通関士独学で合格できる?時期に応じた勉強法
通関士試験は独学でも合格できるのかなぁ・・・独学のメリットとデメリットが知りたいなぁ・・・という方のために、今回は「通関士試験は独学でも合格は可能か?」について一緒に考察していきたいと思います!では早速見ていきましょう!
- 目次
- 通関士は独学で合格できる?
- 試験制度について
- 初学者の場合
- 学習経験者の場合
- 合格のための勉強時間と配分
- 時期別の勉強時間はどれぐらい?
- 試験科目ごとの勉強方法
- 合格するためにはテキストと過去問が重要
- テキストの選び方
- 過去問勉強法
- 独学で挫折したら。。。
- 効率よく合格するための勉強法
- まとめ
- 監修者・編集者 プロフィール
通関士は独学で合格できる?
結論から申し上げますと独学でも合格は可能です。独学合格者の数は予備校等経由での合格者に比べて相対的には少ないと思いますが、ご自身でテキストや問題集等を購入し、独力で勉強し合格される方は一定数存在します。従って独学でも合格は可能という結論は事実なのですが、合格者の数倍(数十倍?)以上もの不合格者が存在するというのもこれまた事実なのです。ではこれから、独学で合格している方々に共通して見られる、独学で合格するための条件をお伝えしますので、この条件に該当する方は独学で挑戦してみても良いのではないでしょうか。
- 条件その1 「他の法律系資格等の勉強経験があること」
- これは難解な法律用語等について耐性があり、かつ受験テクニックを知っている方と言えます。
- 条件その2 「圧倒的な精神力を持つこと」
- 人間はさぼりたい欲求を持つ生き物です。この本能とも呼べる欲求に打ち勝ち、勉強を継続する精神力が必要ということです。
- 条件その3 「勉強に充てる時間をたっぷり持っている」
- 勉強に充てる時間がたくさんあるのであれば独学でも合格する可能性は高まります。
他にも条件はありますが、大きな条件は以上の3つだと考えます。皆さんはこれらの条件をすべて満たすことができるでしょうか?
試験制度について
ではご自身の状況(上記の条件に当てはまるかどうか)を確認したところで、次は相手(通関士試験)の状況を見ていきましょう。まず通関士資格は国家資格です。前回のコラム『通関士試験の難易度 他資格と比較、その乗り越え方』でもお伝えしておりますが、国家資格はざっくり言うと、「国家資格取得者は特定分野において一定以上の能力を有すると国が認めた証」です。ですので国家資格は一般的には民間資格や公的資格よりも難易度は高い(難しい)傾向にあります。
試験内容についてですが、通関士試験の日程は例年では10月の第一日曜日に行われますので本年度2024年の試験日は10月6日になるのではないかと予想されます。通関士試験の内容は3科目に分かれており、科目免除(一定の基準を満たすことで1科目(通関実務)を免除、または2科目(通関実務と関税法等)を免除となる制度です)を受けない場合は、3科目全てを同時に合格する必要があります。
1科目目は通関業などを規定する「通関業法」、2科目目は輸出入手続き等を規定する「関税法等」、3科目目は実戦力を計る「通関実務」です。この3科目にはそれぞれ合格基準点(原則60点)があります。3科目のいずれもが60点以上であれば合格、1科目でも60点未満があれば不合格となります。例えば1科目目が100点、2科目目も100点、3科目目が59点という場合は3科目目が60点未満となるため不合格となります。従ってバランスよく戦略的に学習プランを立てる必要があります。
実際の試験ではこのような問題が出題されています。
参考①
次の記述は、通関業法第1条に規定する通関業法の目的に関するものであるが、
( )に入れるべき最も適切な語句を下の選択肢から選び、その番号をマークしなさい。
通関業法は、通関業務を営む者についてその業務の( イ )、通関士の( ロ )等必要な事項を定め、その業務の( ハ )運営を図ることにより、関税の( ニ )その他貨物の通関に関する手続の( ホ )実施を確保することを目的とする。
①制限 ②規制 ③ 管理④義務 ⑤確認 ⑥設置 ⑦適切な ⑧公正な ⑨納税申告
⑩適正な ⑪徴収 ⑫申告納付 ⑬適正かつ迅速な ⑭簡易かつ適正な ⑮適正かつ確実な
通関士試験の合格率は概ね15%前後(ブレはありますが概ね10%〜20%程度の間に収まっています)ですが、2023年度試験(第57回通関士試験)では24.2%でした。
詳細は税関ホームページよりご確認いただけます。
初学者の場合
初学者の方はまずは全体をざっくりと把握するためにもテキスト通りに一通り勉強するのが良いのかなと思います。ここでのポイントはとりあえず勉強を進めるということです。理解できないポイントが発生したとしてもあまり長い時間立ち止まらず、歩を進めることをおススメします。というのもその時点では理解できなかったとしても、勉強を進めていく中でふとした瞬間に理解できるということが多々あるからです。さらに言うと、とりあえずでもテキストを一通り完結させることで試験に合格する確率が上がります。1つの論点にこだわり、そこから先に進めずに受験しても合格する確率は極めて0に近いでしょう。じっくりと勉強するよりも、まずは回転を意識して勉強を進めるほうが知識が定着しやすいと思いますしモチベーションも維持しやすいと感じています。
学習経験者の場合
学習経験者の方は一通りの知識をお持ちだと思います。ですので、得意分野の知識はそのままキープできるようにし、不得意分野を克服するような時間配分を意識する方が良いでしょう。例えば通関実務が不得意なのであれば通関実務により多くの時間を費やす必要があるということです。ここでのポイントは不得意分野ばかりに時間を割き、得意分野が不得意分野にならないように注意を払うということです。例え得意分野であったとしても、知識が抜け落ちないように少しは手をかけてあげる必要があります。不得意分野が得意分野になったとしても、得意分野が不得意分野になってしまえば元も子もありませんのでご注意を!
