になるには?」という質問に対しても、「圧倒的な知見を持ち、そしてこれに見合う報酬額を提示する勇気を持つこと。」と回答されており、行政書士して法令に関する知識はもちろん、幅広い知識を持つことの重要性が伝わってきました。
また、行政書士にはどのような性格が向いているのかという質問に対しては、どんな性格の方でもそれをクライアントに長所として伝えることができる人が行政書士に向いているとおっしゃっていました。例えば、心配性な性格であれば慎重な性格、暗い性格であれば真面目な性格、など長所として伝えることでクライアントに対して良い印象を与えることができるとおっしゃっていました。
黒沢怜央先生
黒沢先生はドローンや民泊などの企業や業界団体の顧問を務めるほか、現在多数の海外企業の顧問に就任し、また企業顧問として専門性を高めたい行政書士向けに「戦略的行政法務アカデミー」を開催しており、企業の顧問として活躍されています。
黒沢先生は企業の顧問を務める上で重要点として、「企業を取り巻く環境の変化が目まぐるしく変化する現代社会において、企業が新たなサービスを生み出そうとする際に法的な視点で最善の選択をするためにアドバイスをすること」を意識しており、これを「戦略的行政法務」と呼んでいます。
そして行政書士が企業の顧問になることのメリットとして、①法令をしっかり読めること(行間を読め、法解釈ができる)、②行政実務の現場を知っていること、であり、これによって細やかな政策提言をすることができるとおっしゃっていました。例えば、有名な企業や業界団体が作成した政策提言書でも、行政の動きや現場の状況を意識したものでないことが多く、これでは十分な政策提言につながらないと感じることが多いそうです。
つまり、行政書士が企業の顧問として「戦略的行政法務」を行うことによって、行政に対してより実現可能性が高い政策提言ができるようになるということです。そのためには、基礎的な法令を読み解き実際に使えるようにする力や新たなビジネスモデルなどと行政規制の関係性などを勉強する必要があるとおっしゃっていました。
私自身、黒沢先生が行なった昨年の「戦略的行政法務アカデミー2019」に参加し(戦略的行政法務アカデミー2019実施レポート)、そのような法令を読み解き実際に使えるようにすることや海外のビジネスモデルと日本の行政規制などについて「戦略的行政法務」を実体験することができ、将来を見据えた業務に役立たせることができるということを再認識できました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは主にどのようにして知識を蓄積するのかということについて3人が意見を述べていました。
伊藤先生は、ある分野の第一人者になるためにはその分野のほとんどの書籍や論文を読むことが必要であり、5,000〜10,000冊の書籍を読むことでどのようなジャンルの話題でも話ができるようになるとおっしゃっていました。また、ニュースなどは新聞紙で読み情報を収集することをオススメしていました。
黒沢先生は情報収集に加えて、自分でその情報に何かしらのコメントをつけることによって情報への向き合い方が変わるとおっしゃっていました。実際に行政書士や専門家の立場として自分が社会実装しようとしたらどうなるかを考えた意見をすることで、単純にその情報を読むこととは吸収力が大きく異なるということだと感じました。
講演会の最後に3人が口を揃えておっしゃっていたことが、講演会の内容を実際に実践するかどうかで1年後の成長度合いが大きく変わるということです。
私自身、伊藤先生や徳永先生がおっしゃっていたように書籍での知識の習得や黒沢先生がおっしゃっていたニュースや記事に対して専門的な立場からの意見を考えたいと思いましたし、「戦略的行政法務」の実践に向けて基礎力である実務での法令の読み方や専門性を高めるための勉強をしたいと思いました。
これからの講演会など
戦略的行政法務アカデミー
- 行政書士・戦略的行政法務アカデミー 完全版
- 2020年3月8日・15日(日)9:30〜15:30 新宿エルタワー本校
- 行政書士・戦略的行政法務アカデミー 1日完結版
- 2020年3月28日(土)10:00〜16:00 梅田駅前本校
徳永浩先生の講演会
- 行政書士の活かし方〜人生を切り拓く資格について〜
- 2020年2月8日(土)13:30〜15:00 池袋本校
- 行政書士summit 2020 @福岡「変化する行政書士のフィールド」
- 2020年3月29日(日)14:00〜16:00 福岡本校
黒沢怜央先生の講演会
- UPDATE!企業コンサルタントとしての行政書士
- 2020年3月20日(金祝)14:00〜15:30 梅田駅前本校ほか中継校
- 行政書士summit 2020 @福岡「変化する行政書士のフィールド」
- 2020年3月29日(日)14:00〜16:00 福岡本校