-- そのような労働環境の変化に対して、法制度の整備はどのような状況でしょう?
「労働をめぐる状況は大きく変化していますが、現行の労働市場法は常用雇用労働者を想定しているため、そこに大きな矛盾が生じています。
日本の労働法制は、労働者というのは、なるべく労働市場に出さないほうがいい、移動させないほうがいいということを前提として作られています。
そのような前提があるため、産業構造が変化した時、例えば鉱業の会社が名前だけ残して、それまでの本業とはまったく別分野の新規事業を始めるというよ |
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うに、企業ごと労働者が移動する方法が採られたわけです。労働市場を通さず、産業構造の変化に対応するという方法をとる時、主役となったのは企業の人事部でした。日本企業は欧米企業と比べて、人事部の力が極めて強いと言われていますが、欧米では労働市場が果たす働力需給調整機能を、日本では企業グループの人事部が担ってきたのです。そのように、需給調整機能が会社内部化されていたため、外部の労働市場の役割は限定的でもよく、主に肉体を利用する労働など画一的な働き方をする労働者を対象としていれば済んでいました」
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