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日本の人事評価システム

-- 実力主義、成果主義を導入することによって、労働者の勤労意欲が増すという意見については、どのようにお考えでしょうか?
「実力主義、成果主義といっても、人の能力を評価することは簡単ではありません。人間は自分の能力を過大に評価するものですから、一人の上司がいかに公正・公平に評価しても、本人は低く評価されたと感じて不満を残すわけです。またその上司とウマが合わないということもあります。その点、日本企業の人事評価はすぐれています。一人の労働者を長い期間をかけて、いろいろなポストを移しながら、複数の上司が能力を評価するの
です。人事評価のポイントは公平性ですから、その方法なら本人も納得します。その結果、職場のチームワークもよくなる。実にうまい方法なのです。私はその日本の雇用システムの良さをなぜ捨てなければならないのかと言いたい。長期継続雇用には職業能力でもメリットがあります。同じ仕事を続けなければ職業能力は高まりません」
-- 職業能力の育成の面では、日本型雇用はすぐれているのでしょうか?

「日本経済は1960年代の高度経済成長から、世界を制覇していったわけですが、その最大の理由は日本人全体の職業能力のレベルが 高かったことにある


と思います。トップ・マネジメントだけではなく、むしろミドルやローといった階層の人たちが大変勤勉で、新しい仕事を覚えようと努力してきた。それが日本経済を支えてきたと思います。  製造用ロボットでいえば、日本は世界の稼働率で7割のシェアを占めています。欧米諸国では、組合がロボットの導入に反対しました。そのような技術が入れば、熟練技能が陳腐化してしまうというわけです。しかし日本の組合は歓迎しました。新しい技術を取り入れていく労働者が大勢を占めていたわけです。また欧米と違って、日本ではロボットに関するオールラウンドプレーヤーが育ちました。自動車製造の スポット溶接や塗装の工程で、一人の労働者がメンテナンスからオペレーションまで行うのです。その人たちはロボットにニックネームをつけて、自分の分身のようにして扱っています。  新しい技術を進んで職場に取り入れて、労使紛争が起きない、労働者はそれに見事に適応する。こんな国は世界でも珍しいのです。私はこの先10年くらいは日本は新しい技術をスムースに取り入れるし、それに適応できる高い職業意識・能力をもつ人材が豊富にいるだろうと思います。  ところが今、『終身雇用は駄目だ、実力主義だ、能力主義だ』と喧伝されるようになっているのです。そのような世界で


は、エリートと位置づけられた人はいいが、そうでない人は意欲を失ってしまいます。そうなれば、日本企業はこれまでのような競争力を保てません。私はチー
ムワークを大切に するシステム、個々の労働者が意欲をもって勤勉に働き、自ら能力を開発していこうと努力するシステムにしなければならないと思います」


 
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