↑What's New ←目次
0 1 2 3 4 5 6 7 8 通巻 196号

弾丸が一発飛んでくるまで手を出せない

反町 岡崎先生がいらした外務省は、『普通の国』である諸外国と接しておられるわけで、公務員の立場としては口に出さないまでも、心の中では、ご指摘のようなことが正しいと思っている方が多いのでしょうか?
岡崎 中にはいます。しかし、政府というのは、いったん答弁したことは、あくまで墨守することになっているわけです。それを変えるのは総理大臣の仕事です。 そもそも日本では集団的自衛権の行使が認められないなど、外国に対しては、恥ずかしくて言えないようなことなのです。例えば、
日本海で、海上自衛隊の艦艇とアメリカ海軍の艦艇が並んでいるとき、日本の艦艇が某国から攻撃されたとします。当然、同盟国であるアメリカの軍艦は即座に攻撃に移ってこれを助けます。ところが自衛隊は、アメリカの軍艦が攻撃されて、撃沈されようとしていても、自分たちに向かって弾玉が一発飛んでくるまでは、何もせず、ただ見ていなければならない。しかも状況から見て、敵は明らかにアメリカの軍艦から沈めてから、自衛隊の艦艇を沈めにかかろうとすることが明白でも、手を出してはいけないのです。

反町 日本政府が個別的自衛権しか許していないためですね。
岡崎 日米同盟のそのような実態をアメリカで知っているのはペンタゴンの専門家くらいです。数として100人に満たないでしょう。もし、実際にそのような事態が起これば、アメリカ国民はひとり残らず、『それでも同盟国か』と激怒するでしょう。そうなれば日米同盟は持たない。日本政府はそれほど危険なことをしているわけです。そのような政府の解釈のために、ありとあらゆるところで安全保障上の問題が生じています。ミサイル防衛でも、日本に向けて発射されたミサイルは自衛隊のイージス艦
がこれを迎撃しますが、日本列島を飛び越して、アメリカに向かって発射されたミサイルはそのままにしておかなければならない。自衛隊が敵国のミサイルをレーダーで把握したとき、情報はアメリカと共有しますが、アメリカに向けて発射されたミサイルについて協力するのは非合法行為で、たまたまミサイルが日本に向いていれば適法行為となる。そのように、きわめて変な話になるのです。これでは、アメリカ軍との共同作戦をまともに遂行できません。集団的自衛権の解釈をこのままにしていては、やがてアメリカは日本を相手にせず、と判断される恐れがあります。
 
→Next

↑What's New ←目次
0 1 2 3 4 5 6 7 8 通巻 196号
Copyright 2000 株式会社東京リーガルマインド
(c)2000 LEC TOKYO LEGALMIND CO.,LTD.