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諸外国の法制度の比較


一連の活動の中で、海外視察では、どのような成果がありましたか?
    岩澤
    「カナダではオンタリオ州の制度が非常に参考になりました。法定後見と任意後見を一つの法制度の中に組み込んでいます。そして、その中核にPUBLIC GURDIAN NAD TRUSTEEという行政機関があり、支援と監督を行なっています。また、自ら法人後見人となることもあります。さらに、また能力の判定機関があり、判定にあたる専門家を養成しています。同じカナダのケベック州で私が印象的だったのは、能力の判定は精神科の医師でなくてもいいとされ、主治医とソーシャルワーカーの報告書を提出するとされている点です。
     ヨーロッパでは、ドイツの制度を詳しく研究しました。ドイツには成年者世話法(注1)という制度があります。これは必ず裁判官が本人と接触して、その必要性を確認し、必要な限度で世話人に世話をさせるものですが、立ちあげてから5年間で、75万人もの申立があり、裁判官がストライキを起こすという事態にまでなりました。それに対して日本の禁治産宣告はほとんど利用されていない状態で、申立は年間2,000件程度です。ドイツでは国の経費負担がかなり大きくなったことと、自己決定権の尊重ということもあり、今年1月に任意後見の法律ができています」

    注1 「成年者世話法」
     ドイツでは民法の総則と親族編で、日本の禁治産・準禁治産宣告制度に似た成年後見制度を定めていたが、ヨーロッパの新たな成年後見制度の流れの中、1990年に残存する能力を尊重する世話法(Betreuungsgesetz)を発効した。行為能力剥奪宣言制度と障害者監護制度が一元化された制度である。

海外の制度で、参考にできると思われる点は?
    岩澤
    「いろいろありますが、私が特に強く印象に残ったのは、先に申しましたように、日本のように精神科医師の精神鑑定にこだわっていないという点です。カナダのケベック州にしても、オンタリオ州にしても、精神能力より、生活能力という基準を重きを置いているわけです。その点は非常に参考になりました。もともとドイツの成年者世話法は精神障害だけではなく、身体の不自由な方も対象にしているわけです。生活能力というのは精神科の医師より、むしろ普段、日常接している主治医であるとか、ソーシャルワーカーのほうが把握できるという立法主旨でしょう」

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