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地方分権という時代の流れ

--厚生省との話合いは、どのような経緯をたどって決着がついたのですか?
「はじめ我孫子市の職員が厚生省に呼ばれて、痴呆性高齢者だけ別扱いにして、3に当てはめるところから審査を始めるルールはおかしいとのことでした。
 正式な見解としては、今年1月に厚生省が各都道府県に対して出した文書があります。『関東地区のある市の介護認定審査会において、痴呆に伴う問題行動を有する申請者については一次判定結果にかかわらず一定の要介護度と見なした上で審査判定を行うことを取り決めているとの報道』がなされたことをあげ
て、全国一律の基準で審査判定を行うようにという内容の事務連絡でした。県に対して各市町村の指導を要求したのです。全国基準と異なる基準であることがおかしいという指摘であれば、確かに法律で、全国基準で行うことが決まっているわけです。
 その後、私が厚生省に行って、直接、話をしたわけですが、私は『我孫子市は全国基準でやっています。その先の具体的なやり方は自治体の裁量です』と言いました。最後は、我孫子市の説明不足だったということで決着がつきました(笑い)」


--最終的には、厚生省も我孫子市は全国基準との見解を全都道府県に通知しています。結局、中身については我孫子市のルールを認める形になりました。このようなことは今まではなかったことだと思いますが、その理由をどのようにお考えですか?
「ひとつは世論の応援が大きかったことがあると思います。もうひとつはやはり地方分権という時代の流れが背景にあるのではないでしょうか。介護保険は4月から施行される法律ですが、同時に地方分権一括法も施行されるわけです。
 地方分権一括法では、地方自治法も抜本改正されています。その中では、機
関委任事務(注1)が廃止されました。介護保険はまさに自治事務(注2)です。自治事務について、各大臣は法律や政令に基づいて自治体に是正の助言や勧告ができることになっていますが、自治体がそれに従わないことによって不利益を与えてはならないと明記されています。さらに、明らかに法律、政令に反していると考えられる時は是正の要求ができます。その場合、一定の対応が自治体に義務づけられていますが、自治体の側が是正の要求に不服であれば第三者である国地方係争処理委員会に提訴できます。
 国と自治体はそういう関係になるわけ


ですから、今までのような行政指導というのはなくなるはずなのです。」


注1 「機関委任事務」
国が法令により、その事務を地方公共団体の執行機関(知事、市町村長、行政委員会)に委任する制度。この制度により国は都道府県と市町村に対して指導監督権をもっていたが、平成11年、廃止が決定。

注2 「自治事務」
自治体が法令の範囲で自主的に責任をもって処理する事務のことで、法定受託事務以外のもの。

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