反町 なぜその解釈が通用していると思われますか?
岡崎 合憲か違憲か解釈する権利は、政党にもなければ、国会にも、内閣法制局にも、憲法学者にもありません。憲法の有権解釈の権限は裁判所にあります。その裁判所は、自衛隊や安保条約は違憲ではないのかという訴えに対して、これまでいくつかの判決を出しています。内容は『わが国は独立国として固有の自衛権を有する』というものです。つまり自衛隊の根拠法規となるのは成文憲法ではなく、固有の自衛権です。では、固有の自衛権とは何か? 自衛権を定めた国連憲章第51条(注)に、『固有の権利』という言葉があります。英語では、 the
inherent right of individual or collective self-defence です。 |
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英語というのは難しい言語でして、これも意味があるかのごとく、ないかのごとくです(笑い)。この英文から、『個別的又は集団的自衛の固有の権利』と日本語に訳したからおかしなことになってしまった。それに対して英語とともに国連憲章正文であるフランス語は非常に論理的な言語で、同じことを、 droit
naturel de defense legitimeと、明確に『正当防衛の自然権』としています。つまり『固有の権利』とは、不文憲法である自然権たる自衛権であり、それを根拠として自衛隊も安保条約も正当化される。それが日本の裁判所の有権解釈でもあります。
反町 むしろ裁判所は合理的な有権解釈しているが、政府のほうがもうひとつよそ見をしているということですか?
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