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欧米諸国では所得税一本

−坂倉先生は、税制の抜本的な改革についてご提言されているわけですが、その内容についてうかがいたいと思います。
「2年前、公認会計士の安部忠氏の著作「所得税廃止論」(光文社)にヒントを得て新税制ということで私案を発表しました。ポイントは税制を単純かつ明確なものにできないかということです。
 まず現在、所得税・法人税の二本立てになっている課税方式を廃止して、欧米諸国で採用されている所得税で一本立てします。日本は法人と所得について、異なる税体系をとってきましたが、欧米諸国では所得税一本で、その中に法人と個人があるという考え方を採っています。これは法人擬制説という、法人を個人になぞらえる考え方からきたものです。
私案では、一本化した所得税の中で、『法人および個人事業者』と『個人』に別けるとともに、課税の対象をフロー(収入、支出)と、ストック(資産、財産)に分けます。これは損益対照表と貸借対照表という簿記の原則をそのまま取り入れるというアイディアです。現在、民間企業だけでなく、地方自治体や国も貸借対照表を作成しなければならないという考え方が出てきています。それがなければ、資産も負債も把握できず、次年度以降の予算を立てようがないはずだというのが、その理由です」



−フローとストック、それぞれに別の税率で課税するわけですね?
「フロー課税は売上高または付加価値課税として、ストック課税は総資産または純資産課税にします。このように課税対象を単純することで、税率もたとえばフロー課税は10%、ストック課税は3%というようにシンプルに設定します。収入か付加価値のどちらに課税するかについてはどちらでもいい。企業によっては、収入と付加価値がほとんどイコールになる場合があります。どちらを採ってもいいが、最近、世界の税制の傾向を見ますと、付加価値に課税することが多くなっているようです」

−いずれにせよ、所得に課税するのではない。
「課税客体を収入または付加価値としたことが、この制度のポイントです。所得に課税しますと、どうしても費用というあいまいな概念が残ってしまうわけです。 東京都もその考えから、金融機関に対する外形標準課税を認めようということになったわけです。課税対象が収入になり、赤字法人も課税されるという考え方が根づけば、今、一部で考えられている法人税均等割を考える必要もないはずです。 私の案では、サラリーマンにも同じ原則を適用して、現在の不明朗な給与所得控除金額は全廃します、また税の収納については、収入課税部分は国税所管ですが、資産課税部分については地方自治体の所管とします。税収の独立によって、地方分権を確立することができるでしょう。また新税制のメリットとしては、費用のつけ替えや水増しといった不正行為をする余地がなくなり、経理内容はより単純で、公正なものになります。解釈通達などは削減され、租税法律主義が徹底します」






 
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