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【提言 2】 特許裁判所の設置

 特許権、意匠権、商標権の侵害をめぐる裁判では、高度な専門技術知識が要求される。特に、特許裁判では最先端の技術をめぐる判断が争点になることが珍しくなく、技術解析について全くの素人である裁判官が争点を理解して事実認定をするには、大変な手間と時間がかかり、訴訟遅延の最大の原因となっている。

 また、わが国で特許庁の審決等に関する訴えとして(特許法第178条第1項、実用新案法第47条第1項、意匠法第59条第1項、商標法第63条第1項)、知的財産権訴訟を管轄するのは東京高等裁判所のみである。しかも、東京高裁には知的財産権を扱う専門部が3つしかない。

 このように、特許訴訟については人と設備の両面から早期に改善しないと迅速な権利救済は実現しない。それ故、わが国でも一部の先進国にならって特許裁判所を設置すべきであるとの提案がなされている。

 特許裁判所の設置を考える場合、「特別裁判所は、これを設置することができない。」と規定する憲法第76条第2項1文に反するのではないか問題となる。

 まず、本条項が設けられた趣旨は、憲法の標榜する法の支配の理念を、最高裁を頂点とする一元的な司法システムの中で実現し、もって国民の権利保護、福祉充実を図ることに他ならない。そうであれば、特許裁判所を家庭裁判所と同様、専門裁判所として位置付け、前審としての司法機能を付与することは問題とならない。むしろ 特許裁判所が全国各地に散在して機能していたほうが、国民の特許訴訟に関するアクセスを容易にする。また特許裁判所には、知的財産権法は当然のこととして専門技術に精通している技術裁判官を置くことで、迅速で公正な裁判が担保できると考えられる。

 すでにアメリカは、知的財産権を専管する連邦巡回控訴裁判所(CAFC)を設置し、効果を上げている。

 従って、わが国でも全国の高等裁判所がある場所に特許裁判所を設置すべきである。そして、特許裁判所裁判官には、高度な技術判断に通じた技術裁判官(仮称)を配置し、特許裁判の迅速化、公正化を図るべきである。

 また、特許裁判所の設置の際には、技術裁判官と弁理士の研修を十分に実施すべきである。

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