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専門職のマーケット拡大への意欲が発展のカギ

佐藤 良雄氏 SATO グループ代表/行政書士

聞き手:反町勝夫 株式会社東京リーガルマインド代表取締役

行政書士法人はじめ社労士法人、労働保険事務組合、給与計算代行会社、人材派遣会社等を運営する日本最大級士業グループであるSATOグループの代表・佐藤良雄氏に、法律専門職のこれからのあり方について語っていただいた。


■ 新たな事業で新たな経営資源を生み出す

反町

佐藤先生は、学生時代に行政書士資格を取得されて事務所を設立、それを足がかりに人材サービス、給与計算代行、労務管理サービスなど事業を拡大されていらっしゃいます。本日はその各事業についてうかがってまいりたいと思います。まず、なぜ、行政書士の資格を取得されたのでしょうか。

佐藤 良雄氏 SATO グループ代表/行政書士

佐藤

私が起業した当時は、今以上に「これから事業を起こすぞ」という人が多く、新規の会社設立も多くありました。ビジネスをおこすときには許認可はつきもので、行政書士の出番も多くあるのではないかと思いました。また、そういったサポートができる行政書士は前向きな仕事だと思ったのです。また、弁護士や医師などに比べて資格が取りやすく、参入するにあたって障壁が低かったこともポイントでした。

反町

そこからいかにして事業を展開されていったのでしょうか。

佐藤

行政書士や労務管理の仕事をしていたとき、地元の経営者の方々から「いい人がいないか?」と、よく尋ねられたことから、人材のニーズが強いことを実感し、人材紹介業のキャリアバンクを設立しました。当時、北海道には人材紹介の会社がなく、競争相手がいないかわりにお金を払って人材を確保するという風土もなかったのですが、私には行政書士の仕事をベースとした経営者のネットワークという経営資源がありました。それを元手に軌道に乗せ、新たな事業で新たな経営資源を生み出し、それをもとにまた相乗効果のある次の事業を立ち上げ、現在のグループを形成していきました。

■ 内部統制ができなければ受注する資格がない

反町

現在では、アウトソーシングも請け負っていらっしゃり、大企業の事務処理のアウトソーシングを受託されているようですが、そのアウトソーシングは具体的にどのようなものなのでしょうか。

佐藤

私どもの顧客の中には、われわれが会社の労務管理事務を一括して請負っているところがあり、その会社は、全国に約3,800店舗があるのですが、人事系の情報は、われわれが店舗から直接連絡を受けて直接処理しています。

佐藤 良雄氏 SATO グループ代表/行政書士

反町

人事関連業務が完全にアウトソーシングされているようなかたちなのでしょうか。

佐藤

そうです。これからの社労士のアウトソーシングは、言われた事務処理を受けるのではなく、人事を肩代わりする仕組みに変わっていくだろうと思っていますし、そこがポイントで、重要だと思います。

反町

そのようになっていけば、企業にとっても社労士事務所にお願いする意義が大きくなります。しかし、そのようなサービスを提供するためには、個人事務所では難しいですね。2人の事務所では、2人とも病気になってしまった場合は、会社からの連絡を受けることができません。大企業の人事を担うには、継続・維持に耐え得る体制が必要です。そこの部分が解決できないと、受注するのは難しいでしょう。

佐藤

今や競争は国内だけではありません。海外の一部のグローバルな企業は、総務、労務、福利厚生系の業務を一括してアウトソーシングして、全世界でそのサービスを利用できるというスキームができてきています。したがって、世界中に支店や現地法人を持っているグローバルな会社では、管理系のアウトソーシングサービス会社に全世界を一括で発注して、現地のアウトソーシングは、支店の出先が担当するわけです。しかし、日本では、社労士資格が必要となるため、ここだけ社労士へ外注されるということが起こっています。このように、世界では非常にグローバルな競争が始まっているのです。

反町

大企業の場合、SOX法に適応する必要もあります。

佐藤

確かに、大企業の外注先となるためには、SOX法のクリアは不可欠です。情報コントロールができなかったり、内部統制ができなかったりすれば、そもそも受注する資格がないわけです。例えば、金融業や製造業は、非常にコンプライアンスに厳しいです。以前、見積もりを出した後に、大変ぶ厚い質問書が来たことがあります。それに応えて、クリアできないと、受注資格そのものがないのです。

■ 法律専門職のマーケットをもっと拡大していくべき

反町

佐藤先生が、大企業の事務処理のアウトソーシング以外にも力を入れられている事業があるとのことですが。

佐藤 良雄氏 SATO グループ代表/行政書士

佐藤

積極的に行っているのは、パブリックビジネスに対する参入です。例えば、国が発注する社会保険の適用事業所の適用促進事業などがあります。公共サービスの担い手が官のみというのではなく、民間が官に変わって公共サービスを提供してもいよいのです。士業界は、受注するにふさわしい経営資源を保有しています。つまり、公共サービスのマーケットのクオリティを上げていくためには、われわれが参入して官と競争原理を働かせるのがよいと思うのです。

反町

競争を自由化して民間にも市場を開放し、競争原理を加えることで、クオリティが向上します。

佐藤

今後、公共サービスにおける民間の仕事が多くなっていくと思います。各士業界とも、業務独占分野を大事にしながらも、競争分野に積極的に参入すべきです。世界は非常にグローバルな競争に入りつつあります。そういったことを踏まえて、各専門職業界も団結して取り組んでいけるとよいと思います。

反町

業界内で争っていれば、国際競争の中で負けてしまいます。これだけ世の中の変化が早い時代ですし、法律専門職は、これから変わらざるを得ません。

佐藤

業務独占分野にこだわらずに、法律専門職のマーケットのニーズが高い公共サービスやビジネスプロセスアウトソーシング(BOP)の分野にもっと積極的に挑戦し、マーケットを拡大しようと努力し、道を拓いていかなくてはなりません。法律専門職は働くことが好きな人が多いので、まずは、マーケットを拡大しようという意識が必要でしょう。

反町

おっしゃる通りです。まだまだ改革の余地があります。これから法律専門職には、そういった意識が求められるでしょう。
佐藤先生には、今後とも第一線でご活躍いただき、業界のマーケットを拡大していただきたいと思います。本日はありがとうございました。

≪ご経歴≫

SATOグループ代表/行政書士
佐藤 良雄(さとう よしお)
札幌市生まれ。1977年2月行政書士佐藤良雄事務所開設。1979年8月労働保険事務組合労務事務指導協会設立、理事長就任。1984年12月労働保険事務組合北海道社会労働保険協会理事長就任。1987年11月キャリアバンク株式会社設立、代表取締役就任。1997年4月株式会社エコミック設立。1999年7月職業訓練法人キャリアバンク職業訓練協会会長就任。2004年8月SATO行政書士法人設立、代表社員就任。著書に『ふるさと転職―帰りたい人の成功マニュアル』(二期出版・1990)など。

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