反町 政府が態度を変えられない理由として、アジア諸国に対して気をつかっているという側面もありますか?
岡崎 現時点ではそうですが、かつてはそのようなことはありませんでした。具体的にいうなら、そうなったのは、1982年の宮沢官房長官の談話以降です。私は1978年から1981年までの3年半、防衛庁にいて、その間、政府委員として国会答弁を300回は行いましたが、『日本が安全保障政策を決めるとき、周辺諸国の反応を配慮しなければならないか?』といった質問は皆無でした。当たり前です。当時、日本が戦争に負けてから、すでに35年経っていました。まさに一世代です。戦争とは終わってから一世代経てば、政治家の手を離れて、歴史家の手に行ってしまうものです。酸鼻をきわめたナポレオン戦争の時もそうでした。
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ところが日本の場合、戦争責任の問題を日本人自らが持ち出したのです。南京事件にしても、一部の人が中国に行って、『日本はこんなことをした。あなたは悪いと思いますか?』と聞く。相手は『悪い』としか言いようがない。『日本が再軍備する際、あなたたちの意見を聞くべきでしょうか?』と聞けば、当然、『そうしてくれ』となる。すべてそうです。新聞社は東南アジアの各首都にお得意さんの学者を何人かそろえていて、日本の防衛費が少しでも上がると、その意見を聞く。それも、『日本の軍国主義復活は怖いと思いますか?』というような質問をする。相手は『怖い』としか言いようがありません。それで紙面には、『日本の防衛費増加に東南アジアの識者が懸念を表明』といった見出しが
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