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霞が関改革は日本再生のカギ

朝比奈 一郎氏 新しい霞ヶ関を創る若手の会「プロジェクトK」代表

聞き手:反町勝夫 株式会社東京リーガルマインド代表取締役

1997年入省組の若者21人が、内部から霞が関には改革が必要であると声を上げてできた新しい霞ヶ関を創る若手の会は、2005年末に『霞ヶ関構造改革・プロジェクトK』(東洋経済新報社・2005)を出版し、多くの注目を集めた。それから3年半が経った今、その新しい霞ヶ関を創る若手の会「プロジェクトK」の代表である朝比奈一郎氏に、最近の活動や今後の活動についてうかがった。


■ 「プロジェクトK」の講演会

反町

朝比奈先生が代表を務められている新しい霞ヶ関を創る若手の会「プロジェクトK」(※)では、趣向を凝らした講演会をコンスタントに実施されていますね。

朝比奈

3〜4ヶ月に1回、官民のさまざまなセクターで活躍されている方々が、垣根を超えて交流を深める『架け橋』というものを実施しています。われわれのような中堅若手世代は、非常に多忙で、会社に入ってしまうと、どうしても会社の関係者と仕事関係の話しか語り合えないことから、僭越ながら私たちが場を設け、そこで所属セクターを越えていろいろな方々が国や社会について率直に参加者達が語り合えるようにしております。

朝比奈 一郎氏 新しい霞ヶ関を創る若手の会「プロジェクトK」代表

反町

講演される方は、毎回違うのでしょうか。

朝比奈

毎回違います。9月13日の回では、経済評論家・公認会計士の勝間和代氏に講演していただきました。その前は、「地域・生活者起点で日本を洗濯(選択)する国民連合」代表の北川正恭氏に、その前は伊藤忠商事株式会社取締役会長・丹羽宇一郎氏に講演していただきました。

反町

専門職、学者、企業と幅広い業界の、それも第一線の方をお招きされているのですね。

朝比奈

12月20日には、東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長・葛西 敬之氏に 「国鉄改革から学ぶ組織改革、教育改革のあり方」ということで、国鉄時代のことをお話しいただくことになっています。国鉄は、当時、絶対に変わらないと言われていましたが、赤字だったこともあり、国民からかなり非難されていたので、葛西会長ら当時の若手は中から変わらないと駄目だと考えられていたようです。

反町

そうでしたね。

朝比奈

厳しい声にさらされながら民営化されたご経験は、霞が関にとって決して対岸の火事で済む話ではないだろうと思ったことから、ご講演をお願いしました。

■ 日本再生に必要な霞が関改革

朝比奈 一郎氏、反町勝夫対談

反町

朝比奈さんご自身も各地でご講演されていますね。

朝比奈

そうですね。私どもがどのような取り組みを行ってきたかということや、霞ヶ関改革がなぜ日本再生にとって必要なのかといったことを話しています。
実は、今まで出した本では、「霞が関にはこういう問題があって、その問題にはこういう原因があって、その原因はこういうふうにやると取り除けますよ」というような、悪く言えば、若干、対象療法的な部分訳でした。しかしながら最近は、別の角度から、金融危機による大不況など、今の日本の現状を踏まえて話していきたいと思っています。

反町

『霞ヶ関構造改革・プロジェクトK』は拝読させていただいています。この書籍が出たのが3年前で、今は大恐慌もあって世界、わが国とも大きく変わっています。一ひねりいりますね。

朝比奈

霞が関を知ってもらうためにやりたいことはたくさんあります。読者や講演会にお越しいただの方のご理解・ご協力を得ていきたいと思っています。

■ 官庁も幅広い人材を求める時代

反町

現在、官公庁は、学生へのPRを強化しています。今後、官公庁を希望する若者がますます増えていくでしょう。

朝比奈 一郎氏 新しい霞ヶ関を創る若手の会「プロジェクトK」代表

朝比奈

金融危機で就職も厳しくなってきていますので、関心は高まっているようです。「不況だから安定している公務員」というのは決してよい理由ではないですが、消極的な意味ではなく、こういう時期こそ何とかしないとという危機感を抱いた人材が霞が関に戻ってくるといいなと思います。

反町

やはり、ここ2、3年は、志望者が減ったというがあったのでしょうか。

朝比奈

正直なところ、各省庁が1期で採用する人数というのは多くても20人〜30人(※I種事務系)くらいなので、それに満たない応募者数ということはなかったので、実感というほどのものはないのですが、応募総数が減っているのは確かなようです。

反町

ここ2、3年、それまで国家公務員を目指していた層のかなりの数が民間企業に流れました。今は官庁も出入り自由の時代ですから、民間企業から官庁へ来る人、官庁から民間企業に行く人と、さまざまです。今後は、官庁から民間企業に行って官庁に戻ってくるということも出てくるかもしれません。そうしなければ、国がやっていけない時代です。官庁も、人材を広く求める時代になってきています。

朝比奈

本当にそう思います。

反町

朝比奈先生には、ぜひ、今後とも省益のためではなく国民全体の利益のためという視点からの、質の高い政策立案ができる中央省庁を構築することを目指して、ご活躍していただきたいと思います。本日は、お忙しい中、ありがとうございました。

(※)新しい霞ヶ関を創る若手の会「プロジェクトK」:「省益のためではなく国民全体の利益のため」という視点を取り戻し、質の高い政策立案ができる中央省庁を構築することを目指し、2003 年、中央省庁1997 年入省組約10 人で結成。2003 年9 月に最初の会合を開き、2005 年12 月に具体的な改革案を出版。※詳細は「霞ヶ関構造改革」プロジェクトK ホームページ参照

≪ご経歴≫

新しい霞ヶ関を創る若手の会「プロジェクトK」代表
朝比奈 一郎(あさひな いちろう)
1973年東京都生まれ。1997年東京大学法学部卒業。2003年ハーバード大学行政大学院(ケネディスクール)修了。1997年通商産業省(当時)に入省し、経済協力部資金協力室、特許庁総務課、内閣官房行政改革推進事務局、資源エネルギー庁石油天然ガス課課長補佐を経て、独立行政法人日本貿易保険出向。

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