特許訴訟は、特許庁の審決等に関する訴え(審決取消訴訟、特許法第178条第1項等)と侵害訴訟(侵害差止請求訴訟、損害賠償請求訴訟、侵害差止仮処分事件)の2つに分類される。
弁理士法上、前者の審決取消訴訟については弁理士の訴訟代理権が認められ(第9条の2)、実際の訴訟で弁護士不在で弁理士が訴訟代理権を行使するのもめずらしくない。
しかし、後者の侵害訴訟については、弁理士に訴訟代理権は認められておらず、補佐人(民事訴訟法第60条)として弁護士と共同で訴訟追行にあたらなければならない。侵害訴訟は一般の民事事件と同じであるから、弁理士に訴訟代理権が付与されていないのは、まさしく弁護士による法律業務の独占を規定した弁護士法第3条、第72条本文の規定が障害となっているのである。
思うに、侵害訴訟においては侵害行為の特定、即ち特許の技術的範囲の解釈をめぐり、当事者間で激しい攻防が繰り広げられる。訴訟である以上、各当事者は弁理士と弁護士の双方のアドバイスを受けながら、証拠提出の時期、弁論の方法などに意を注がなければならない。
訴訟代理人である弁護士と補佐人である弁理士との関係について、法律の解釈、適用と技術判断の専門家同士が機能的に棲み分けていると肯定的に捉える見解があるが、妥当でない。なぜなら、侵害訴訟において請求の趣旨・原因はまさしく特許の技術的範囲に裏打ちされているものであり、それに関する高度の専門知識が前提となって訴訟を担当しなければ、技術判断と法的判断が乖離することになり、訴訟の目的を達することは出来ないからである。
裁判官は技術判断について素人であることは間違いないが、特許のように高度の科学的・技術的知識が要求される分野についていかに平易に説明できるかという点では、弁護士よりも弁理士の方がはるかに勝っている。また、訴訟当事者の訴訟代理人として、実際に出願代理を担当した弁理士が選任されれば、そもそも弁護士に余計な手間をかけることもなくスムーズに訴訟が追行でき、当事者の利益は大きい。
そこで、特許侵害訴訟においても弁理士に訴訟代理権を認めるべきである。弁理士法第9条の2第2項として
条文を追加すべきである。
なお、弁理士の訴訟代理人としての訴訟追行能力を高めるため、弁理士に民事訴訟の研修を課すべきである。
この民事訴訟研修は、弁理士試験合格後に大学法学部での聴講、通信教育、民間法律教育機関の講座受講により実施し、その受講証明をもって足りるとすべきである。
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