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年末調整の短所と長所

−個人所得課税についてお聞きします。所得課税の課税ベース引き下げの必要性が唱えられるようになっています。これについてはどのようにお考えですか?
 「所得課税の課税ベースの引き下げについては、われわれも賛成しています。所得税は税体系における基幹税の位置づけにあるわけですが、その観点からも、課税最低限の見直しとともに、最低税率、最高税率の在り方を検討する必要があると考えています」

−サラリーマンの年末調整制度についてはどのようにとらえていますか?
  「年末調整には短所・長所があります。例えば、徴税コストの軽減とか、給与所得者にとっては、
納税にかかる手間やコストが不要という長所がありますが、一方、雇用主が納税事務を負担しなければなりません。あるいは給与所得者のプライバシー保護上の問題もあります。会社に対して、生年月日など、扶養家族の個人情報まですべて明らかにしていいのかということです。また、給与所得者は所得税の負担者であるにも関わらず、納税者としての権利を履行できないことも短所のひとつとしてあげられるでしょう。
 とくに給与所得控除の問題が重要です。これは給与所得者に認められた経費控除のことです。給与が増加するほど、自動的に経費が増加するという給与所得控除の在り方そのものが適正かという議論があるわけです。


 検討会の中間報告書では、『給与所得控除は定額とし、それ以上の必要経費については申告により控除が行われる仕組みに制度改革が行われるべきである』としています。われわれも、給与所得控除の制度について現行のままで良いのかということを検討の対象にしています。
 現在、ほとんどのサラリーマンは年末調整という形で年間所得を計算していますが、これとは別に特定支出控除制度があります。これは給与所得控除を上回るような経費があるなら、申告によって控除する制度ですが、サラリーマンの場合、通常それほど経費を使わないため、給与所得控除のほうが得だということで、あまり利用されていません。

 諸外国では、日本円にして、50万円から80万円程度の経費控除や基礎控除を認めていて、実際にかかった費用について確定申告をすることが多いと聞いています。われわれとしては特定支出控除制度を見直したうえで、実額経費控除と現行の給与所得控除との選択方式に改めてはどうかという案について議論を重ねているところです」

−配偶者控除も議論の対象になることが多いですが、これについてはどのようにお考えですか?
 「配偶者控除の不公平性について、7月11日の朝日新聞の記事にこのような試算がありました。夫の年収が700万円で、妻の収入がパートで100万円のケー



スと、800万円の内訳で、夫が 600万円で妻が200万円のケース、夫だけが働いたケース、その三つのケースでそれぞれ税金の額が違ってくる。妻が稼ぐほど、世帯としての税金が高くなり、可処分所得が減ってしまう。これが果たして公平な税制といえるのかという記事です。そういう問いかけがされるようになっているわけです。
 また配偶者控除を女性の社会進出を妨げているという批判をされる方もいらっしゃいます。さらに配偶者特別控除の問題もあります。配偶者が働かない世帯にとっては非常に恩恵を受ける制度ですが、夫婦二人で一生懸命に働いた共稼ぎの世帯に対しては、より高い税金が課せられてしまう。その点は、通産省の中間報告書も指摘しているところです」



 
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