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実務家インタビュー

更新日:2022年2月18日

「行政法規の専門性が行政書士の可能性を拡げる」黒沢怜央氏が語る行政書士の未来

黒沢 怜央 先生

株式会社ジーネット(行政書士ネットワーク) 代表取締役

Kurosawa Reo 黒沢 怜央

2008年、行政書士事務所を開業して以来、多数の許認可業務、企業法務を執り行いつつも、「行政書士養成塾」「行政書士ネットワーク」の主宰や、大手予備校講師としてのべ5000人以上に教鞭を取る等、業界のリーダーとしても意欲的に活動。その後、ドローンや民泊といった先端領域のパイオニアとして活躍。2018年1月、行政領域におけるITソリューションを軸とした(株)ジーテックを設立、代表取締役に就任。

企業が求める行政書士の役割とは?

黒沢 怜央
―ここ数年、AirbnbやUberなど、今までになかったサービスが増えています。
これらのサービスは法律の面で問題もあるようですが、行政書士はどのような対応を行っているのでしょうか。

黒沢:最近のベンチャー企業の動きを見ていると、サービス内容は日々進化を続けており、そのスピード感は目を見張るものがあります。
そんな中、民泊の場合であれば、「旅館業法に違反する」、「民泊はグレーだ」といった声もあり、現場ではこういった行政規制の壁がビジネス展開の足かせになっているケースが多くあります。

この時、クライアント企業に対して単純にストップをかけるのか、それともビジネスの実現に向けて一緒に歩んでいくのかによって、行政書士の存在意義が大きく変わってきます。

「グレーな状態」=「法適合していない状態」にあるわけですが、だからといってそのビジネスが完全に社会的な悪と同義であるかというとそうではありません。

同じ法令不適合状態の中でも、社会的に容認すべきではないものなのか、それとも技術やビジネスのスピードに法律が追いついていない状態なのかは見極める必要があります。

変化のスピードに法律が適応できてないのであれば、アップデートされるべきは「法律」の方であるべきですし、この場合には企業と一緒になってロビイング等、ビジネス展開の可能性を探ってスキーム策定する必要があります。

「リスクがある」と答えるだけでは、法律の専門家である意味がないのだと思います。
特に行政規制は、「法律」以外のところでルールがひかれていることが多く、その場合、たとえば自治体との交渉、関係省庁との調整によって、運用ルールを変更することができる場合があるのです。

私は、行政書士の職域は、行政法規に幅広く関わることができ、「法令」と「現実」が最も乖離している現在こそ、その専門性を高めて、新しい領域に挑戦するイノベーション企業のブレーンとして活躍の幅を拡げるチャンスだと思っています。

行政法規のとらえ方が、行政書士の仕事を変える

黒沢 怜央
―行政書士ネットワークさんでは、ドローンや民泊など、現在注目されているビジネスに関わっていらっしゃいますが、この分野は今後も伸びていくのでしょうか?

黒沢:ドローンや民泊など、現在注目されている業界と関わることが多いので、「ドローン行政書士」や、「民泊行政書士」などと言われることがありますが、私自身はもっと広い枠組みでこの分野の行政法規をとらえています。

ドローンであれば、2015年12月に改正航空法が施行され、飛行の際に許可を得ることが必要になりました。
ここで、注目すべきは「ドローン」に限定した法規制ということではなく、「空間領域における法規制」というもっと大きなフレームです。

例えば、現在の民法には土地所有者の権利が上空どこまでの範囲で及ぶのかについて明確な基準がありません。そのため、航空法上のドローン飛行許可を取得したとしても、他の所有者が管理する土地上空を飛行するためには通常、権利者の同意が必要であると考えられます。

現在、物流に関してもドローン技術の活用が考えられていますが、実際のところ、技術面でも規制面でもハードルが高いのが現状です。それこそ、法規制に関しては、都心部で飛行させる場合、空域の権利関係が複雑すぎて・・・自由に飛ばすのは夢のまた夢という感じがしてしまいます。

日本の「空間ビジネス」が発展するためにも、「空間領域の活用に関する一般法」の整備が喫緊の課題でしょう。

私たちはビジネスの現場の実態を把握しつつ、行政への交渉や立法への関与ができる存在として、社会のイノベーションを支援することができます。

空間領域に限らず、仮想通貨であれば「金融」、民泊であれば「不動産価値のリデザイン」といった具合に、その背景を意識しながら行政規制のグランドデザインを描いていくことが必要なのではないでしょうか。

行政法規のプロフェッショナル集団を目指して

―現在、行政書士ネットワークではどのような活動を行っているのでしょうか?

黒沢:法令や現場の行政対応等の情報を全国の会員と共有しています。また新規法令に対応できるよう法令知識のブラッシュアップを月例会の中で行っています。

個人事務所で対応できない業務もチームで対応することも可能です。
実際に複数の企業と提携を行い、全国的な許認可業務サービスを対応しています。

―行政書士ネットワークに入ると仕事がもらえるということでしょうか?

黒沢:はっきり聞いていただいてありがとうございます(笑)
答えはNOです。あくまで業務開拓のきっかけを与えるに過ぎません。ただし、実際に昨年度、弊社の仕組みを使って、売上を1000万以上伸ばしている会員もいるのは事実です。
私が出している情報を使える方もいらっしゃれば、聞いているだけという方もいらっしゃいますからね。
上手に活用していただければと思います。

―現在、行政書士ネットワークにはどのような会員がいらっしゃいますか?

黒沢:まず会員数は154名(2018年1月末現在)います。やはり、新規分野を開拓したい、もっとスキルアップしたいというモチベーションの高い方が多いと思います。
この中に入って切磋琢磨するだけでも十分価値があります。

―新規会員も受付中とのことですが、どのような方に入っていただきたいですか?

黒沢:まず会員に目指していただきたいのは、新たに制定される法律、政省令、通達、ガイドラインに精通して、新しいマーケットでビジネス展開を進める企業のブレーンとして「戦略的行政法務」を実践することができるポジションを築くということです。
ですから、資格に甘んじることなく「もっと法律を深く勉強したい」という知識に貪欲な方でしょうか。
勉強といっても資格試験の勉強と違って、クライアントの役に立つ、そしてそれが自分の報酬にもつながる勉強ですから、もっとエキサイティングな知識習得ですよ!

注目ベンチャー企業の動き〜戦略的法務という思考〜
注目ベンチャー企業の動き〜戦略的法務という思考〜

たとえばですが、こちらの動画を見て、何か感じるものがあれば入会いただく価値があるんじゃないかと思います。
建設業の許可申請のやり方が知りたいとか、遺産分割協議書の書き方が知りたいという方は、行政書士登録すると各都道府県の単位会でその手の研修は無料で受けることができます(分かりやすいかどうかは別として)。あとは役所のページにも大抵は詳しいマニュアルがダウンロードできる形で公開されている時代ですから、ネットで検索する能力があれば大丈夫です。
私たちの仕事の「価値」を高めるために、ただ手続きを行うことを業とするのか、もっとクリエイティブな仕事をするのか、それを判断するのは自分自身です。
是非、高い意識を持った方々と一緒に、これからの業界形成を行いたいと思います。

行政書士ネットワーク

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