合格のための勉強時間と配分
通関士試験を合格するためには概ね500時間程度の勉強時間が必要とされています。ちなみに独学の場合はこれに1.5倍程度の割増時間が必要とされていますので、750時間必要ということになります。3つの科目「通関業法」、「関税法等」、「通関実務」に対する勉強の時間配分は1:6:3くらいが良いと個人的に感じています。通関業法75時間、関税法等450時間、そして通関実務225時間の合計750時間くらいを目安に学習していただけば合格率は上がると考えます。
ちなみに通関実務以外の科目についてはスキマ時間を活用することをおススメします。計算問題がある通関実務は机に向かってガッツリと勉強しないと身に付きにくいですが、通関業法や関税法等の問題演習等であればスキマ時間を活用し解くことができると思います。スキマ時間を活用することで効率的かつ効果的な成果を上げることができると思いますので、これを機にスキマ時間の活用法を考えてみても良いかもしれません。
時期別の勉強時間はどれぐらい?
これは個人的な考えになりますが、できるだけ一定のペースで勉強をするほうが良いと考えています。理由は大きく2点あります。1点目の理由は一定ペースの方がストレスが少ないだろうという点です。例えば直前期などに多くの時間を割くと脳がストレスを感じ思考が働きにくくなります。そうなると学習効率が落ちることになりますので大変非効率となります。2点目の理由は途中で脱落(勉強を諦める)しにくいという点です。一定ペースを守るとなると、勉強することが習慣化されやすくなりますし、例えば今は多少さぼっても直前期等に頑張れば良いやという甘えが無くなります。もちろんペース配分を誤ったと感じた場合には調整が必要ですが、特定の週だけいつもの3倍の勉強をする等の極端な調整はおススメしません。勉強のコツは毎日続けることですので、できる限り平準化することをおススメします。
試験科目ごとの勉強方法
基本的には理解することをメインとし、暗記はサブ(補助的立ち位置)とする方が良いとは考えていますが、1科目目の通関業法、2科目目の関税法等は暗記に頼っても合格ラインに辿り着くことはできるでしょう。しかし、3科目目の通関実務に関しては暗記で乗り越えるのは中々難しいものがあります。何故なら出題内容が年によって大きく異なるからです。HS CODEの分類についても毎年異なる範囲から出題されています。そのため例えば3年前の試験、2年前の試験、去年の試験を丸暗記したところで今年の試験では全く異なる範囲から出題されることになるため、暗記では対応できないだろうというのは明白です。ではどうするのか。答えは理解することです。この商品は何故、このHS CODEに分類されるのか。この費用は何故、課税価格に含まれるのか等を理解することで実戦対応力が養われます。先ほども記載しましたが3科目目の通関実務は「実戦力を計る試験」だと考えており、そう考える理由の一つが過去の出題内容の違いです。暗記では実戦力は付きにくいのです。ほぼ無限に存在する商品に対して10000近くあると言われているHS CODEのどこに紐づくのかをすべて暗記するのは現実的ではありません。3科目目の通関実務の存在意義は実戦力を養うことにあり、そのために何故?を追求し、理解力を向上させることによって実戦力を養うのです。このように考えるとやはり3科目目に関しては理解することを中心に勉強を進めることをおススメします。
合格するためにはテキストと過去問が重要
独学の場合、独学者に勉強を教えてくれるのは主にテキストや過去問集です。そのテキストや過去問集が分かりづらいものであったり、見づらいものであれば学習速度も理解度も格段に低下するでしょう。これからどういったテキストや過去問集を選べば良いのかを見ていきたいと思います。
テキストの選び方
テキストに関しては、やはり売れ筋の商品を選ぶ方がハズレは少ないのかなと思います。例えばヒューマンアカデミー様の「通関士完全攻略ガイド」や、TAC様の「スピードテキスト」などが売れ筋商品だそうです。ただしテキストも人によって合う合わないという感覚が違いますので、書店で購入されるのであれば少し立ち読みでもし(迷惑にならない程度に!認められた範囲で!)、WEBで購入されるのであれば試し読みをするなどし、ご自身に合うかどうかの確認を行った後に購入してください。分かりやすい・分かりにくいは人によって全然違うのでご注意を!
