更新日:2022年2月18日
LECの実務家講師を訪ね、行政書士の業務とその魅力を紹介する「フォーカス!行政書士の現場」。第1回は入管業務。日本に来る外国人の在留資格申請の書類作成だけでなく、入国後のフォローまで行っているLEC専任講師・二藤部渉講師の現場を訪問しました。
入国管理業務
日本の国際協力・国際貢献を担う「外国人技能実習制度」その実施・運用を担う行政書士
「にとべ行政書士事務所」代表。LEC専任講師。
二藤部 渉 LEC専任講師
技能実習生のスムーズな実習を支援する事前の法的講習を担当
成田空港からほど近いとある日本人学校。そこで来日したばかりの外国人を前に講習を行う二藤部講師の姿があった。講習を受けているのは、日本の「外国人技能実習制度」を利用して、日本国内の企業で実習を受ける予定の中国人やベトナム人の実習生たちだ。二藤部講師が担当しているのは、この実習制度における必須の講習である。
「外国人技能実習制度」は最長3年間、開発途上国の青壮年労働者に在留資格を与え、日本の産業が培ってきた技能等の移転を通じて、各国の経済発展を担う人材を育成することを目的としたものだ。平成5年から始まったこの制度を利用して来日する外国人は年々増加。平成24年末時点の技能実習生数は15万人を超え、日本の国際協力・国際貢献を担う重要な制度として定着している。
こうした在留資格取得のための書類作成や申請取次ぎなどの入管業務は、行政書士の所掌業務の一つであり、その一環として、こうした事前講義を行うことも重要な業務だ。また、受け入れ先企業の多くは中小企業であり、行政書士が地域の国際化にも貢献していることを示す業務と言える。
日本語による講義をしっかり理解してもらえるように随所に工夫を凝らす
長年の仕事のパートナーである王大龍さん(右)
1日8時間の講義はすべて日本語で行われる。その内容は在留資格や実習制度の仕組みを定める入管法、労働基準法に基づく労働条件など、実習生の就労や生活に直接関係するものばかり。特に本制度では資格変更に際して技術の習得度を測る審査が行われるなど、さまざま法律上の規定があり、それらを外国人にしっかり理解してもらうことが重要になる。
しかし、来日前に日本語を学んできたとはいえ、実習生にとってすべてを日本語で理解するのは簡単なことではない。講習時には通訳もいるが、簡単な中国語やベトナム語の単語も交えて実習生同士で確認し合うよう促すなど、随所に工夫を凝らす二藤部講師。
外国人実習生とはいえ、地域の企業にとっては貴重な戦力になりうる存在である。それだけに企業と外国人実習生双方にとって適切な制度運用ができるようサポートすることは、重要な業務であり、行政書士が日本の国際化に貢献していることを示す好例といえるだろう。
「外国人技能実習制度」の運用
「外国人技能実習制度」の運用には、受け入れ先の企業から申請を受けた監理団体(組合など)が主体となり、JITCO(公益財団法人 国際研修協力機構)の指導・助言の下、実施されており、監理団体からの委託を受けた行政書士が在留資格取得のための申請取次、さらに入国直後の法的講習などを行っている。
二藤部講師 インタビュー
志のある人を応援できるのは大きなやりがい
- 行政書士を志したきっかけを教えてください。
興味を持ったのは、学生時代、友人から「家族の相続問題が"争続"になってしまい苦労していたが、ある行政書士の先生に相談して解決できた」という話を聞いたことがきっかけです。
私自身法学部出身で、卒業後は法律に関わる仕事を考えていたこともあり、法律を人々の暮らしに役立てることができる資格だと感じ、めざしてみようと思いました。- 合格後はすぐに開業されたのですか。
- そうですね。ただ当初は苦労しました。事務所を開いても誰も私のことを知りませんから、まずは地域の方々に「自分を知ってもらうこと」から始めました。最初は自分でチラシを作り、確か2〜3千枚刷って、昼間だと怪しまれるので深夜にマンションなどに投函していましたね。でもほとんど問い合わせはなかったです(笑)。
で、次に取り組んだのが事務所のホームページ。自分でソフトを買ってきて、サイト事業者にも相談しながら制作したところ、少しずつ問い合わせや依頼をいただけるようになりました。 - 入管業務を始められた理由は何ですか。
- 学生時代にラグビーをしていたときの先輩の紹介で、もう始めて10年近くになります。
この仕事は単に書類作成を行うだけでなく、外国人が在留資格を取得できることが目的です。申請に必要な書類を整え、申請の取次ぎを行います。 - その後、入管に関する業務を拡大されていますが、その魅力は。
私が外国人を好きなことがありますが、日本に来て頑張ろうという人をサポートしたいという気持ちが強いですね。特に技能実習で来日する外国人はアジアの発展途上国の人々が多く、日本での経験を活かして自国の発展に貢献したいという志のある人がほとんどなので、そうした人々を法律のプロとして応援できることにはやりがいを感じます。
- 入管業務以外にも、幅広い業務をされていますが、行政書士になってよかったと思うことは。
- 行政書士の業務は多岐にわたりますが、法律という観点から、依頼者の「人生の節目に立ち会うことができる」ことではないでしょうか。入管業務も依頼者(外国人)にとっては異国で暮らし、働くという大きな節目ですし、例えば、相続や遺言も結果として自らの家族や祖先と向き合う機会でもあります。そうした人々の人生の節目に立ち会い、お手伝いできることは行政書士の大きな魅力だと思います。
- 最後に仕事する上で大切にされていることは。
- 仕事に「誠実」に取り組むことです。「誠実」とは、学生時代に講演会でお会いした佐藤道夫先生にいただいた言葉で、行政書士としての自分の基本となっています。
関連リンク
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