【提言 2】から【提言 4】まで論じたように、知的財産権の侵害事件については裁判による迅速な解決が不可欠である。同時にまた、当事者が裁判の長期化、高コスト化を嫌い、柔軟な紛争解決を期待している場合には、裁判所ではなく裁判外紛争処理機関が効率良く活用されるべきである。
この点、弁理士会は平成10年4月に、日弁連と共同で「工業所有権仲裁センター」をオープンさせ、弁理士と弁護士が共同して仲裁、調停手続を行っている。特許庁の判定制度とあいまって、裁判に至らない段階で短期に期待通りの解決が得られる。また、仲裁判断には法的拘束力が発生するので、強制執行が可能となる(民事執行法第22条第7号)。
しかし、工業所有権仲裁センターの運用にはまだ幾つかの課題が残されている。
まず、仲裁、調停判断の申立対象が工業所有権に限られている。それ故、著作権などは申立対象とならず、別途、弁護士会仲裁センターなどに相談しなければならなくなる。
そこで、工業所有権仲裁センターと各弁護士会仲裁センターを合体させ、知的財産権を幅広く包括的に取扱い、迅速な裁判外手続を行う機関として「知的財産権仲裁センター」を設置すべきである。
また、平成10年度中の申立件数が4件にとどまったことは、仲裁システムの問題ではなく、利用者への告知・普及が至らなかったことが原因と思われる。現在のシステムでは、年間50件程度の事案処理は可能であるから、企業、大学、市民に対しインターネット、広告メディア等を利用した積極的な宣伝を行うべきである。
さらに、工業所有権仲裁センターの事務局は全国に3か所(東京、名古屋、大阪)しかない。上記、知的所有権仲裁センターの設置に際しては、利用者の利便性を考え、札幌、仙台、広島、福岡にも事務局を設置すべきである。
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