法制度について改革すべきという点、整備していくべき点は?
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岩澤
「能力判定のあり方をどうするか。これは非常に重要な問題だと思います。日本では、かたくなに精神科の医師の判断を鑑定の要件としていますが、私はそれを外していくべきだと考えています。判断基準を類型化するのではなく、本人の必要性を基準にした能力判定をする方法に切り替えるべきです。ただし、すぐに実現することは難しいでしょう。能力そのものに対する認識を根本的に変えなければならないからです」
関連する法制度などに関しては、改善すべき点はありますか?
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岩澤
「消費者保護に関する法制度をどう整えていくのかといったことがあげられると思います。現行のクリーング・オフ(注3)にも問題があります。契約を解除するには一定期間内に解約を申し出さなければならないわけですが、一人暮らしの高齢者などの場合、気がつくと、とっくに期間が過ぎているようなことが多く、せっかくの制度がまったく役に立たなかったりするわけです。
クーリング・オフにしてもそうですが、あらゆる法律は対象者に一定の意思能力があるということを前提に作られているわけです。意思能力がない人、弱い人をどのように保護していくか? そのような形に法制度を整えることは確かに難しいことかもしれないが、将来に向けて、どうしても実行していくべきです。
また、成年後見制度を支える基盤整備として、裁判所の機能の拡充は絶対的に必要です。その際、たんに家庭裁判所を増員するというだけではなく、裁判所外の人間をいかに活用していくかが鍵になるのではないでしょうか。仕事を部分的に外部に任せて、それに対してフィーを支払う。そういう形で外部の力をうまく利用していくべきだと思います。事実、アメリカなどにはそのような制度が存在します」
注3 「クーリング・オフ(cooling-off period)」
契約が成立しても一定期間が経過するまで効力が生じないとする制度。訪問販売などの紛争に対するものとして作られた。
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