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一種の“首切り法案”

-- 改正労働者派遣法はどのようにご覧になっていますか?
「派遣法には、職業安定法より遥かに大きい問題があります。対象業務は原則自由化されたのですが、1年間という極めて短い派遣期間の規制がかけられたことです。これまで派遣対象業務として認められていた26業務については従来通り3年間ですが、今回、せっかく原則自由化された追加的な分野に、1年間という短い契約期間の規制がつきました。
 派遣というのは、労働者と企業の相方が条件について合意して、 契約を交わしているわけです。それを1年間を超えて働いてはいけないと法律で規制してい
る。私はこれを“首切り法案”と呼んでいます。労働者が派遣として働きたいと望んでいる時、働いてはいけないと禁ずることが、本当に労働者のための立法といえるのでしょうか」
-- 規制の目的として「常用雇用との代替防止」ということが言われています。
「つまり派遣労働者が期間の制限なく働くようになって、職場にはびこると、常用雇用労働に取って替わってしまう。それを防ぐため、1年間の労働しか認めないということです。要するに、労働者対労働者の利害対立が背景にあるわけです。
 そして今回の派遣法は、すでに雇用が保証された常用労働者と、より弱い立場


にある派遣労働者の利害が対立した時、常用労働者のほうを守ろうとする法律です。
 今回、紹介予定派遣、いわゆるジョブ・サーチ型の派遣が認められました。これは派遣という形から入って、1年後に、職業紹介に切り替え、正社員にしようというものです。今回の改正派遣法と同時に認知されるはずでしたが、結局、先送りにされて、1年後に考え直すことになりました。労働組合はこれにも反対しています。派遣より、常用雇用が良いとしている労働組合の論理からすれば、常用労働者になれる道ができるわけで、望ましい制度であるはずです。にもかかわらず
反対するのは、この制度ができると、本来、正規に採用されるはずの人まで、いったん派遣を通じてから採用されるようになるのではないかという疑心暗鬼があるのです。労働組合の基本的な方針は、いわば終身雇用だけが望ましい働き方で、それ以外は望ましくないとするものです。私は『公害説』と言っていますが、あたかも公害を防止するように、終身雇用以外の働き方を極力規制していこうという考え方で、働き方の多様化という現実に真っ向から反対する、保護主義的な色彩の強い考え方です。低成長の時代には雇用機会そのものを制限することにもなり、決して労働者全体のプラス


にはなりません。
 今回の派遣法改正は、アクセルとブレーキを同時に踏んでいると申しましたが、ある面では規制緩和ですが、他方で
規制強化という側面もあります。そういう意味で、まだ多くの課題を残した制度といえます」

 
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