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安心して働き続けられる環境整備によって女性弁理士の業務開拓も進む

下坂 スミ子氏 元日本弁理士会会長/弁理士

聞き手:反町勝夫 株式会社東京リーガルマインド代表取締役

女性の社会進出が進み、結婚後も出産後も働き続ける女性が増えている。それは、かつて男性ばかりだった法律専門職にも女性が多くなっているところにも表れている。しかしながら、待機児童がなかなか解消しないなど、女性が安心して働き続ける環境の整備に関してはまだ多くの課題がある。女性弁理士の草分け的存在で、日本弁理士会会長も務められた下坂氏に、ご経験に基づく、女性弁理士の業務の実際のほか、働き続けてこられた女性としてのお話しもうかがった。


■ 女性の社会進出で女性弁理士も増加

反町

男女雇用機会均等法が施行されてから23年経ち、女性の社会進出は大幅に進みました。特に21世紀になってから、下坂先生が日本弁理士会会長を務められていた頃から、国が知的財産立国を目指して知的財産戦略本部を設け、知財政策に力を入れ始めましたが、弁理士にも女性が増えたように思います。女性の社会進出に伴い、資格志向の女性も増えたのではないでしょうか。と申しますのも、私は昨年からLECの各校舎を回っているのですが、去年あたりから、会社で法務部あるいは特許部などに所属する女性の方で、弁理士試験を受けてみたいという方が増えているのです。弁理士の試験も変わり、働いている人も受けやすくなったことも関心を高めている要因かと思いますが、キャリアアップする上で資格取得、特に弁理士資格の取得は大変魅力あるのだと思います。

下坂 スミ子氏 元日本弁理士会会長/弁理士

下坂

おっしゃる通りです。昔に比べて女性の弁理士はだいぶ増えました。

反町

弁理士業務において、女性ならではの業務、女性に有利な業務といったものはあるのでしょうか。

下坂

机の上の仕事ですので、特に女性でなければならないものはありません。ただ、私のこれまでの経験の中で、衛生用品など女性特有のものは女性の方がよいのではないかということで、頼まれてやっていたことがあります。外国から衛生用品が大量に輸入されていたときで、どうしても受けてほしいと言われたのですが。

反町

消費者も女性が半分ですし、確かに女性固有の商品は結構あります。女性の目で見ていくとよいであろうものは多々あるでしょうし、弁理士に限らず女性が開拓できるものがもっとあるはずですね。

■ 女性が安心して働き続けることができる保育の整備が必要

下坂 スミ子氏、反町 勝夫対談

下坂

確かに、だいぶ女性の社会進出が進みましたが、保育などもっと女性が働きやすいように整備していただきたいことがたくさんあります。
保育所の充実については、40年以上も前から、いろいろと運動していますが、以前よりだいぶ増えたといっても、若い女性が働き続けるためには、もっと会社のすぐ側とか最寄駅など勤務の行き帰りに便利な場所に保育所を設けるとかの配慮が必要です。幼稚園のように、11時〜2時では子供を引き取りにいくことなんてできませんから、せめて8時くらいまで見てくれないと、働き続けることはできません。これは昔から言い続けていることで、昨日今日言われるようになったことではないのですが。

反町

私どもの関連会社のプロケアでは、「ちゃいれっく」というブランドで保育園をやっています。「ちゃいれっく」では、最初から土日も預かっていました。親の希望に応じて平日も夜9時、10時、11時とやっています。

下坂 スミ子氏 元日本弁理士会会長/弁理士

下坂

それはよいですね。LECはそんな素晴らしいお仕事もやっておられるのですか。長年、子どもを増やせというばかりではなく親が安心して働けるようにと言ってきたのですが、保育所をしっかりと整備しなければならないと思います。
現在、弁理士試験の合格者数が大幅に増え、弁理士数が増えています。この量的、質的変化は、弁理士の意識や環境を変化させています。特に昨秋からの世界的大不況も相まって、弁理士業界も大きな変革の中にあります。そういった中で、弁理士に限ったことではありませんが、女性が仕事に安心して取り組めるようにすることは、ますます重要になってきています。

反町

私は、今後のわが国の経済を支えるのは、知的産業であり、その中核を担うのは法律・会計専門職であると考えています。女性にも存分にご活躍いただかなくては、GDPも支えていけません。保育の整備はとても重要であり喫緊の課題でしょう。下坂先生には、そのお立場から今後もご意見いただきたいと思います。
本日は誠にありがとうございました。

下坂

今や競争は国内だけではありません。海外の一部のグローバルな企業は、総務、労務、福利厚生系の業務を一括してアウトソーシングして、全世界でそのサービスを利用できるというスキームができてきています。したがって、世界中に支店や現地法人を持っているグローバルな会社では、管理系のアウトソーシングサービス会社に全世界を一括で発注して、現地のアウトソーシングは、支店の出先が担当するわけです。しかし、日本では、社労士資格が必要となるため、ここだけ社労士へ外注されるということが起こっています。このように、世界では非常にグローバルな競争が始まっているのです。

≪ご経歴≫

元日本弁理士会会長/弁理士
下坂 スミ子(しもさか すみこ)
1934年生まれ。1963 年中央大学法学部卒業、弁理士資格取得。1964年弁理士登録、湯浅・坂本法律事務所勤務。1976年下坂国際特許事務所設立。1998年下坂・松田国際特許事務所に名称変更。2003年日本弁理士会会長。現在、内閣府知的財産戦略部員、アジア弁理士協会(APAA)本部理事、公益信託マイクロソフト知的財産研究助成金信託管理人。主な著書に『不正競争の法律相談』(小野昌延編/青林書院・1997)、『商標法』(小野昌延編/青林書院・2005)など。

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