過去問勉強法
過去問についてもやはり各予備校などが発行している過去問集などを軸に勉強するのが良いかと思います。有名どころでいうと日本関税協会様の「通関士試験問題・解説集」、「通関士試験ゼロからの申告書」や、LEC東京リーガルマインドの「セレクト過去問題集」などがあります。なお、問題に対して〇や×のみではなく、何故〇なのか、何故×なのか、その理由を明確に記載している過去問集を購入するようにしてくださいね。
独学で挫折したら。。。
ここで独学のデメリットを少々お伝えしたいと思います。独学は基本的には孤独です。周りには誰もおらず味方は自分自身くらいです。そして味方であるはずの自分自身ですら、時として「今日くらいサボロウヨ」と誘惑を仕掛けてきます。一度さぼると二度三度とさぼりたくなるのが人間です。ズルズルとそのまま挫折し脱落していく方を多くみてきました。何故こういったことが頻繁に起こるのか自分なりに考えてみましたが、これは費用の少なさが原因ではないかと考えています。
どういうことか。要するに独学は支払う費用が少ない分、支払った費用に対して「元を取ろう」とする働きが小さいのです。独学の一番の敵は、この元を取ろうとする働きが小さい(もしくは無い)ところにあるのではないかと個人的には考えています。皆さんもこういった覚えはないでしょうか。例えば普段の朝食はさほど食べないのに、ホテルなどの有料朝食バイキングではいつも以上に食べてしまう。これも有料分の「元を取ろう」とする心理が働いている結果なのだと思います。これと同じで費用が少ない独学の場合、失敗(不合格)しても(損失は少ないので)まぁ良いかという心理状態になりやすく、逆に費用を捻出して予備校や通信講座を利用している方は支出した分の「元を取ろう」とする気持ちが強くなり、それが「本気度」に繋がるのだろうと考えています。
結局のところ、試験合格に一番必要な要素は頭の良さではなく、「やる気」だろうと考えていますし、頭の良さについては皆さんはすでにクリアしているのです。
効率よく合格するための勉強法
効率よく勉強するためにはやはり誰かに教えてもらうことが最適解だと考えています。分からないことを分からないまま調べるのは時間も労力もかかります。ストレスも大きくかかります。そんな時に答えや考え方を誰かに教えてもらうことができれば非常に効率的です。自分で調べる必要がないため、調べるための時間を他のことを勉強する時間に充てることができるのです。独学での勉強時間は予備校での勉強時間に比べ1.5倍程度かかるという理由はこのあたりにあるのかもしれません。自分で分からないことを分からないまま調べるというのは本当に大変な作業ですので、できるだけ避けていただければと思います(私も経験があるのでこの苦しみはすごく分かるのです)。
そして効率を最重要視するのであればやはり独学よりも講座の受講が適していると思います。さらに言うと講座の受講でも通学ではなく通信(WEB)がより効率的だと考えていますし、通関士試験においては通信(WEB)で十分合格できると考えています。なお、LECでは長年の指導経験によって得たノウハウを惜しみなく提供し、可能な限り最短・最省力で合格へ導けるよう受験生の皆様を全力で応援し、お支えします。また科目別や論点別でも講座を展開していますので是非ご活用ください。
まとめ
皆さんいかがでしたでしょうか。
今回のコラムでは「通関士試験は独学でも合格は可能か?」について見てきました。表面上の結論として「通関士試験は独学でも合格は可能である」ということをお伝えするとともに「独学での合格には大変な条件がある」ということもお伝えしたいと思います。
独学には大きなメリットもありますし、大きなデメリットも存在しますので、総合的に判断し独学OR予備校を選択していただければと思います。ちなみに私は独学で合格しましたが、今なら確実に予備校を選択すると思います。理由は勉強時間の短縮と(不合格という)リスクの低減をしたいためです。またこのあたりの話にご興味ある方はLECまで連絡をいただければと思います。
それでは最後になりましたが重要なことをお伝えしたいと思います。我々LEC一同は共にチャレンジしてくれる方を全力で応援し、お支えします。一人でも多くの方が通関士として活躍している姿を見たいと心より思っています。一緒に頑張りましょうね!それではまたね!!
監修者・編集者 プロフィール
前山 翔平 講師 Maeyama Syohei
ブハハコンサルティング合同会社 代表社員
- 【保有資格】
- 通関士
中小企業診断士 - 【経歴】
- 2009年通関士試験に合格。以降、中堅・大手通関業者にて主に輸入通関業務に従事。主たる申告税関は航空貨物をメインとして取り扱う関空税関や成田税関であるが、南港税関(大阪)や大井税関(東京)への申告経験も有する。管理職としては支店長職等を歴任し、2021年中小企業診断士試験合格、2022年に経済産業大臣登録を行い、2023年独立。現在はマーケティング支援、人的資源管理支援、そして通関・貿易助言支援等を行っている。
通関士試験制度の
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