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労働力の需要、供給それぞれに要因

-- その多様化が生じたのはどのような理由によるものでしょうか?
「労働力の需要面と供給面それぞれに要因があります。まず需要面では、サービス化・情報化の進展など経済・産業構造の変化にともなって、特定の職場でのみ使える技能ではなく、どの企業でも通用する技能が求められるようになっています。  これまで一般的だった固定的な雇用慣行のもとの常用雇用型という働き方は、製造業における工場労働者が典型的でした。そのような職場では、長期的な雇用の中で、労働者の技能が形成され、熟練していきます。また自動車工場と家電工場では当然、求められる労
働者の能力が異なります。そのため、その職場でこそ通用するような特種な能力が形成されます。労働経済学では『企業特殊的熟練』といいますが、そういう技能を要する業務では、労働者にとっても、企業にとっても、長期雇用が望ましい働き方だったわけです。その結果、労働の移動性が低いという傾向があったのです。  さらにサービス産業の発展などによっても、労働の多様化が求められています。24時間営業のコンビニエンスストアが典型的ですが、営業時間が長くなっているため、一人の常用労働者だけでは到底カバーできなくなっています。同時に、労働時間は短くなる傾向がありま


すから、複数の労働者で、ひとつのポストを まかなうジョブ・シェアリングが不可欠になり、そのことも働き方の多様化をもたらしています」
-- 労働力の供給面ではどのような原因が考えられますか?
「女性の就業機会の拡大と結びついていることが大きなポイントです。女性の高学歴化が進んで、労働基準法の女性労働者の時間外・休日労働や深夜業務を規定した女子保護規定も原則的に撤廃されましたが、やはり女性の労働は短期雇用指向型です。つまり結婚・出産で、労働市場から一時的に退出して、子供が成長したら、また労働市場に入ってく
る。そのため短期間、短時間、働きたいという要望が強いのです。  また高齢化社会を迎え、定年退職後、再び働く高齢労働者が増えてきていますが、その働き方は、子供を抱えている既婚女性と似た傾向があります。体力的な限界がありますから、労働時間が制約され、一般の男性労働者のような、仕事優先の無定型な働き方ができません。そのため短期雇用指向が強くなります。  産業構造の変化による需要側のニーズ、短期間もしくは短時間労働をしたいという女性や高齢者など供給側の要求がマッチすることで、労働の多様化が急速に進んでいるのです」

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